過敏性腸症候群の混合型の特徴、原因、治療法は?


過敏性腸症候群(IBS)は、主として大腸の運動および分泌機能の異常で起こる病気の総称です。IBSは、症状によって便秘型、慢性下痢型、混合型、分離不能型(ガス型)の4つのタイプがあります。

今回のテーマは混合型の特徴と対応策です。

目次

混合型の特徴

下痢症状、便秘症状が交互に出る

IBSの4つのタイプの中で、一番多いのが混合型です。IBS患者の約半数が混合型です。

IBS混合型では、数日便秘が続いていたのに、ある日から下痢になったりといった具合に下痢症状と便秘症状が交互にあらわれてきます。

途中でタイプが変わることも

下痢と便秘という正反対の症状が、交互にあらわれるのが混合型ですが、一度混合型になったらその後ずっと同じタイプになるわけではなく、混合型から下痢型、便秘型になったり、下痢型から混合型に変化するというケースも見られます。

便の形状による分類

自分の症状が何型なのか、素人でも分別できますが、医学的にはIBSの4つのタイプは、便の形状によって分類されています。

●IBSの分類

便秘型硬便または兎糞状便が25%以上あり、軟便(泥状便)または水様便が25%未満のもの
下痢型軟便(泥状便)または水様便が25%以上あり、硬便または兎糞状便が25%未満のもの
混合型硬便または兎糞状便が25%以上あり、軟便(泥状便)または水様便が25%以上のもの
分類不能型便性状異常の基準が上記のいずれも満たさないもの

男女共に多い

日本医療データセンターによると、IBS患者の男女比では、女性53%、男性47%となっています。これをタイプ別にみるとどうなるのでしょうか。


参考:株式会社日本医療データセンター「IBS(過敏性腸症候群)に関する医療統計データ分析

IBSの割合は混合型47%、下痢型29%、便秘型24%となっています。


参考:Miwa H:Patient Prefer Adherence, 2008; 2:143-147

混合型の原因

腸の動きの乱れが一因

それぞれのタイプによって原因が異なるわけではありません。IBSの原因は、ストレスによる腸の活動の異常です。

脳がストレスを受けると、自律神経を介してストレスが胃や腸に伝達され、胃腸の運動異常を引き起こし、腹痛や便通異常が発生します。逆に下痢や便秘などの腸の不調も、自律神経を介して脳にストレスを与えます。

このように、自律神経の乱れによって腸の働きに異常が出てきて発症します。

ストレスが腸の動きを狂わせている

腸とストレスの関係をもう少し詳しく見てみましょう。

腸の内容物を運ぶ「蠕動(ぜんどう)運動」をコントロールしているのが自律神経ですが、ストレスにさらされると自律神経に乱れが生じ、蠕動運動に異常が発生します。

また、消化管知覚過敏となり、心理的にも一種の強迫観念にとらわれるようになります。

セロトニンに影響

腸の運動をコントロールするのは自律神経ですが、神経伝達物質、セロトニンも腸の運動に関与していることが分かっています。セロトニンの90%は、腸内で作られます。

ストレスがかかると、セロトニンの分泌が正常に働かず、腸の蠕動運動に異常が生じて、IBSの症状を発生させるとも考えられています。

身体的な負担による悪影響も

ストレスのほかに、身体的な負担による要因もIBS発症の契機となります。例えば寝不足や、身体的な疲労、急な寒暖差などは自律神経を乱す要因として考えられます。

もっとも、身体的な不安が直接的な引き金になるというよりも、身体的負担がストレスを呼び込んで発症につながるというべきでしょう。肉体的な疲労を溜め込まないように心がけましょう。

食事の影響も受けている

IBSが腸の運動の異常であるからには、当然、食事の影響も無視できません。実際、IBSの治療の中には、食事療法も取り入れられています。

よく知られているのが「FODMAP(Fermentable、Oligo-、Di-、Mono-saccaharides and Polyols)」です。FODMAPは、「発酵性のオリゴ糖、2糖類、単糖類、ポリオール」という意味ですが、これらの摂取量が多いとIBSが悪化しやすいとされています。

