発達障害とは?ADHD,アスペルガー症候群の特徴は?


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発達障害は生まれつきの脳の機能障害によって生じるとされている一部の障害の総称です。

発達障害というくくりの中には読み書き等の一部のことだけが困難になるLD(学習障害)や、ADHD(多動性障害)、ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)など様々な特徴の発達障害があります。

発達障害は様々な種類がありますが、1人で複数種類の発達障害を併せ持つことが多いです。
また、成人するとうつ病や統合失調症といった精神疾患を併発することも多くなります。

発達障害は先天的なものと言われていますが、実際に発達障害であると気づく時期は、子供が成長し、ほかの子供との発達の差が出てくるころであるというケースが多いです。

また、成人してから発達障害の特徴があることに気づき、発達障害であると判明するケースもあります。こういったケースは、近年、大人の発達障害として注目されることが多くなっています。

発達障害はその特徴もまちまちであるように、その対処方法もまちまちであり、投薬を行うケースもあります。発達障害の種類に合わせた生活環境の調整が重要であり、子供の場合は教育環境を、大人の場合は職場環境をそれぞれ合わせることが必要になります。

ここでは様々な種類がある発達障害のうち、主にADHD(多動性障害)とASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)について、特徴と対処方法をご紹介します。

目次

ADHD(注意欠陥多動性障害)とは?

ADHDは発達障害の一つであり、落ち着きのなさや集中力の欠如等があらわれます。

今でこそ発達障害やADHDのことが知られているので、幼少期の発見と対処が可能ですが、昔は単なる落ち着きのない子として扱われていたと考えられます。そういった人が大人になってからふとしたきっかけでADHDという発達障害であるとわかったというケースもあります。

大人になってもADHDの特徴によって苦しんでいる人がいる一方で、ADHDの子供のうち半分以上は大人になるころにはADHDによって大きな問題が起こることはなくなります。

また、割合としては30人強に1人くらいがADHDであるといわれています。つまり、おおよそ学校の1クラスに一人ぐらいはいるとも考えられます。

ADHDの特徴

・多動性 (成人するころには落ち着くことが多い)
席に座ってじっとおとなしくすることができない
他人の会話に割り込む
順番を待つのが難しい

・衝動性
後先を考えない行動をする
行動の計画が立てられない、計画や予定があってもその通りに実行できない
カッとなりやすい

・不注意
うっかりミスが多くて気も散りやすい
物事に対する集中力や、うまく整理する能力が欠けている
複数の作業を同時並行的にできない

以上のような特徴がADHDにあり、小学校に入るころにはこのような特徴が表れるようになります。

特徴のあらわれ方としては、多動性、衝動性が強く出るタイプ不注意が強く出るタイプがありますが、多動性、衝動性、不注意のすべてが強く出るタイプもあります。

子供がADHDであった場合は成長とともに落ち着きが出ることが多く、大人になってもADHDの特徴で苦しんでいる場合は、ミスが多くなるなどの不注意の特徴によるものが比較的多いとされています。

ADHDの対処方法

ADHDの特徴を改善する投薬や生活環境の調整などが行われます。

投薬ではすべての人にしっかりとした効果がみられるわけではありませんが、ADHDの特徴である多動性、衝動性、不注意を抑えることができます。

しかし、薬による効果は一時的なものであって、根本的にADHDの特徴を消すことはできません。薬を飲んで多動性等を抑えただけでは、薬を飲むのをやめたり忘れたりしたら、また以前と同じようなADHDの特徴があらわれるようになります。

このように、投薬による特徴の改善は極めて一時的なものですが、その間の生活はうまくいきますし、うまくいったという経験はADHDの人に対して良い影響があります。また、投薬とともにほかの治療も行うので、薬による根本的な改善ができないからといって、いつまでも投薬を続けるわけではありません。

環境の調整としては、ADHDは集中力の欠如が特徴なので、集中が必要な時には集中を散らす要因になるものを遠ざけたりすることや、指示をわかりやすいものにすることで、ADHDの人でも問題なく作業などをできるようにします。

ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)とは?

