発達障害の二次障害とは?統合失調症、うつなどの関連性


ADHDやアスペルガー症候群などは、総称して発達障害と呼ばれています。発達障害は、生まれつき脳の発達が通常と違っているために、幼児のころからあらわれてくる先天的な障害で、これが一次障害です。

ところが、発達障害の人は、人にわかってもらえないようなストレスや不安を感じるために、これが起因となって統合失調症やうつ病などの精神疾患を併発することがあります。これが、今回のテーマである二次障害です。

目次

二次障害とは

発達障害を持つ人たちの言動は特異なために、周囲から非難の目で見られがちです。こうした自分に対する否定的な視線に晒されるために、発達障害の人は、人に言えないようなストレスを受け、不安な気持ちを抱え込んでいます。その結果、二次障害と呼ばれる症状に冒されることがあります。

発達障害の症状そのものが一次障害

もう少し詳しくみていきましょう。発達障害はいくつかのタイプに分類されますが、今回とりあげるADHD(注意欠如・多動性障害)、アスペルガー症候群、学習障害は、発達障害の代表的な症状です。

その特徴的な症状については、後で触れるとして、発達障害に共通していることは、それが生まれつき脳の一部の機能に障害があるという点です。この生まれつきの障害によって発症する症状が一次障害です。

周りの人のサポートで、症状によって引き起こされる生活の中の不具合を改善することはできますが、一次障害としての発達障害は、治すことができません。

発達障害は生まれつきの「違い」をもたらす

ADHDにしろ、アスペルガー症候群、学習障害にしろ、これらの障害を持った人は、一言でいえば、普通の人にはごく当たり前の常識的な振る舞いができません。

何も知らない人からみると、彼らの言動は、非常識なものに見えます。発達障害の人の「当たり前」と、普通の人の「当たり前」には、深刻な隔たりが生じているのです。

その「違い」は、本人に「どうして私はできないのか」という自責の念を抱かせることもあれば、他の人からの「どうしてこれができないんだ」という叱責を呼び込んでしまうことにもなります。

「異なる」という苦しみが精神疾患を誘発する

発達障害の人は、このような大きな隔たりを否応なく意識させられ、他者と異なるという意識が重くのしかかり、自己嫌悪に陥ります。努力して治らないので、不安も高まります。

こうしたストレスと不安が高じた結果、一次障害の程度がより深刻化するばかりではなく、いくつかの精神疾患を抱え込むことになります。

生まれつきの一次障害が、後天的な二次障害として精神疾患を誘発するのです。ただし、発達障害だから必ず二次障害になるというわけでもないということも付け加えておきましょう。

発達障害の症状と苦労とは

発達障害の人を持つ家族は、思いもかけないような心配事や苦労を抱えていますが、なによりも深刻に悩んでいるのは、当の本人です。

なにしろ、言い訳が通用しないような特異な言動をすることがあるのですから。でも、発達障害は治らないとは言え、「打つ手はある障害」だということも忘れないでください。

ADHD

ADHDは、以下のような3つのタイプに分類されています、

一つは、多動性、衝動性が目立つタイプ(多動。衝動優勢型)。
一つは、不注意が目立つタイプ(不注意優勢型)。
一つは、両方が目立つタイプ(混合型)です。

このうちの8割は、混合型です。

このようにADHDは、じっと座っていられないなどの多動性と順序立てて物事が考えられない衝動性、あるいは集中できない、不注意による物忘れなどの症状が出てきます。

このため学校はもとより社会人となると仕事をこなす上で、様々な支障をきたしてきます。

アスペルガー症候群

アスペルガー症候群は、広い意味での「自閉症」のひとつに数えられています。自閉症の特徴である「「対人関係の障害」と「パターン化した興味や活動」の2つの特徴をもっていますが、知的発達に遅れのある人はほとんどいません。

このため、高機能自閉症と呼ばれることもあります。アスペルガー症候群の特徴の一つに、抽象的な表現を理解するのが苦手で、慣習的な暗黙のルールがわからないということがあります。みんなが自明のこととして行う為が素直にできないのです。

また、冗談や比喩が通じないなどの特徴があり、対人関係をうまく築けません。ですから、「昨日打ち合わせしたアレ、適当に処理してよ」などと言われると、どうしていいかわからなくなります。

人の心情をおしはかることも苦手です。突出したYKさんとでいうべきでしょうか。このほかに、興味の対象が独特で変わっている(特殊な物の収集癖があるなど)、表情や身振り、抑揚に独特のものがあり、何も知らない人からは敬遠されがちになります。

学習障害

学習障害は、限局性学習症とも呼ばれます。ある特定の課題の習得だけが、 他に比べてうまく行かない状態です。

たとえば、読字障害では、文字や文章を読むことがなかなかできません。この読字障害には、音読が流ちょうにできない、漢字の識別ができない、文章の意味の読み取りが難しいものなども含まれます。

要するに、読み、書き、計算といった特定の科目の学習が著しく不得意になります。一方で不得意なごく一部の能力以外はまったく普通です。

そのため、言葉を口に出して言う分にはまったく問題ないものの、字で書くとなると非常に困難になるといったことが生じます。
 

発達障害は一つだけとは限らない

発達障害では、ADHDやアスペルガー症候群、学習障害などいくつかのタイプに類別されますが、必ずしも一つだけしか現れないというわけではありません。

ADHDであると同時にアスペルガー症候群や学習障害であるということもあります。このため、複数の障害を併発していると、個々の障害に関わる苦労が重なり、苦労と負担も倍加してきます。

