障害者雇用とは?メリットとデメリット、一般雇用との違いとは?


厚労省の統計によると、雇用障害者数は約43万人で前年度に比べ5.4%も増加しました。就職件数は、8万5000件で、こちらは8.6%の増加です。このように、障害者の就職と就労意欲は、近年、急速に高まってきています。

一般の人に比べると障害者の就職が厳しいのは現実ですが、この格差を縮小するための国のサポート体制も年々、拡充・整備されてきています。

そこで今回は、障害者雇用をテーマ―に制度の内容とその活用法について考えてみました。

目次

「障害者雇用」とは

国では、障害のある人が、その能力と適性に応じて一般の人と同様に働ける社会の実現を目指した施策を推進しています。その中核となる法律(制度が)が、「障害者雇用促進法」です。

障害者雇用促進法に基づく制度

障害者雇用促進法は、文字通り、障害者が就職できるような環境を整えて就職を促し、地域で自立した生活ができることを支援する法律です。

これを実現するために、法律では、企業に対して一定の数の障害者を雇用することを義務付けています。また、障害者に対しては、職業訓練や職業紹介や職業リハビリテーションなどを実施し、それぞれの障害特性に応じたきめ細かな支援を行っています。

一般雇用とは違う採用枠である

法律では、従業員50人以上の民間企業に対して2.0%の法定雇用率を義務付けています。つまり、障害者には、一般雇用とは別に障害者のための特別な採用枠が用意されているということです。

また、ハローワークでは、障害者に対する求人情報を公開しています。ちなみに、ハローワークインターネットサービスには、1万件以上の求人が寄せられています。

企業に一定の割合の障害者雇用が求められている

法定雇用率は、民間企業ばかりではなく、特殊法人や地方公共団体にも適用されています。

それぞれの法定雇用率は、下記の通りです。

・一般の民間企業 = 法定雇用率2.0%
・特殊法人 =2.3%
・国及び地方公共団体=2.3%
・都道府県教育委員会=2.2%

一方で、納付金制度というのを設け、法定雇用率が未達成な企業(従業員100人以上)に対しては、月に<不足人数×5万円>を支払うことになっています。この納付金は、一種の罰金です。

逆に法定雇用率を上回った企業に対しては、<上回った人数×2万7000円>が支払われます。この報奨金は、ご褒美です。このように、障害者雇用促進法は、積極的に障害者を雇用するためのインセンティブ(動機づけ)を担保した制度です。

2018年4月には障害者雇用促進法改正され、法定雇用率が現在の2.0%からあがるといわれています。詳しくは下記ページをご覧ください。

2018年4月の精神障害者雇用義務化によって何が変わる?

発達障害も対象

新しく障害者雇用促進法の対象となった精神障害者には、ADHDを代表とする発達障害やてんかんも含まれます。発達障害でコミュニケーションが苦手な人にも、就労への手がかりができたということになります。

また、重度の知的障害者、重度の身体障害者と精神障害者には、「障害者トライアル雇用」という制度も用意されています。これは、一定の期間(精神障碍者の場合最大12ヶ月)雇用し、精神状態の安定がみられるようになったら、常用雇用に切り替えるという制度です。

障害者であっても一般雇用に応募できる

障害者の方でも、一般雇用に応募することができます。一般雇用とは、障害のない人と同じ条件で雇用されることを指します。この際、自分の障害を企業に告知するかどうかは、本人次第です。

自分から告知しない限り、障害が企業に伝わることは基本的にありません。もっとも、最近では、業務での何気ない会話を通して、周囲の方から発達障害を疑われるケースもあるようです。そうなると、企業の障害者に対するスタンスや理解度といったものがポイントになりますから、事前にチェックしておくことも必要です。

障害者雇用に応募するには

障害者雇用枠で就職するには、障害者手帳が必要になります。障害者手帳とは身体、知的、精神障害があることを証明する書類で、以下の3種類があります。

①身体障害者手帳
②療育手帳=知的障害があることを証明する書類。東京都の場合「愛の手帳」。地域によって名前が異なることもあります。
③精神障害者保健福祉手帳=精神の疾患や障害があることを証明する書類。

発達障害のある人の場合は、「療育手帳」、「精神障害者保健福祉手帳」のどちらかになります。

障害者雇用のメリット

障害者雇用促進法には、障害者が能力と適性に応じて働けるような様々な配慮が盛り込まれています。法律の後ろ盾があるというのが、障害者雇用枠で就職する際のメリットです。

