ストレス、うつ病、自律神経失調症による皮膚の痒みとは?対処法はある?


ストレスは万病の元、と言われます。実際、思わぬところにストレスが絡んで、糸を引き、様々な症状を引き起こします。皮膚の痒みも無縁ではありません。

目次

ストレスが痒みの原因に

ストレスとうつ病の関係は直観的に納得できますが、ストレスが痒みの元と言われると、「えぇっ」と思ってしまいませんか。ところが、痛みの初期症状とも言われる痒みは、ストレスと無関係ではないのです。

なぜ、人は痒みを感じるのか

私たちの皮膚には、肥満細胞(マスト細胞)が広く分布しています。肥満と言っても体重が増える肥満とは無関係で、細胞の姿から名づけられたものです。

人をはじめとして哺乳類の粘膜下組織や結合組織には造血幹細胞由来の肥満細胞が分布していて、炎症や免疫反応などの生体防御機構に重要な役割を果たしています。

ところで、肥満細胞から、ヒスタミンという物質が分泌されます。このヒスタミンがかゆみ・痛みを知覚する知覚神経に作用して、その刺激を脳が受けることで私たちは「かゆい!」と感じてしまいます。そして、このヒスタミンの分泌を増やしてしまうのがストレスです。

治りにくいのは精神的ストレスによる痒み

ストレスは身体的なストレスと精神的なストレスに分けることができます。シャツの生地が肌に合わない、肌が乾燥しているというのは、身体的ストレスです。こうした外因的なストレスによる痒みは、その原因を取り除けば症状が改善されます。

一方、イライラや不安といった精神的ストレスによる痒みは、さまざまな要因が複雑に絡み合っていることもあって治りにくいとされています。もちろん、ストレスをなくせば痒みも消える道理ですが、実際のところ、これがなかなか難しいのは、体験的に周知の事実です。

アトピー性皮膚炎

痒さの代表的症状としては、アトピー性皮膚炎があります。アトピー性皮膚炎は、アレルゲンの侵入によって皮膚のバリア機能が低下、乾燥状態になると考えられていますが、ストレスも大きくかかわっています。

発症者の多くは乳幼児ですが、1歳6か月児と3歳児を対象に行われた有病率の全国調査では、平成4年から平成13年にかけて1.5倍から2倍弱に増加している可能性を示唆する結果がでています。

注意しなければならないのは、乳幼児期のアトピー性皮膚炎は、その後のアレルギー性鼻炎や 喘息といった気道アレルギーの発症が高まるということです。

心因性蕁麻疹(じんましん)

蕁麻疹は、食べ物や薬に対するアレルギー反応として起こるのですが、このほかに運動や暑さ、寒さといった刺激、圧迫や日光などによっても起こります。さらに、睡眠不足やストレスによっても発症します。このストレスを起因とする蕁麻疹が、心因性蕁麻疹と呼ばれる症状です。

ところで、蕁麻疹は原因があっても、ある一定の負荷(反応閾値)がかかるまでは発症しないとされています。その一定の負荷を刺激が超えたとき、蕁麻疹は発症します。ストレスはこの一定の負荷の数値を下げてしまいます。よって、ストレスを大きく感じるとちょっとしたことで蕁麻疹が起きてしまいます。

精神疾患と皮膚の痒み

痒みは代表的な精神疾患の一つであるうつ病とも関係しています。もっとも、うつ病の多くがストレスに関係があることを思えば、決して不思議な話ではありません。

注目すべきは、アトピー性皮膚炎の辛い症状が起因となってうつ病になるケースがあるということです。

うつ病と皮膚の痒み

アトピー性皮膚炎になると、人から見える自分の容姿を気にするようになります。加えて、この病気がいつ治るのか、ひょっとしたらもっと悪化するのではないかという不安にさいなまれ、ストレスが積もってきます。

その結果、うつ病や不安障害を誘発するというケースがあります。アトピー性皮膚炎は、病気そのものが大きなストレスとなるわけです。

精神疾患由来のアトピーの特徴

皮膚のバリア機能が低下した乾燥状態になって発症した身体的由来のアトピー性皮膚炎の患者さんの場合、痒みで眠れない、なかなか寝付けないと訴えるケースが多くみられます。

一方、うつ病由来の場合は、朝に早く目が覚めてしまうと訴える患者さんが多くなります。ですから、「朝、いつもより早く目覚めてしまう」ことに悩んでいるアトピー性皮膚炎の人は、うつ病が関係している可能性を疑ってみる必要があります。

