お母さんの悩みにズバリ答える!!心理士が解説 『昔から居たいわゆる「問題児」と「発達障害」の違い』~シリーズ1 多動なお子さんへの対応について

お母さんの悩みにズバリ答える!!心理士が解説 『昔から居たいわゆる「問題児」と「発達障害」の違い』~シリーズ1 多動なお子さんへの対応について

(今回のテーマ)

・成長するとどうなるか?

・そんな子どもが、自分に自信を持ちながら集団適応し、成長するために家庭や学校で求められる対応

・色々なものが気になり、注意が逸れる子どもに対して効果的な指示の出し方

Q.5歳の男の子のママ:

周りがびっくりするくらい、いつも動き回ってて心配…。大きくなったらどうなるの?

A.心理士:

エネルギーいっぱいのお子さんなのですね。常に動き回っているといった特徴は、成人するまでつづいたり、あるいはほとんど目立たなくなったりと、さまざまです。

特徴そのものはあっても、自分で対処法を身につけており、生活に大きな支障がないという方も多いです。「小さい頃は落ち着かなくって、良く叱られててさ…」という方の中には、色々なものに関心を持てること、行動力があることなど強みを生かして趣味や仕事に一生懸命に取り組んでいる方も多くいらっしゃいます。私の周りにも何人か思い浮かびますが、その方たちはミスがあっても、そこからリカバリーする力があるということを感じます。家事や仕事で苦手な部分をよく自覚していて、苦手なことはあえて選択してないことも特徴です。

一方、ミスや叱責によって自信をなくし、周りに対して攻撃的になってしまったり、社会に出て行く勇気を持てなかったりする方たちもいます。こうした、大きくなってからの違いには、持って生まれた特徴の強さも影響すると言われていますが、周りの人の関わりによってかなり変わるとも言われています。

次に、小さいうちからの関わりについてお伝えします。

Q.5歳の男の子のママ:

自信を持って、学校や社会でやっていけるように今からできることは?

A.心理士:

私はふだん、特に未就学のお子さんのお母さんたちには次のポイントをお伝えするようにしています。

*ルールをあいまいにしない

*失敗したら、“次からこうしよう”という形で伝える

*本人が落ち着ける、集中できるよう環境を整える

*がんばっている姿、本人の成長をほめる

例えば小学校に上がると、他のお子さんよりも悪目立ちしてしまうことがあります。先生にただ頭ごなしに怒られつづけていたら、自分ばかり叱られていることに傷つき、だんだんやけっぱちになって、学力の低下やトラブルを招くことになってしまいます。こうなるとなかなかトラブルの悪循環から抜け出すことが難しくなっていきます。

ですから、これから先お子さんの自信を育てていくことはとても重要です。

ルールやマナーを身につけていく時期には、“こういう風にするとぼくは/わたしはできる!”という、自信が重要であると良いと思います。そのため先生やお父さんお母さんが、本人にわかりやすい形でルールを伝え、本人がやりやすいよう環境を整え、お子さんのがんばっている姿や良い変化を丁寧にほめてあげると良いでしょう。

ひとつ例を挙げてみたいとおもいます。ある5歳の女の子はバス停でじっとバスを待つことが苦手で、その日は手提げバッグを振った拍子に通りかかったおばあさんにぶつけてしまいました。

このときお母さんは、まずおばあさんに謝った後、お子さんにも「ごめんなさいしなさい。」と伝え、「バス停ではこれを持って待っていてね」とオイルクロックを渡しました。お子さんはバスが来るまで、オイルクロックをじっと見ながら、時折「バス遅いねえ」と話し待っていました。そこでお母さんはバスに乗る前に「バス停でバックぶんぶんしなかったね、がんばったね」とほめてあげました。

“バス停でものを振り回さない”というルールは変えず、オイルクロックを渡し(環境の調整)、うまくできたら褒める、という対応です。これは一例で、現実的にはもっと対応に迷ったり、わかっていてもうまくできなかったりすることも多いと思いますが、キモを押さえていると学校でもご家庭でも、メリハリのある対応をしやすいと思いますのでご紹介しました(ちょっと変えてありますが、実例です)。

今からできる具体的な工夫はたくさんありますので、もしも日常生活への支障が大きく、明らかに周りのお子さんよりもトラブルになってしまうことが多い場合には、専門家をたずね、お子さん本人やご家族がどう過ごしていくとよいか、相談していかれるとよいでしょう。

用・参考文献
Biederman, J., et al. (2011). Predictors of persistent ADHD: An 11-year follow-up study. Journal of Psychiatric Research, 45 (2) 150-155.
執筆者:小倉加奈子(臨床心理士)

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