腸のねじれが原因のことも

ストレス由来のIBSのほかに腸のねじれによる便秘・下痢も考えられます。つまり、日本人に多いとされる腸のねじれという形態異常による症状です。

腸がねじれて一部が狭くなることで、便が詰まって便秘になりますが、便によってせき止められている後ろの便は下痢状態ですから、便秘の便が排便されると、次に下痢がでるということになります。

こうしたメカニズムによって、ストレスと無縁の混合型に似た症状があらわれるケースもみられます。

混合型の治療法

IBSにとって、大切なことは日ごろからのストレス・ケアです。そのためには、生活習慣と食生活について、見直してみることも欠かせません。

日頃のストレスを減らす

IBSの発症の契機となっているのはストレスです。ストレスを上手に処理することが、IBSの予防と治療にとって不可欠です。

とはいえ、仕事のストレスを自分の意志でコントロールするには限度があります。働いている以上ストレスは、織り込み済みです。

それよりも、たまったストレスを発散する手法を身に付けることが重要です。週末には、気心の通じる友だちとの飲み会(ストレス発散会)をするとか、泣けそうな映画を観て思い切り涙を流すとか、スポーツ観戦にでかけるとか、人それぞれのストレス発散の手法を身に付けることをお勧めします。

健康的な生活を心がける

健康な生活とは、どんな生活なのでしょうか。考えてみると、私たちは、知らず知らずに不健康な生活に慣れきっていることに気づかされるものです。

健康な生活とは、具体的には次のようなことです。早寝早起きは無理としても、今より1時間早く寝て、1時間早く起きる。暴飲暴食を避ける。決まった時間に食事をする。休みの日には、なまった体に活を入れるための運動をする。

この中の一つを地道に実行するようになると、他のこともおのずから整ってくるものです。

食事に気をつかう

食事のポイントはいくつかあげておきます。アルコール、コーヒー、辛い物など刺激の強い食品や消化の悪い食品を避けることは言うまでもないことです。

腸内の老廃物を体外に排出してくれる食物繊維を含んだ食品を摂るようにしましょう。

ただし、食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維がありますが、植物繊維なら何でも良いというわけではなく、偏らず、バランスを考えてとるようにしてください。

ちなみに、不溶性食物繊維は、ごぼう、ブロッコリー、さつまいも、いんげん豆、大豆などなど、水溶性食物繊維は、わかめ、昆布、しいたけ、りんご、バナナなどです。

このほか、腸の粘膜を強くする乳酸菌、ビタミンA、ビタミンB2などを摂ることもポイントです。

薬を服用する

市販の便秘薬もありますが、できれば医師の診断を受けたうえで、飲む薬を決めることをお勧めします。というのも、同じIBSでも、下痢型には効果的でも便秘型には不適合という薬もあるからです。

また、症状によっては、男性と女性では、薬が異なるということもあります。

腸のねじれ対策の運動、マッサージをする

ねじれ腸のために詰まっている便を移動させるのがねじれ腸マッサージです。腸の中でも、ねじれやすい箇所は「下行結腸」「横行結腸」「S字結腸」の3つです。

この3カ所にマッサージを施し、ねじれた腸を揺らしてほぐせば、便は移動していきます。ストレス由来ではないと思う場合は、試してみてみください。

過敏性腸症候群のタイプに要注意

検査しても異常が認められないIBSの下痢や便秘は、身体的要因と無縁の特殊な下痢です。しかし、混合型の場合は、腸のねじれが原因になっているケースもすくなくありません。

この場合は、ストレス対策よりも腸のねじれそのものへの対応が求められます。混合型の場合、それがストレス由来のもの身体的なものかを判別することが重要になります。

できることなら、自己判断を避けて、専門の医療機関で診断を仰いで、治療に取り組むことをお勧めします。