それはまた、発達障害では個人差が大きいということを物語るものです。

発症しうる疾患

発達障害は、ストレスや不安が高じて、第二次障害としての精神疾患を誘発することがあります。
以下、簡単にそれらの症状をまとめておきます。

統合失調症

思考や感情や行動を一つの目的に沿って統合する能力が長期にわたって低下し、幻覚や妄想やまとまりのない奇異な行動がみられるのが統合失調症です。昔は、これを精神分裂病と呼んでいました。

統合失調症は、時期によって陽性症状と呼ばれる症状と陰性症状と呼ばれる症状があらわれます。発症時期にあらわれるのが陽性症状では、幻覚・幻聴、妄想、思考の混乱、異常な行動がみられるようになります。

幻覚と妄想は、統合失調症の代表的な症状です。その時期が過ぎると、陰性症状があらわれてきます。陰性症状では、感情や意欲の低下が見られます。

喜怒哀楽が乏しくなって、意欲や気力や集中力が低下します。一方で口数も少なくなり、思考力が低下して、会話がなりたたなくなってきます。

さらに、他人とのコミュニケーションを避け、物事に無関心になり、ぼーとして一日を過ごし、引きこもり状態になっていきます。

うつ病

厚生労働省の調べによれば、平成23年におけるうつ病と診断された患者は約100万人で、そのうち入院した患者数は約25万人でした。私たちの暮らしと身近な精神疾患で、心の風邪と呼ばれることもあります。

うつ病は、気分障害の1つに分類されますが、症状としては、憂うつな気分に支配され、意欲や興味が低下していきます。このほか、思考力が低下し、不安や悲しみに包まれ、食欲も低下して、良く眠れないなどの睡眠障害もあらわれてきます。

綺麗好きだったのに風呂に入るのが億劫になり、歯磨きもパスしたくなるというのは、うつ病の疑いがあります。うつ病の大きな要因はストレスとされています。ストレスにさらされて生きている発達障害の人は、うつ病になりやすい環境にいるということになります。

強迫性障害

強迫性障害とは、何かの行為や思考を自分の意思に反して何度も繰り返してしまう障害です。外出するとき、カギをかけたのに不安になって何度も確認するといった行為は、脅迫行為と呼ばれます。

一方、いくら打ち消しても、心につきまとって離れない、不快・不安な気持にとらわれえるのが強迫観念です。この強迫障害も、発達障害の二次障害としてあらわれる症状です。

社会不安障害

社会不安障害とは、以前は、「あがり症」とも「対人恐怖症」とも呼ばれていた障害です。人と対面して話すときに、過度な緊張や不安を感じ、動悸や息切れや吐き気などの身体症状が発生します。人との対話や会話が苦手な発達障害の人にとっては、他人事ではない第二次障害です。

対策は?

前に述べた二つの重要なポイント確認した上で、その対策を考えていきましょう。一つは、発達障害だからと言って、必ず二次障害にかかるというわけではないということ。一つは、発達障害は完治は望めないが、「打つ手はある障害」だということです。この打つ手が、以下に述べる対策です。

まず理解が必要

対策をするためには、自分が発達障害であると気づき、そのことを受け入れることが重要です。実際、自分でも周りの人も気づかず、二次障害の精神疾患が発症したことで、診断してもらったら、実は発達障害だった、というケースも稀ではありません。

ですから、日ごろの行為の中に発達障害の気配を感じたら専門の医療機関に相談されることをお勧めします。発達障害であるとわかれば、自分の行為についての理解が深まり、むやみな自己否定が収まります。

教育の場でも二次障害が起こりうる

発達障害であることを教師が認識していない子どもの場合、しばしば厳しめの指導が入ります。子供は、「やらない」「努力しない」のではなく「できない」であるにもかかわらず、教師が、子どもにとって無理な注文をしているのです。

その結果、子どもの自己肯定感は薄れ、うつ病などの二次疾患を発症することになります。子どもの生活範囲の中で重要な役目を担っている人たちに、子どもの症状を告知し、理解してもらうことが重要な対策となります。

社会人でも環境調整が必要に

社会人になって、就職すると親や教師のサポートは望めなくなります。そのため、発達障害の人は、誰も自分を助けてくれる人のいない未知の荒野をさまよい歩くような不安感に襲われます。

職場に慣れろというのは、発達障害の人にとっては、ハードルの高い要求です。発達障害に理解のある職場、発達障害の従業員のために環境調整を用意してくれる職場を探すことを優先すべきでしょう。

「不得意」の裏には「得意」が

発達障害の人は、学校はや社会生活の場で、さまざまな「不得意科目」を抱えています。しかし、「得意科目」がないわけではありません。

たとえば、アスペルガー症候群などを例にとると、コミュニケーションや臨機応変な仕事は苦手ですか、一つのことを集中してやることは得意です。

決して低くはない知能の中の得意科目が本人はもとより周囲に自覚されていない、あるいは見出されていないという面があるのです。本人や周囲がしっかりと理解してあげれば、「不得意」の悪影響を極力抑え、「得意」の部分をのばすこともできるのです。

適切な環境があれば起こりづらい

発達障害の二次障害は、あくまで一時障害を起因として発症した後天的な精神疾患です。ですから、まず、根本の1次障害に手を打って、その対策に取り組むのが本筋です。

そのためには、理解者を作ること、ストレスや不安を軽減する環境調整を行うこと、規則正しい生活を習慣づけること、そして最後は、医者や専門家に相談することに尽きるでしょう。


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