障害に配慮した職場環境が得られる

障害者雇用促進法では、給料を下げる、研修や実習を受けさせない、食堂や休憩室を利用させない、などの差別を禁じています。また、障害者のハンディーを取り除くために、例えば以下のような様々な配慮(合理的配慮の提供義務)を求めています。

・採用試験の時間をのばす。
・問題用紙は点訳や音訳をする。
・机の高さを調節するなど、作業を可能にする工夫を行うこと(身体障害)。
・本人の習熟度に応じて業務量を徐々に増やしていくこと(知的障害)。
・出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること(精神障害ほか)。

このほか、「障害者の声に耳を傾けること」という努力義務も課せられています。

就職はいくらかしやすくなる

一般雇用枠で就職する場合、健常者の人たちとの競争に直面しますが、障害特性上、どうしても不利になることは免れません。問題の核心は、自分の希望とどう折り合いをつけるかということです。

折り合いをつけて、障害者雇用枠で就職する場合、雇用促進法の改正によって、以前よりも就職しやすくなったのは事実です。

一般雇用ではこれらの点はどうなるのか

一般雇用では、障害者雇用促進法で求められている合理的配慮の提供は、望めません。障害者に理解がある会社で、理解がある上司などに恵まれれば、障害者の事情を考慮してくれるでしょうが、あくまで個別的な会社頼み、人頼みです。

障害者雇用のデメリット

法律の後ろ盾があるとはいえ、障害者の就職への道は、一般雇用に比べるとまだまだ狭き門です。

障害者雇用は仕事の幅が狭い

障害者の求人数が一般企業の求人数に比べて少ないということは、教職者の絶対数が違うのですから、ある意味で当たり前のことです。問題は、障害者枠で就職しようとすると、希望する職種がなかなか見つからないということでしょう。

障害者雇用枠では、仕事の領域が狭く、それも軽度の作業のものが多くなっています。当然、これに飽き足りない人がいて、一般雇用に応募したいという人もでてきます。

一般雇用で就職した場合のデメリット

では、例えば外見上ではわからない発達障害の人が、障害を隠して一般雇用で就職した場合、どんな事態が予測されるでしょうか。

一般雇用であれば、当然、障害を持っていない社員と同等の成果を出すことが求められます。コミュニケーションが苦手という障害の特性を抱えていると、適応するのにかなりの努力が求められます。その結果、ストレスがたまり、結局、適応できずに退職にいたるケースも少なくありません。

職場によっては、障害者の苦手な部分を受け入れた上で、適性を生かした業務に能力を振り向けさせるという配慮をしてくれる企業や上司もあります。

しかし、それは誰にでもあてはまることではなく、企業と上司に恵まれてラッキーだったという個別事例に過ぎません。

一般雇用でのメリット

一般雇用でのメリットは、待遇面がよく、キャリアアップのチャンスがあることです。また、仕事の中には、障害特性と相性のいい業務もあります。

運よく、そうした業務に配属されれば、昇進し、高く評価されるスキルを身に付けることができます。これが、一般雇用枠での最大のメリットです。

障害者雇用と一般雇用の比較

これまでに延べてきた障害者雇用と一般雇用の二つの選択肢のメリット、デメリットを表にまとめてみました。

障害者雇用と一般雇用のメリットとデメリット

障害者雇用
障害への配慮:ある
就職の難易度:比較的容易
仕事の幅:職種が限られている
職場の快適度:合理的配慮を受けられる

一般雇用
障害への配慮:ない
就職の難易度:難易度が高い
仕事の幅:管理、企画など多彩な職種
職場の快適度:ストレスを受ける

障害者雇用は選択肢の一つに過ぎない

障害者だからといって、働く場所は障害者雇用が適用される職場だけと決めつける必要はありません。障害の程度にもよりますが、一般雇用への道を選択することも可能です。

ただ、大切なのは仕事がストレスなく続けられることです。いくら待遇がよく、仕事内容がよくても体調を崩してしまっては元も子もありません。

ですので、自分の障害と自分の希望をじっくりと考え、それを実現するための最適の折り合いをつけることが大事です。自分一人で考えあぐねたら、周囲の意見やアドバイスを求めることも忘れないでください。


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