てんかんにお酒、たばこ、コーヒーは悪影響?良いもの、悪いものは?


てんかんは、けいれんなどの発作を伴う脳の慢性的な疾患です。100人に1人の割合で老若男女、誰にでも発症します。

今回は、このてんかんとお酒、コーヒーなどの依存性を持った嗜好品の影響についてまとめてみました。

目次

そもそものてんかんの仕組みとは?

まず、てんかんの原因と様々なタイプについてまとめておきます。

脳内の電気信号が過剰になっている

世界保健機関(WHO)の定義によると、「てんかんとは、種々の成因によってもたらされる慢性の脳疾患であって、大脳ニューロンの過剰な発射に由来する反復性の発作(てんかん発作)を特徴とし、それにさまざまな臨床症状及び検査所見がともなう」となっています。

大脳の神経細胞(ニューロン)は一定の規則正しいリズムで活動していますが、この神経細胞が、突然一時的に異常な電気活動(電気発射)を起こすことにより生じるのがてんかん発作です。

原因別に「症候性てんかん」と「突発性」てんかん

てんかんは大きく「症候性てんかん」と「突発性てんかん」に分けられます。症候性てんかんは、生まれた時の仮死状態や低酸素、脳出血、脳梗塞、脳外傷など、脳に何らかの障害や傷を起因として起こります。突発性てんかんは、異常が見つからない原因不明のてんかんです。

このようにてんかんは、原因がわかるものとわからないものがありますが、前者が全体の約4割、後者が残りの約6割を占めるとされます。

症状別に全般発作と部分発作

先の分類は原因による分類ですが、症状(発作)という観点から分類すると部分発作と全般発作に分けられます。全般発作は、文字通り脳全体の神経細胞が異常興奮を起こすことで発作が起き、意識消失を伴います。また、全般発作には、ミオクロニー発作(身体の一部、または全体が一瞬ぴくんと動く)や、脱力発作(突然身体の力が抜け倒れる)、自動症(手足、口をもそもそと動かす)などがあります。

部分発作は、脳の一部の神経細胞が異常興奮を起こすことで発作が始まるタイプのものです。発作時に意識障害がない場合を「単純部分発作」といい、意識障害を伴っている場合は「複雑部分発作」といいます。なお、部分発作だけで治まることもあれば、部分発作から始まり、全般発作に変化する二次性全般化発作というタイプもあります。

大きく分けて4つのタイプ症状

このように、てんかんは、原因のわかるてんかんに2つの発作のタイプがあり、原因のわからないものにも2つの発作のタイプがありますから、大きく4パターンの発作があることになります。

これをまとめたのが表1です。

表1 てんかんの分類

原因発作のタイプ症状
症候性てんかん症候性全般発作・欠神発作⇒意識朦朧または消失
・ミオクローニー発作⇒一部の筋肉がピクっと動く
・強直発作⇒全身がこわばる発作
・強直間代発作⇒全身のこわばりとけいれん
症候性てんかん症候性部分発作・運動発作⇒けいれん、しびれ、失語、脈絡のない発語
・自律神経発作⇒胃のむかつき、皮膚の紅潮、失禁
・感覚発作⇒知覚、視覚、聴覚、臭覚の異常とめまい、
・精神発作⇒記憶障害、不安感、錯覚、幻聴
・脱力発作⇒全身の力がぬけて立っていられない発作
突発性てんかん突発性全般てんかん・欠神発作⇒意識朦朧または消失
・ミオクローニー発作⇒一部の筋肉がピクっと動く
・強直発作⇒全身がこわばる発作
・強直間代発作⇒全身のこわばりとけいれん
突発性てんかん突発性部分発作・運動発作⇒けいれん、しびれ、失語、脈絡のない発語
・自律神経発作⇒胃のむかつき、皮膚の紅潮、失禁
・感覚発作⇒知覚、視覚、聴覚、臭覚の異常とめまい、
・精神発作⇒記憶障害、不安感、錯覚、幻聴
・脱力発作⇒全身の力がぬけて立っていられない発作

てんかんは不治の病ではない

てんかんの患者さんは、全国にざっと100万人程度いると推定されています。多くは、小児期と高齢期に発病しますが、約8割の方は薬により発作は止まります。

表で示したようにてんかんにはたくさんの症候群がありますが、そのなかには薬を飲まなくても自然に治るものもあります。医師の指示に従って数年間薬を服用し続ければ治るてんかんもあります。

薬を服用しても治らないてんかんを「難治てんかん」と呼びますが、上に述べたように8割は治るてんかんです。今回のテーマの対象となるのは、治るてんかんの人を対象にしています。