自律神経失調症と皮膚の痒み

自律神経失調症とは、自律神経がストレスによって正常に機能しないことによって起こるさまざまな症状の総称です。自律神経は、呼吸や消化、体温調節、内分泌など私たちが意識せずとも作用する機能をコントロールしています。

この自律神経は、交感神経と副交感神経からなっていますが、活動的な働きを司るのが交感神経、休息やリラックス時に働くのが副交感神経です。ところが、この二つの神経のバランスが崩れると、自律神経失調と呼ばれる様々な症状があらわれてきます。

痒みや肌の荒れといったものも例外ではありません。なかなか収まらない痒みが出てきたら、自律神経失調症による原因も疑ってみる必要があります。

かゆみを止めるには

痒み対策としては、汗対策、洗濯、衣類、入浴、睡眠、食生活などなどの方法がありますが、ここではストレスを起因とする痒み対策についてまとめてみました。

痒みの元を治す

ストレスが原因となって、うつ病や自律神経失調症を発症し、その結果として痒みに襲われることがある、というのが今回のテーマです。このようなケースでは、痒みのもととなる疾患を治すことが最優先の対策になります。

痒みが生じたときに手っ取り早く解消するには、かゆみ止めなどの薬も有効ですが、根本の疾患が治らない限り、また痒みが生じてきます。

ストレスを減らす

元の疾患がストレスを起因としているケースが多いのですから、ストレスを減らすということが、最も重要です。ストレス発散の方法は、人さまざまです。

週末にヨガやストレッチをやるのもいいでしょう。予定を詰め込まずに家でひと休みをする日を設け、ぐっすり眠れるような睡眠対策も有効です。

自分の生活に合わせてストレス発散の手法を身に付けるようにしましょう。

病院で治療する

痒みだけでは、病院に行きづらいという人もいます。で、様子をみてしまったり、自分の判断で市販薬で対処しているケースが少なくありません。

市販薬も有効な対策ですが、原因がわからないままの一時的な対処では、根本的な解決になりません。きちんとお医者さんに症状を伝え、自分に合った治療を行っていきましょう。

正しく服用する

病院では、皮膚の状態に合った外用薬(塗り薬)や内服薬(飲み薬)を処方してくれます。処方された薬は、医師の指示通りに使用しましょう。

自己判断で勝手に服用をやめてしまうと、急激に症状が悪化してしまうことがあります。特に、外用薬は指示された部位や回数などを守りようにしてください。

ちなみに、外用薬としては、皮膚の炎症を抑えるステロイド外用薬、非ステロイド系外用薬、皮膚の乾燥を防ぎうるおいを補う働きをする保湿剤などがあります。

痒みを意識しすぎない

アトピー性皮膚炎の患者は、アトピー素因のほかに皮膚が乾燥しやすいドライスキンであることが多いとされています。健康な皮膚は「皮膚のバリア」があって、体内の水分が出ていったり、外から様々な物質が侵入するのを防いでいます。

ところがドライスキンの場合は、皮膚のバリア機能が弱いので、異物(アレルゲン)や汗などの刺激に弱くなっています。

そのため、少しの刺激で掻痒感(そうようかん)が生じるため、発疹患部をかく掻破行動(そうはこうどう)にいたりがちです。そして、そのことで皮膚のバリア機能が破壊され、刺激物がますます侵入しやすくなり、炎症を起こして掻痒感がひどくなるという悪循環に陥ります。難しいことですが、痒みを意識しない、我慢するということも必要になってきます。

赤くなっていてもメイクで隠すのは要注意

痒みがともなう状態だと、皮膚も赤くなっていることが考えられます。顔に赤みが出ていると、ついついメイクなどで隠したくなるものです。

しかし、化粧品が皮膚へのダメージを増幅するケースもあります。気になって仕方がなければ、医師に診断を受けたうえで治療に取り組んでください。

精神疾患の治療が重要になる

繰り返し述べてきたように、ストレスや精神疾患に由来する痒みを治すには、まず、根本の原因である精神疾患の治療に取り組み、ストレスを減らすことが重要です。その他の直接的な痒み対策は、「隔靴掻痒(かっかそうよう)」の対策になるでしょう。つまり、靴の上から痒みをかくようなもどかしさが残るということです。


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