過敏性腸症候群は治る?治らない人の原因とは


昨今、過敏性腸症候群(IBS)に悩まされている人が増えています。日本だけではなく、アメリカやイギリスなど、ストレスの多い先進国に蔓延しているところから、一種の文明病とされています。死に至る重大な病ではありませんが、中には仕事に支障をきたすケースもあります。

目次

過敏性腸症候群は治療できる病気

仕事・生活に支障が出ることも

IBSの下痢型(後述)に多く見られるのは、通勤通勤電車の中で腹痛が起こり、駅のトイレに駆け込む、というケースです。また、大事な会議の途中で我慢できない便意が起こって、席を外さざるをえなかったり、営業車の運転中に腹痛が起こったりというケースもあります。こうなると、おちおち仕事をしていられなくなります。

主たる症状は下痢、便秘、ガス過多

過敏性腸症候群は、主として大腸の運動および分泌機能の障害で起きる病気で、慢性的に腹痛や腹部不快感のほかに便秘や下痢、ガス過多などを伴う疾患です。

検査を受けても、炎症や潰瘍という器質的疾患は見当たりません。以前は、大腸の機能異常によって引き起こされるところから、「過敏性大腸症候群」と呼ばれていましたが、最近では小腸にも関係することが明らかになったため「過敏性腸症候群(以下IBS)と呼ばれるようになりました。

過敏性腸症候群(IBS)の4つのタイプ

IBSは、「慢性下痢型」「不安定型」「分泌型」「ガス型」の4つに大きく分けられます。

慢性下痢型は、神経性下痢とも呼ばれます。緊張や不安があると便意を催し、激しい下痢の症状があらわれます。

不安定型は、腹痛や腹部の不快感とともに下痢と便秘を数日毎に繰り返すタイプですが、特徴的なのは、便通異常です。便秘で腹部が張って苦しく、排便したいにもかかわらず出ない、また出てもごく小さな便しか出ません。

分泌型は、強い腹痛が続いた後に大量の粘液が排出されます。

ガス型はおならが頻繁にしたくなります。症状が悪化するとにおいが自然にもれてしまうこともあり、それがまたストレスとなって悪循環に陥ることがあります。

原因はストレスにある

IBSの主たる原因は、「ストレス」です。人それぞれストレスを感じる状況は違いますが、環境が変わるとあっさり治るケースもあります。

職場での人間関係のトラブルや人前で緊張を強いられる発表をしなければならないということが重なって発症するケースもあります。朝食後、出勤の時間に追われ、ゆっくり排便する余裕がなく、便意を催しても排便や放尿ができない満員電車に乗らなければならないというのもストレスです。

下痢しやすい体質だと思い込んでいる人がいるかもしれませんが、IBSの症状は、ストレスに起因する心身症の一種です。

医療機関と診断基準

IBSの治療は、消化器内科や心療内科で診断・検査・治療を受けることになりますが、世界的に認められているRomeⅢの診断基準は以下のようになっています。

■診断基準

Aの項目があてはまり、Bの項目が2つ以上あてはまる場合にIBSと診断

A:腹痛や腹部不快感を半年以上前から繰り返し、特に最近3ヶ月は、月のうち3日以上ある。
B-1:腹痛や腹部不快感は、排便すると軽くなる
B-2:以前より排便の回数が増えた
B-3:便の形状が以前と変わった(やわらかい、かたい、便秘、下痢など)

治す方法

専門の医療機関で治療に取り組むことをおすすめします。一方、そもそもの発症の原因はストレスにあるのですから、ストレス環境を改善することも忘れないようにしてください。

ストレスを減らす

脳が不安やプレッシャーなどのストレスを受けると、自律神経を介して腸に伝わり、運動異常を引き起こします。脳と腸は相関関係にあるわけです。

大腸のぜん動運動が盛んになると、腸の内容物の水分が十分吸収されず、下痢状態で排泄されるようになります。逆にぜんどう運動が不活発になると、内容物が腸内にとどまる時間が長くなり便秘となります。

IBSでは、ちょっとしたストレスにも反応します。少しの腹痛でも脳は敏感にキャッチし、不安も症状も増幅するというストレスの悪循環を引き起こしがちです。たとえば、電車内で発症してしまう人は、電車の中でトイレにいきたくなったらどうしようという不安にかられ、それが新たなストレスを生み、症状が増幅していきます。

ですから、IBSの治療の中に精神科の認知行動療法に代表される精神療法を取り入れているところもあるくらいです。

生活リズムをただす

生活習慣を改善し、バランスのとれた食事を規則正しくとるというのが、IBS治療の基本です。それでも症状が続く場合は、医療機関で受診し、医師にきちんと診断してもらいましょう。