悪影響があるもの、誘発するもの

てんかんという病気の課題は、いかにして発作を抑え、発作の頻度を減らし、再発させないかということに尽きます。では、何が発作を誘発するのでしょうか。

日常生活の中から、悪影響を及ぼすとされているものをピックアップしてみました。

お酒は要注意

てんかんとお酒は相性がよくないとされています。お酒は脳に直接作用して発作を起こしやすくします。

俗に「寝酒」という言葉がありますが、実はお酒は睡眠を浅くします。睡眠の質が低下し、睡眠不足になり、これが発作につながりかねません。

また、酒は薬との相性が悪いとされています。したがって、てんかんの発作がコントロールできない状態では、禁酒が基本です。

てんかんとコーヒー、タバコ

常識的な範囲であれば、コーヒーはてんかんの発作と無関係です。タバコも因果関係はありませんが、健康に悪影響を及ぼすことは明らかですから、禁煙にこしたことはありません。

また、喫煙中に発作が起こると、火傷や火事のリスクにつながることを考えると、禁煙を実行すべきでしょう。

てんかんとストレス

ストレスがてんかんの直接の引き金になるというわけではありません。問題は、過度のストレスによって睡眠の質が落ちるという二次的な影響で発作を誘発することがあるということです。

このほかに、疲れすぎや寝不足にならないことなど、日常の生活のリズムを守り、体調を崩さないように心がけましょう。

ポケモン騒動と光てんかん

光が激しく点滅するアニメのテレビを観ていた子どもたちが、てんかんあるいはてんかんに類似した発作を起こして大きな社会問題になりました。これは光感受性てんかんという特殊なてんかんの事例です。

光感受性てんかんは、4000人に1人というごくまれな発症率ですが、光の刺激がてんかんの誘因となることがわかってきています。光の刺激は様々なものがあり、水に反射する光や太陽の光、光が点滅するテレビ画面などあります。

いい影響があるもの、治療方法

規則正しい生活のリズムを守ることは、病気の予防の基本原則です。

規則正しい生活が大事

生活のリズムの乱れは、心身両面に悪い影響を与えます。てんかんの発作の直接的な誘因ではないにしろ、心身両面の不調が睡眠不足をとなり、疲労が蓄積し、それが誘引となって発作が起きることは既に述べてきた通りです。

また、てんかんの治療では、発作を再発させないために一日の決められた量の服薬を規則的に守り、絶対に中断しないことが大原則です。そのためにも、日常の生活のリズムを守ることが重要になってきます。

基本的な治療方法は抗てんかん薬の服薬

てんかんの治療は、薬物療法を中心に行われます。服用する薬は、抗てんかん薬と呼ばれる薬ですが、薬は、発作の種類や症状、患者さんの体質に合わせて使い分けられます。

1種類の薬だけで発作を抑えられない場合には、いくつかのお薬を組み合わせて併用していきますが、それぞれのお薬には副作用がありますから、医師や薬剤師の指示に従って正しく服用することが重要です。

抗てんかん薬の多くは、長期にわたり服用し続けます。自己判断でお薬の服用を中止すると、薬の効果が十分に発揮されないため、発作がおこりやすくなってしまいます。

食事療法・ケトン食療法

薬物療法だけでは発作が抑えられない場合、食事療法を行うこともあります。良く知られているのが主に小児てんかんを対象としたケトン食療法で、全般発作、部分発作を問わずあらゆる発作型に有効性があるとされています。

ケトン食は、エネルギーのもとになる糖類を極力抑える代わりに、脂肪を増やした食事による食事療法です。具体的には、砂糖や米、パン、パスタを制限し、卵、油、マヨネーズをうまく使った食事療法です。但し、ケトン食は栄養の偏った食事になるため、開始時には入院が必要になることがあり医師や栄養士の指導が必要です。

食事療法・アトキンス食療法

ケトン食療法がほぼ小児を対象としたものであるのに対し、アトキンス食療法は、成人用に開発された食事療法です。もともとは成人肥満の治療に開発されたものですが、てんかん治療に合わせて修正されたものです。

アトキンス食療法では、脂肪を多めに摂取して、糖質・炭水化物の総量のみを制限するもので、より簡便な方法です。

結局、規則正しい生活

てんかんの8割は治ります。但し、抗てんかん薬を長期にわたり、医師の指示に従って服用し続けなければなりません。そのためには、どうしても規則正しい生活が求められてきます。

てんかんの発作の頻度を減らし、再発を防ぐためには、ありきたりのことですが、規則正しい生活を維持するというのが、最善の日常対策ということになります。


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