働く人のストレスが高じるとどんな病気になるのか

働く人のストレスが高じるとどんな病気になるのか

働いているとストレスにさらされることが多くなります。ストレスが原因で自分や、周囲の人がメンタル的に不調になることも珍しくありません。うつ状態になるだけでなく、めまいや耳鳴り、不眠等、ぱっと思いつくだけでもいろいろあります。ストレスで調子が悪くなる場合、どんな症状が待ち受けているのでしょうか。どんな病気にかかるのか、症状の違いはどこにあるのでしょうか。

働く人のストレスは増えている?

厚生労働省の平成28年「労働安全衛生調査(実態調査)」は、常用労働者10人以上の民営事業所約1万4000ヵ所で働く労働者と派遣労働者約1万8000人を対象にした調査です。

調査内容にストレス関連の項目があり、「仕事や職業生活に関することで強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者」の割合は59.5%だったそうです。この割合は、平成25年調査では52.3%、平成27年調査55.7%でしたので年々増加しています。

働く人に限りませんし、ストレスと直結するわけでもありませんが、ストレスに関係が深そうな疾患の患者数の推移を参考までに見てみても増加傾向がうかがえます。平成23年の数字が少なくなっていますが、宮城県の一部と福島県の数字が除かれています。

患者数が増えた理由は様々考えられますが、ストレス関連の患者数が増えている可能性は高いと言えそうです。

ストレスが原因の病気にはどんなものがあるのか、それぞれ特徴などについて、主なものをいくつか見てみましょう。

うつ病

ストレスで調子が悪いと聞いて、最初に思い浮かぶのは「うつ病」ですね。いつしか気分が激しく落ち込むようになり、その落ち込みから回復することができないまま2週間以上続きます。

うつ病についてはこちらもご参照ください。
「薬剤師監修 うつ病と薬とアルコール依存症について」

薬剤師監修 うつ病と薬とアルコール依存症について

この、最初に思い浮かぶうつ病は一般的に最も深刻な病気と見られていますが、他にもつらい症状を伴う病気があります。

適応障害

「あのストレス」が原因だ、としっかりわかるような場合は、うつ病よりもこっちの可能性が高いかもしれません。うつ病の場合、慢性的なストレスによっても発症しますが、原因がはっきりしないこともあります。一方、適応障害は引き金が何であるか明確であり、そこがうつ病との大きな違いになります。

症状の面でも違いがあります。適応障害には抑うつだけでなく、不安、怒り、焦りや緊張などの情緒面の症状があり、こうした情緒の不安定性が行動面に現れて怒りだしたり、泣き出したり、行きすぎた飲酒、暴食、けんか、無謀運転、無断欠勤等につながることがあります。こうした行動面での強い症状はうつ病には見られないものです。また、自責の念や罪悪感を伴わない点もうつ病とは異なる特徴です。

(適応障害の症状)
□抑うつ気分、喪失感、絶望感
□不安、恐怖、焦燥、緊張、怒り
□何かを計画したり続けることができない
□暴飲・暴食、無断欠席、無運転、けんか
□動悸、めまい

うつ病は抑うつ状態がずっと続くわけですが、適応障害の場合は、引き金となったストレスから離れると症状が緩和されます。例えば職場を離れれば趣味を楽しめたりすることもあり、何事にも関心を持てなくなるうつ病と大きく異なります。

適応障害の症状は、健康な人が体験するストレス反応の延長線上にあると捉えられていて、健康な人との違いは、その反応が重症であることや、それが社会生活、職業・学業的等に障害となっている点にあります。

最近メディアで取り上げられることの多い、いわゆる「新型うつ」も、この範疇で説明されることがあります。通常のストレス反応の延長線上にあるという意味からですが、「新型うつ」は軽症であるため、病気とはみなしていない専門家もいます。

適応障害の治療

適応障害の治療は、薬物療法が中心となるうつ病と異なり、引き金となったストレスの除去、例えば自宅静養、職場や家族からのサポート、働いている部署からの異動や、場合によっては転職等の対応をしてゆきます。また、ストレス耐性をつけるためのカウンセリングも行われ、薬物療法はあくまで補助的に対症療法として行われます。