ASDは自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群とも呼ばれ、コミュニケーション能力に難があり、人間関係の構築が難しかったり、融通が利かず、規則性にこだわったりする特徴があります。生後1年を過ぎたころから特徴が目立つようになるといわれており、また、1~2%の人が実はASDであるともいわれています。

ASDの特徴

・他者の気持ちを理解するのが苦手
・想像力が欠け、目の前にあるものしか理解見えない
次にどうなるかを予測できず、別の視点から考えられない
・コミュニケーション能力に難があり、人間関係をうまく構築できない
・抽象的、あいまいな表現を理解できない、比喩表現をその言葉の意味のままうけとる
・特定のことに熱中しすぎる
・融通がきかない、同じやり方に固執する
・視覚や聴覚が過敏なことがある、ほかの人が気にならないことでもよく感じるので気になる
・2つ以上のことを同時に行うことが難しい

以上の特徴がASDには見られます。
また、このような特徴による他者との違いに悩んだ結果、うつ病等の精神病を発症することがあります。

臨機応変な対応を求められる状況は苦手ですが、ひとつのことに熱中し、深く追求することが得意なため、不得意な部分をうまく補うことができれば、優秀な成績を残すこともできます。

ASDの対処方法

基本的には環境調整が行われます。うつや不眠などの症状が目立つ場合には、その症状に対しての薬物治療が行われる場合もあります。まわりの人がASDの人の特性を理解し、それにあわせた環境作りや療育を行うことが、ASDの人の不安を減らすことや、ASDの人のコミュニケーション能力、適応力の上昇につながります。

環境調整の方法はいくつもありますが、そのひとつとしてASDの人に対する指示や言葉は、具体的でわかりやすい表現をもちいるというものがあります。ASDの人はあいまいな表現や抽象的な指示が苦手なため、「適当にうまくやって」や「○○な感じで」といわれてもうまくいかない場合があります。そのため、理解しやすい具体的な表現をすることがASDの人への指示や言葉では重要になります。

また、感覚が過敏なため、音などの周囲の情報が勉強や業務の障害になる場合があります。そのため、作業中はまわりの音や視覚情報をできるだけ遮断することで、ASDの人がより効率的に作業することが期待できます。

その他の発達障害

特に有名な発達障害としては上記のADHD,ASDがありますが、他にも様々な発達障害があります。
その他の発達障害として以下のようなものもあります。

LD(学習障害)

LDは基本的に知的レベルが低くなく、多くの行動に関しては問題がないにもかかわらず、ごく一部のことだけが極端に不得意であるという発達障害です。不得意なこととしては、読み、書き、計算といったことなどがあり、そのうち二つ以上が不得意なこともあります。

一部のことだけが不得意といっても不得意なことによる悪影響が大きかったりしますので、LDの子供に関しては教育のサポートをしっかりと行う必要があります。

トゥレット症候群

トゥレット症候群では、本人の意思とは関係なくいきなり体の一部が動いたり、声を出したりしてしまうことを繰り返すチックという症状が主に出ます。
やたらとまばたきをしたり、首や手を動かしたりするものが運動チック、奇声や悪口を突然発してしまうものは音声チックとそれぞれ呼ばれます。

チックが出るのは主に子供のころで、成人するころには多くの場合でチックの症状が改善しています。

大人の発達障害

子供のころから単なる「落ち着きのない人」や「コミュニケーションが苦手な人」であると考えられていた人が、実際に調べてみると発達障害であると判明するケースがあります。

また、大人、社会人になると学生時代とは異なった環境に置かれるため、今まで目立たないですんでいた発達障害の特性が、様々な問題といっしょに目立つことが多くなる場合もあります。

このようなことから、比較的子供に特徴がみられやすいとも考えられている発達障害が大人になってから判明するというケースも多く、「大人の発達障害」は取り扱われることも多いテーマになっています。

大人になると職業選択をする必要がありますが、世の中には様々な職業があるため、発達障害であってもこれといった特別な苦労を感じることが少ない職業がある一方で、極めて相性が悪く、苦痛を感じてばかりになりやすい職業もあります。

発達障害の人に限らず、個性や適性は人それぞれなので、適職も人それぞれではありますが、発達障害の人は特性が偏りがちであるので、極端な向き不向きがあらわれやすくもあります。そのため、発達障害の人の職業選びはより慎重になる必要があります。

発達障害の人と相性がいいといわれている職業もあります。そういった職業のリストなどを参考にすることで、より相性のいい職業を見つけられる可能性も上がると思われます。

発達障害の人の適職についての記事はこちらです。

また、仕事に限らずとも、結婚生活や子育てといったことにも発達障害が負担になるため、仕事では発達障害の特徴の良い面を引き出してうまくいっているが、家庭では悪い面が前面に出てしまってうまくいかないというケースもあります。

