発達障害は治る?薬を使わないで改善させる方法とは


発達障害という言葉を最近よく耳にすることがありませんか?もしくは自身が発達障害と診断された、ひょっとしたら自分はそうではないか心配な方もいるかもしれません。発達障害であった場合、薬による治療は必要なのでしょうか。服薬によって発達障害が根治することがあるのでしょうか。

目次

発達障害は治すことができるか

          
一般的に発達障害と呼ばれるものを大きく分類すると

・LD(学習障害)
・ADHD(注意欠陥・多動性障害)
・広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)

上記のLDと広汎性発達障害に関して言えば、これらの症状を直接的に改善させる薬はありません。具体的な発症のメカニズムが今なおはっきりしないのです。

ADHDに関しても根本的に治療することはできません。中枢刺激薬のコンサータ、非中枢神経刺激薬のストラテラの2種類の薬がADHD特有の症状の緩和に有効とされています。ADHDは、LDや広汎性発達障害よりも比較的発症のメカニズムの解明が進んでいるのです。

ADHDの方は他の人の脳と比べて脳神経内のアドレナリンやノルアドレナリンの不足していると言われています。薬の作用によって脳の機能の一部を活性化させアドレナリンやノルアドレナリンの濃度を増加させるのです。コンサータは中枢神経脳内物質の分泌を促す一方でストラテラは前頭葉の脳内物質の濃度を高めます。いずれにせよ薬の作用が切れれば、脳は元の状態に戻ります。   

発達障がいそのものは命にかかわらない

病気の中には適切な治療を行わないと症状が悪化し、生命に重大な危険を及ぼすものがあります。しかし発達障害は生まれつきの個人の脳の特性ともいえるので、命に直接関わることはありませんし進行することもありません。

発達障害を持ちながら、環境に適応できており障がいを感じない人もいます。しかし特性によって生きづらさを感じ続けている場合は日々、ストレスに晒され続けられます。なんらかの有効な対策を行わなければ、うつなどの二次障害を発症してしまうおそれがあります。薬の使用は、日常生活の質を高め、毎日のストレスを減らせる場合があります。二次障害の予防に繋がるのです。   

副作用のリスクも考慮する。

    
薬を服用する時、もっとも考慮しなければならないことは副作用です。ADHDの治療薬の目的は根治を目指すものではなく、症状の緩和です。効果を持続させるには薬を飲み続ける必要があるのです。

コンサータもストラテラも比較的新しい薬であるため長期使用による人体への影響はまだデータ不足です。コンサータを小児に長期間投与した場合、体重増加が抑制されるという報告があります。子供の発育に悪影響を及ぼす可能性があるのです。

またコンサータとストラテラともに肝臓で代謝されるため。毎日の使用による肝臓への負担は小さくありません。その点を憂慮するならば使用は控えるべきでしょう。薬を使用することで得られるメリットとリスクを天秤にかけながら慎重に判断する必要があります。 

薬以外にも症状を緩和させる方法はある

ADHDの特性を持つ方にとって大きな問題はADHDの脳の傾向そのものよりも、その傾向が原因で失敗を繰り返し、叱責を受けることで自己肯定感を喪失することです。薬の使用は集中力を高め、思考を整理することの助けになる可能性があります。それによって成功体験を積み重ね自信を高めてゆくことも十分に考えられます。しかし薬の使用はADHDによって引き起こされる症状を緩和させる為の選択肢でしかありません。

薬を使用しなくとも、日常生活のちょっとした工夫や改善で、同様の効果を得られることがあります。少しの工夫でADHDの方が陥りやすい「うっかりミス」は激減することがあります。ADHD特性の方が苦手とするのは複数の作業を同時に進めることです。どの作業を優先していいのかわからず頭が混乱し結果ミスの山を積み上げてゆくのです。

仕事の指示を受ける際は口頭ではなく、文書や図で示してもらうよう配慮してもらうのも一つの手段です。図や文書をゆっくり見られれば、作業の手順をゆっくり確認することができ、それまでは同時に行っていた複数の作業を段階ごとに区分け、順番を追って進められます。

仕事の抜け、漏れの対策には職場の卓上に「仕事の前に行うことチェックリスト」を作成することで改善するかもしれません。始業前に必ず「準備」の時間を設けることで余裕をもった仕事ができる場合があります。ほんの些細のことでも自分が「できる」という実績の積み重さねられれば。自己肯定感は自然に高まります。

まとめ

発達障害を根本的に治す薬はありません。薬を使用する場合もあくまで症状を緩和し日常生活をより良くするための補助的な役割に留まると考えましょう。過度な期待は禁物です。

一方で薬を使わずとも少しの日常の工夫が、毎日の生活の質を大きく向上させることもあるのです。自己の特性を「治す」というよりも、どうすればその弱点をカバーすることができるのか、またどうすれば特性を活かすことができるのかという視点に立つことが重要です。


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