生活のリズムを正すポイントをいくつかあげておきます。

・三食を決まった時間にとる。
・暴飲暴食を避ける。
・睡眠や休養を十分にとる。
・朝の排便を習慣づける。
・散歩などの軽い運動を行う(適度の運動は腸の働きを整える効果のほか気分転換やスおtレス解消につながります)。

医療機関での薬物療法

医療機関での薬物療法で主に処方されるのは、以下のような薬です。

・乳酸菌製剤:乳酸菌を増やして腸内環境を整える製剤
・消化管運動調整役:消化管の動きを活発化させたり、逆に抑制したりする製剤です。
・抗コリン剤:腸の異常な運動を押さえて腹痛を和らげる製剤。

最近注目されてきているのが、「セロトニン3受容体拮抗薬」です。これは、腸で分泌されるセロトニンの働きを抑えるもので、腸の異常運動に悩む男性向け下痢型治療薬として用いられるようになっりました。

以上の薬剤は、直接、腸の異常を押さえたり、活性化させるものですが、IBSの引き金になったストレスが大きいケースでは、不安や焦りを和らげる坑うつ薬が処方されます。

心療内科などでは、カウンセリングなどの精神療法も取り入れられています。

市販薬の注意点

急な腹痛や下痢などの症状が軽いときに、市販薬でとりあえず症状をおさめるというのは、間違ったことではありません。ただし、長期間の服用は体の負担になり、副作用を引き起こすこともあります。

きちんと、能書きを理解した上で使用するようにしてください。市販薬としては、下痢止め、便秘薬、再発症状改善薬(要指導医薬品)があります。IBSによる下痢は、腸管の過剰なぜんどう運動やゆるみなどの異常が原因となっていますから、腸の過剰な運動を抑える薬を選ぶのが効果的です。

便秘の市販薬の中には、センナ、ダイオウなど腸の運動を促進する成分を配合した刺激性下剤があります。IBSによる痙攣性便秘に使用すると症状を悪化させるおそれがあります。腸内に水分を留める塩類下剤を選ぶべきでしょう。

再発症状改善薬とは、薬剤師のいる店舗で購入できるIBS専用薬です。ただし、医師の診断が必要なので、それ以外の方は服用できません。

食事療法

IBSの治療では、食生活の改善が特に重要になってきます。栄養のバランスを考えて、規則正しく食べるのが原則ですが、是非実行してもらいたいのが、毎朝、決まった時間に朝食をとることです。

朝食を取ることによって、腸が活発に動き出し、排便が促されます。下痢、便秘で悩んでいる場合も朝からしっかりと食べることを習慣づけることで改善につながります。

このほかの注意点としては、下痢型の人は、香辛料、冷たい食べ物や脂っこいものを控えるようにしましょう。「便秘型」の人は、香辛料など刺激の強い食品は避け、水分や食物線維を多く摂るようにしましょう。また、腸内の細菌バランスの改善のに効果があるヨーグルトや乳酸菌飲料、オリゴ糖、繊維食物もお勧めです。

治らない場合

生活習慣の改善、食事療法、薬物療法がIBSの治療の3本柱です。しかし、これらはあらわれてきた症状に対する対症療法です。

IBSのそもそもの原因は、ストレスです。ストレスを減らし切れなければ、治る病気もなおらないということになります。

IBSは環境を変えれば治ることもあります。ですので、今現在何が自分にとってストレスかを一度しっかりと考えてみましょう。わかっていても中々環境を変えるのは難しいと思いますが、出来る範囲からでいいので環境を変えてみてください。

実は身体的、精神的疾患のケースも

慢性的な下痢が続くからといって、IBSと決めつけることはできません。潰瘍性大腸炎の可能性も考えなければなりません。潰瘍性大腸炎の初期症状では、下痢や便秘を繰り返します。しかし、症状が進むと血便が出たり、下血することもあります。

このほか、うつ病の前兆としてのうつ状態や閉所恐怖症などの精神疾患を併発しているケースもあります。

消化器内科か心療内科を受診

医療機関にかかる場合は、消化器内科か心療内科になります。下痢や便秘などの身体的症状がひどい場合は、消化器内科を選ぶのが順当なところですが、下痢止めなどの薬物療法を続けているのに、いつまでたっても症状がよくならない場合は、一度、心療内科や精神科の診察を受けることを考えるべきでしょう。

まずは専門の医療機関へ

IBSに限らず言えることですが、自分の病気を素人判断で、勝手に決めつけないことです。そのためには、専門の医療機関で受診する際に、自分の症状を正確に正直に話すことです。

病にいたらない病気とはいえ、その疾患の中には、身体的にも精神的にも重大な病気を抱え込んでいる可能性があります。予防線を張って、隠しごとをすると、治る病気も治らないということを肝に銘じておきましょう。


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