ADHDによる影響

ADHDでは多動性、衝動性、不注意の特徴が出てきます。

良い面としては、思い立ったものを実際に行動に移すまでが早く、行動的であるといえます。

しかし、悪い面もあり、行動しはじめたことを最後までやり通す根気がADHDの人にはしばしば足りません。それ以前にそもそも計画性に欠けているので、準備の足りない計画を始めてしまっていることさえあります。その結果、行動力があり、どんどん新しいことをしていくが、結果には結びつかないということがおこります。

その他にも、不注意の特徴によるミスの多発や、段取りの悪さなどがADHDによって引き起こされてしまいます。

このような悪い面が会社で出てしまうと評価が下がりますし、家庭で出てしまうと家族関係に問題が生じてしまいます。

しかし、必ずしも失敗にばかり結びつくわけではなく、良い面である行動的という点をうまく成功につなげていけば、エネルギーに満ち溢れた優秀な大人、社会人になることもあります。

ADHDの特徴を成功につなげていくことは、自然と出来上がった環境や本人によって成し遂げられていくこともありますが、周囲の人間がその特徴を理解し、支援することによって成し遂げられていくこともあります。

ASDによる影響

ASDでは他者の心情を察することなどができないため、コミュニケーションがうまくできなかったり、規則性や特定のものに強いこだわりを持つようになります。

現代社会ではコミュニケーション能力や臨機応変に行動できることが求められることが多く、そういった職場ではASDの人はなかなかうまくいかないことがあります。

意識しないと人は相手もそれで分かるだろうと思って抽象的だったり、あいまいだったりする表現を自然と使いがちです。ASDの人はそういった表現をうまく理解することが苦手なので、抽象的な指示をされると理解しきれなかったり、しっかりと実行できなかったりします。

規則性や特定のやり方への強いこだわりもASDの特徴ですが、臨機応変さが求められる職場ではそういった規則性やこだわりとは異なったことがしばしば要求されるので、こちらもうまくやることへの障害になります。

このような仕事においてデメリットとなる特徴がASDにはありますが、その一方で、特定のことへの集中力や規則性が重要とされることに対しては、特徴がうまく合えば優秀な結果を出すこともできるというメリットもあります。

自らの得手不得手を踏まえて、ぴったりな職業を選ぶ、または、職場で自らの不得手をどうにかして補ってもらうことで、しっかりと仕事をこなすことができます。

発達障害と周囲の理解

発達障害は生まれつきのものです。好きで発達障害になったわけではありませんし、まわりが戸惑うような行動をしたとしてもそれはわざとではありません。

しかし、変わった行動をする発達障害の人に対して周りの人がどこかやりにくいと思ったり、いらいらしてしまったりすることがしばしばあります。

その際、もし周りの人に発達障害に対する理解がなければ、その発達障害の人に対する風当たりが強くなり、発達障害の人の負担も大きくなります。その結果、発達障害の人の自信がうばわれることなどによって、うつ病などの二次的な精神疾患を発症することがあります。

そのため、発達障害については本人や家族だけではなく、職場の上司や同僚などといった周りの人が理解しておくことも極めて重要になります。

発達障害の子供と親

発達障害の特徴が子供のころに目立っていると、その特徴による負担は子供だけでなく、その親にも大きくかかることがあります。

幼少時の子供の発達は個人差がでてしまい、それはある程度どうしようもありませんが、親の心情としては、一般的な、平均的な発達はしてほしいという考えになりがちです。

そのため、発達障害であって、ほかの子供と比べると異なった発達をしているということは親にとって深刻な悩みになりかねません。子供の生まれつきの特徴によるものが大きいのに、親である自分の育て方が悪かったのではないかと思い悩んでしまうこともあります。

また、ADHDなどの特徴が強く出ると子育ての負担が大きくなることがあります。子供があまりにも衝動的な動きを常日頃から行い続けるために親の疲労が大きく増えたり、どうして自分の子供ばかりこうなのかなどといった気持ちによるストレスがたまったりしてしまいます。

このような負担の増加は、時に親や周囲の人の発達障害への無知、無理解、無配慮によって引き起こされてしまいます。その一方で、しかるべき対処をしていれば支援による親の負担の軽減や、より良い子供の成長も期待できます。

さらに発達障害は対処のやり方などによっては、その特徴が極めて優秀な結果につながる可能性もあります。

そのため、親と子、両方の幸福のためにも発達障害の診断と適切な対処、さらに周囲の理解は極めて重要になります。


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