適応障害とは?その症状、治療法は?


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社会生活では、人はストレスを感じる様々な出来事や環境の変化に遭遇することになります。様々なことにストレスを感じるのは普通のことですが、そのストレスが耐えがたいほどつらく感じるほどのものになると、憂うつな気分や不安、暴飲暴食などの症状が精神や行動にあらわれるようになります。

このように特定の出来事や環境のストレスが原因で精神面や行動面に症状が表れる精神疾患を適応障害と呼び、適応障害は100人に1人の割合で発症するともいわれています。

目次

適応障害の症状

・不安や憂うつ、怒り、焦り、緊張などを感じる
・睡眠障害やめまい等の身体面の症状がでる
・暴飲暴食や無断欠勤、攻撃的になるなどの問題のある行動をするようになる

以上のような精神、肉体、行動面のそれぞれに症状があらわれます。
また、これらは一例であって、実際には様々な症状があらわれることが考えられます。
基本的には、うつ、不安、問題行動や体調不良などが単独で、あるいは同時にあらわれます。

症状の中にはうつ病に近いものもありますが、うつ病が常に症状が出るのに対し、適応障害は症状の原因となるストレスがはっきりしており、ストレスの原因となるものから離れると、多くの場合で症状が弱まるという違いがあります。

ストレスの原因となるものがなくなれば半年以内に症状がなくなります。また、1日の中でも、ストレスの原因である環境、例えば職場などにいるときは憂うつな気分になってしまい、物事に手がつかなくなってしまう一方で、仕事外の遊び等の楽しいことをしているときは気分が晴れるということもあります。

適応障害の原因

適応障害はその病名のとおり、環境などにうまく適応することができなくなって発症する精神疾患です。その人にとって耐えられないほどにつらく感じられる特定の状況や出来事によるストレスが原因になります。

この耐えがたい特定の状況や出来事は、大災害などの特別な出来事である必要はなく、日常のとても個人的なことや、進学や就職といった世の中にありふれた環境の変化も、適応障害の原因になります。

主に適応障害の原因となるのは「耐え難いほどつらい環境」ですが、人によってどのような環境をつらいと感じるかということは異なります。ある人にとっては極めて快適で、ずっとその環境に身を置いておきたいと思うような環境でも、違う人にとっては一秒でも早く抜け出したいほどつらい環境であるかもしれません。
例えば、人見知りをする人と、他者との交流に全く緊張をしない人ではつらいと思う環境に違いが出てきます。

人の個性によってなにをつらく感じるかというのは異なるので、世の中に様々な個性があるように、様々な環境が適応障害を引き起こす可能性をもちます。

職場の適応障害

適応障害を発症する代表的なケースとしては職場のストレスによって発症するというものがあります。人間関係などの職場の環境が劣悪なために職場に行くことに非常に強いストレスを感じるようになり、そうなると会社にいるときや会社に行こうとするときに適応障害の症状が出るようになります。

この場合はストレスの原因になっているものは職場なので、職場から離れる休日の時などは、適応障害の症状は軽くなります。

あるいは、職場で特定の人にストレスを感じている場合は、部署をストレスの原因になっている人とは違うところに移動させることで症状が軽くなることもあります。

適応障害のきっかけ

職場での適応障害のきっかけにはそもそも新人で入社したばかりであるということや、異動などが考えられます。

入社したばかりの新入社員の人は、理想とのギャップや、初めて経験する仕事の苦労などにより、強いストレスを感じることがあります。そのため、入社してそれほど時間がたっていない時期に新入社員が適応障害を発症することがあります。

また、入社したばかりのストレスをうまく乗り越えて仕事に慣れていったとしても、異動などで環境が変化して適応障害になることがあります。異動すると人間関係や仕事内容が変わっていくため、そういった新しい労働環境にうまくなじめないと、中堅社員などであっても、適応障害を発症してしまいます。

職場の環境変化として喜ばしいことのはずである出世もまた、適応障害につながる可能性があります。出世をして管理職などになると、仕事の質などが変わります。部下の教育等をしっかりとしないといけませんし、自分の仕事に対する責任というものも大きく増えていきます。増えた責任がそのままプレッシャー、ストレスとなり、せっかく出世したのに適応障害になってしまいます。

また、大人だけではなく子供も、進学や転校した学校になじめず、適応障害を引き起こし、不登校になるというケースがあります。このような変化した環境によるストレスは、子供も大人も関係なくうけます。

