適応障害は甘え?どんな人(性格)がなりやすい?


適応障害は、周りの人たちに理解されづらい疾患です。ストレスによって発症しますが、同じストレスを受けても発症しないケースもあるため、単なる甘えだとみなされるケースが少なくないのです。

しかし、適応障害は、世界保健機関(WHO)のICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)に登録されているれっきとした病気です。

目次

適応障害は精神疾患の一種

ICD-10では、適応障害を「ストレス因により引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態」と定義しています。

ストレスによって発症

ストレス因は、個人レベルのストレスから災害など地域社会を巻き込むようなレベルまで様々です。個人レベルのストレスで多いのは、職場の人間関係、仕事量の多さ、責任の重さなどですが、家庭内の不和、育児や教育の悩み、経済的問題などもストレス因になります。また、結婚、失恋、転校、苛め、受験失敗などもあります。

こうした日常生活の中で発生する変化に適応できずに発症するわけですが、ストレスの受け止め方や耐性は、かなりの個人差があるところから、適応能力の高い人や耐性の強い人からみれば、甘えと映ってくるケースも少なくありません。

適応障害の主な症状

さまざまなストレス因があり、本人の性格も絡むところから、症状も多様ですが、大別すると以下のような症状があらわれます。

●うつ症状:気分の落ち込み、意欲の低下、涙もろくなる
●不安症状:不安、恐怖感、焦燥感などとそれに伴う動悸、吐き気などの身体症状
●身体症状:朝、なかなか起きられない、頭痛、めまい、動悸、倦怠感、腰背部痛、感冒様症状
●問題行動:うつ症状や不安症状が強いケースでは、勤務怠慢、過剰飲酒、ケンカ、無謀な運転などの年齢や社会的役割に不相応な行動があらわれます

ストレスの診断

ICD-10の診断ガイドラインでは、「発症は通常生活の変化やストレス性の出来事が生じて1カ月以内であり、ストレスが終結してから6カ月以上症状が持続することはない」とされています。

ストレス因により、その1ヶ月以内に上記の掲げたような症状が発生し、6カ月以上持続しないのが、適応障害だというわけです。ただしストレスが慢性的に存在する場合は症状も慢性に経過します。

これはちょっと不思議な診断ですが適応障害の診断は「除外診断」といわれ、うつ病や統合失調症ではないというときに適応障害と診断されるのです。

うつ病にも移行しかねない状態も

適応障害は、ストレス因が除去されればよくなります。しかし、油断大敵です。というのも、適応障害と診断されても、5年後には40%以上の人がうつ病などの診断名に変更されています。つまり、適応障害は実はうつ病の前段階の可能性もあるわけです。

ですから、うつ病になる前の適応障害の段階で治療に取り組むことが重要になってきます。

適応障害になりやすい性格

適応障害ではなりやすい性格ということがいわれています。すべてを性格に結び付けることは避けなければなりませんが、どんな性格がなりやすいのでしょうか。

まじめで完璧主義な性格がなりやすい

まじめで、完璧主義で、責任感が強いといった何事もしっかりやろうとする意識が強い性格の人は適応障害になりやすいようです。こういう性格の人は、ストレスを溜め込みやすい傾向が強いからです。

繊細な人だけがなるとは限らない

先に述べたように同じストレスを受けても、適応障害にならない人がいます。ストレスの受け止め方には個人差があります。そうすると、ストレスに弱い、比較的繊細なひとがなりやすいと思われがちですが、むしろこの逆のケースが多々見られます。

むしろ、頑張って、耐えようとする人がなるケースがあるのです。頑張るということは、ストレスを溜め込むということですから、ストレスが限度を超えると適応障害を発症します。あとで触れるように、頑張ってもいいが、一方でストレスを発散する方法を身に付けることが重要です。

性格よりも環境

性格は適応障害の要因のひとつですが、あくまで要因の一つにすぎません。問題はストレス環境です。性格的にも適応障害になりやすい性格だったが、ストレスの少ない環境にいたためならなかったとか、周りの人の協力でストレス因が除去されたので、適応障害にならずに済んだというケースもあり得ます。

具体的な個別事例でいえば、暴力をふるう恋人から離れるために、ほかの人に助けを求めて、適応障害の一歩手前で立ち直ったというケースもあります。

いずれにしても、ストレス因が解消されると症状はなくなります。そうして、このけろりとした治り方が、「仮病だったのではないか」という誤解を生む要因にもなっています。

適応障害を予防するためには

適応障害にならないための対策は、なによりもストレス環境から離れることです。

ストレス因の除去

ストレス因の除去とは、環境調整することです。職場の人間関係がストレス因となっているようなケースでは、上司に相談し配置転換をしてもらう、というのも環境調整です。

とはいえ、環境調整は思うようにいかない場合が少なくありません。しかし、適応障害が慢性化してうつ病を誘発することなどを考えると、例えば職場を変えるというという選択も考えるべきでしょう。

考え方を変える

適応障害になった人たちのストレスの受け止め方をみていくと、物事の受け止め方にある種のパターンがあることが浮かび上がってきます。考え方の歪み、柔軟性の欠如、ネガティブな思考法などがこれにあたります。

このパターンに対してアプローチしていくのが認知行動療法と呼ばれるカウンセリング方法です。これは精神科の治療の柱のひとつで、ネガティブになりがちなものの見方や考え方を修正していきます。この認知行動療法の原則を日常生活にも応用し、物事をポジティブに捉えるように心がけると、ストレスも衰えて行くはずです。

ストレス発散をする

たまったストレスを発散するというのも予防につながります。ストレス発散の手法は、人それぞれでしょう。旅に出て気分をリフレッシュするのもいいし、カラオケでシャウトして鬱憤を発散するのもいいし、一人でゆったりと音楽を聞いて疲れを癒すのもいいです。

軽い運動で汗を流すのもお勧めです。運動をすると、ネガティブな気分が発散されます。大切なことは、自分にあった発散の方法を持つことです。

生活習慣を整える

ストレスを抱え込んでいると、落ち込むばかりではなく、気分がささくれだち、やけ気味になり、なにかと億劫になり、気が付くと生活が乱れてしまっています。そのことで、ストレスが鬱積し、適応障害を発症するという悪循環におちいります。規則正しい生活習慣を取り戻すように心がけましょう。

たとえば、起床時間と就寝の時間を決める、休日には30分の散歩を義務付けるといった小さな決意を実行してみることをお勧めします。

早めの治療で、「大事」を予防する

適応障害というのは、精神疾患のおこぼれのような病気です。先にふれたように、診断が除外診断であるということがそのことを物語っています。

しかし、このおこぼれがほっておくと本格的なうつ病を誘発するリスクを内包していることは、既に述べてきた通りです。この大事を予防する意味でも、症状が自力改善では手に余るということになったら、医療機関にかかって治療に取り組むことをお勧めします。

なにしろ、ストレスによる病は、早い者勝ち、ですから。なお、ストレスに伴う様々な症状を治療する医療機関としては、精神科、心療内科、メンタルクリニックなどになります。


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