米国の診断基準(DSM-5)で適応障害が「ストレスの始まりから3ヶ月以内に症状が出現し、ストレス因子の消失後6ヶ月以上持続しない」とされている通り、いわばストレスとともに始まり、ストレス消失とともに去ってゆくストレスひも付きの病気なわけですが、適応障害と診断された後、長期化してうつ病に診断が変わるケースも相応にあると言われています。早い段階で手を打つことが大切だと言えるでしょう。

気分変調症

抑うつ状態が持続するという点で、うつ病とよく似ている病気です。うつ病ほど重篤・急性ではありませんが、抑うつ気分がより長い経過をたどります(少なくとも2年以上、小児および青年においては1年以上持続)。

(気分変調症の症状)
食欲の不振または過食
不眠または過眠
疲労感の持続(倦怠感)
自分は価値がない、自信が持てない(自尊心の低下)
自己嫌悪感や罪悪感を伴う
集中力の低下
決断を下すのが困難
絶望感を覚える

うつ病の症状よりもより主観的色彩が濃く、うつ病の症状である「焦燥感」や何も考えられないといった「精神運動制止」は認めにくいと言われています。うつ病に比べて比較的若い時期に発症することが多く、慢性的でもあるため、病気ではなく自分の人格の特徴だと認識されて受診が遅れる傾向もあります。

病気の原因はよくわかっていませんが、遺伝の影響や、ストレス、社会的孤立、社会的支援の欠如等が関連するとされます。特定のストレスと完全ひも付きだった適応障害とは全く違う疾患であることが良くわかりますね。

気分変調症の治療

気分変調症の治療にはうつ病と同様、抗うつ薬による薬物療法と心理療法が併用されることが多くなります。うつ病よりも症状は軽いのですが、薬が効きにくく治りにくい病気です。他の疾患と併存しているケースも多くあり、特にうつ病と併存するケースは重複うつ病と呼ばれ、再発率が高く、治療に対する反応性が良くありません。

自律神経失調症/心身症

自律神経失調症も心身症もストレスから来る病気ですが、疾患の正式名称ではなく病態を指す言葉です。

自律神経失調症は、ストレスによって交感神経と副交感神経の2つから成り立つ自律神経機能のバランスが崩れて生じる病気で、めまい、冷や汗、震え、耳鳴り等症状は多岐にわたります。

一方、心身症は、身体疾患の中で、器質的ないし機能的障害がみとめられる病態のことで、過敏性腸症候群、過敏性膀胱、胃潰瘍、神経性胃炎、神経性嘔吐症、狭心症等、こちらも同様に多岐にわたります。

ストレスが神経にきて、めまいや耳鳴りがするといった場合は自律神経失調症、下痢のように身体に来てしまったら心身症、と簡単に整理できるかも知れませんね。

まとめ

ご紹介したストレス関連の疾患4つは、ストレスの除去やカウンセリングが治療の中心となる疾患「新型うつ」、「適応障害」、そして脳の病気として薬物療法が中心となる「気分変調症」、「うつ病」の2つに分けることができます。

そして、ストレスが原因で症状が心にではなく神経や身体に現れた場合が、自律神経失調症や心身症と呼ばれる病態でした。

症状や病気は人それぞれで一概には言えないし、専門家の間でも様々議論されていますが、こうした簡単な図式を一つ持っておけば、混乱せずに済みますね。

ストレスを身体に悪いものと受け止めると本当に悪くなる

今回はストレス関連の疾患の中でも重要と思われるものを説明させていただきましたが、記事の最後にストレスに関連して少し気持ちが軽くなるお話を紹介したいと思います。

ある米国の研究によれば、前の年に重度のストレスを感じた人々が翌年亡くなる確率は43%高かったそうですが、高かったのはストレスが健康に悪いと信じていた人だけで、重度のストレスを感じていてもストレスは健康に悪いと信じていない人々の死亡確率は、ストレスをあまり感じない人々のグループと比較しても低かったそうです。

「思考は現実化する」みたいなハナシですが、ストレスに対する姿勢次第で、その影響は良くもなり悪くもなる。マインドセットのコントロールがミソだ、というどっかで聞いたようなことがストレスに対しても言えるというわけでして。

詳しくはこちらにリンクを貼っておきます。

Kelly McGonigal TEDGlobal2013「ストレスと友達になる方法」

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