高齢者の適応障害

適応障害は職場での発症が代表的ともいえますが、定年を迎え、職場を離れた高齢の方もしばしば適応障害を発症します。

夫が定年退職を迎えたことで、妻が適応障害を発症してしまうことがあります。
夫が働きに出て妻は専業主婦、という家庭だと、妻にとっては夫が昼間は家にいないということが当たり前になっています。そこに、夫が定年退職をしてずっと家にいるようになるという大きな環境の変化がおこります。

それでも夫婦仲良く暮らしたり、夫が趣味などでよく外に出るようになり、以前とあまり変わらない環境になってうまくいっていれば問題はありませんが、そうではない場合、しばしば夫が家にいるということで妻が深刻なストレスを抱えてしまうことがあります。

夫はもう仕事をしていないのに家ではゴロゴロしてばかりで家事を手伝ってもくれない、むしろ定年前よりずっと夫がいる分、手間が増えるといったことがストレスの要因です。

その結果、家での環境に強いストレスを感じ、妻は適応障害を発症してしまいます。

別れと病気

また、こちらは高齢者に限りませんが、大切な人との別れと病気は強いストレスになりやすいです。
大切な人がいなくなるということは簡単に気持ちに折り合いをつけられることではなく、そのストレスも大きくなります。

病気も強いストレスの原因です。治る見込みの薄い難病や、生き続けるためには透析などの手間のかかることをしていかなければならない病気はストレスが強く、特に適応障害につながりやすいです。

適応障害と性格

適応障害になりやすいタイプとしては、生真面目で完璧主義な性格やストレスを感じやすい人がなりやすいといわれています。
しかし、ストレスに強いといわれるタイプの人が必ずしも適応障害を引き起こさないわけではありません。ストレスに強いといっても、ストレスを感じるときはしっかりと感じているので、あまり強いストレスに長い間さらされていると適応障害につながっていきます。むしろ、ストレスに強いために、つらいことや厳しい環境にたいしても避けたりすることをせずに、強いストレス環境下で頑張り続けた結果、適応障害になることもあります。

適応障害の治療方法

適応障害の症状は抗うつ薬や抗不安薬による薬物治療である程度抑えられますが、適応障害の原因となっている環境のストレスをどうにかしないと根本的な解決にならないため、根本的な治療のための環境調整等が必要となります。

また、強いストレス環境にさらされたままでは、体調は良くならず、治療が進めづらいこともあるので、職場がストレス原因になっている場合は休職することが場合によっては必要になってきます。

どうしても職場の環境に適応しきれないようでしたら、心身の健康を守るためにも、退職をするケースもあります。

根本的な治療

根本的な治療としては、ストレスの原因である環境を調整すること、ストレスの原因になっているものに対して適応できるようになることの2つがおこなわれます。

ストレスの原因となっている環境を調整する実際の方法は、その環境によって異なります。職場の特定の人や業務がとてもストレスに感じ、適応できないという場合は、同じ会社でも部署を変えることで、職場で接する人間や業務内容が変わり、以前のように適応障害をおこすほどの強いストレスを感じることはなくなります。

ストレスの原因になっているものに対して適応できるようになるためにはカウンセリング等の精神療法を行います。ストレスの原因となっているものや人に対する受け止め方がネガティブすぎる場合は、いくらかポジティブな考え方に修正するなどして、本人の適応力を高め、ストレスを感じすぎないようにします。

治療方法のまとめ

・休職などをして、ストレスから離れる
・時に薬で症状を落ち着かせる
・環境を整えたり、精神療法で適応力を高めたりすることで、再びストレスによる適応障害の症状が発症しないようにする

以上のようなことが適応障害の治療では行われます。

適応障害と他の精神疾患の関係

適応障害は他の精神疾患に至るまでの途中段階である場合があり、最初は適応障害と診断されていたものの、後々にほかの精神疾患に変化していく、あるいは診断されるようになるというケースは少なからずあります。

例として、最初はストレスの原因から離れると症状が弱まるために適応障害と診断されていたが、後々に常に症状が出るようになり、うつ病と診断されるというケースがあります。

適応障害は診断の条件に、うつ病や不安障害などの他の精神疾患とは診断されていないというものがあり、症状がそういった他の精神疾患に当てはまらない場合においてのみ適応障害と診断されます。
そのため、症状が悪化したりして他の精神疾患に当てはまるようになると、適応障害からその精神疾患に診断名が変わります。

適応障害と診断されても必ずしもそれだけで症状がおさまるとは限りません。うつ病などに変わっていったら本人の負担も大きくなりますし、治療も大変になります。そのため、適応障害と診断されたら早期にしっかりとした治療を行い、ストレスに負けないようにすることが重要になります。


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