自立支援医療制度はどんなメリットがあるのか


平成18年4月1日から「自立支援医療(精神通院医療)制度」がスタートし、精神疾患に対する医療費が軽減されることになりました。今回はこの制度の内容とメリットについてまとめてみました。

目次

精神疾患の医療費が軽減される

自立支援医療制度は通院による精神医療を続ける必要がある方の通院医療費の自己負担を軽減するための公費負担医療制度です。

統合失調症やうつ病などの精神疾患は治療が長期にわたり、通院による治療を受けていると医療費の負担が重くなってきます。そこでこの医療費負担を支援するために設けられたのが自立支援医療制度です。制度の対象となるのは、入院しないで行われている通院治療です。

医療費が1割負担になる

公的医療保険による医療費負担の割合は、一般的な人で3割負担、未就学児や70代前半で2割負担、75歳以上の高齢者は1割負担です。自立支援医療が適用されると、年齢を問わず1割負担になります

自立支援医療制度の対象となる精神疾患の患者さんは、3割負担の現役世代が多く含まれていますから、負担額が3分の1になって制度の恩恵を受ける人は極めて多くなります。

安くなるものには薬なども含まれる

自立支援医療制度の対象となる医療は、精神疾患・精神障害や精神障害のために生じた病態に対して、病院又は診療所に入院しないで行われる医療です。具体的には、外来に受診、外来での投薬、精神科デイケア、訪問看護等がこれに該当します。薬局に支払う薬代も含まれます。

なお、精神疾患のために生じた病態というのは、躁状態、抑うつ状態、幻覚妄想、情動障害、行動障害、残遺状態等によって生じた病態を指します。

自己負担の上限月額がある

どのくらい軽減されるか具体的に見てみましょう。例えば、統合失調症の人が精神科デイケアに通う場合、1日当たりの医療費はおよそ7000円程度です。

一般の方であれば公的医療保険で3割負担ですから、実際に支払う医療費は2100円になりますが、自立支援医療を利用すると、自己負担はその1割の700円に減額されます。

さらに、この1割の負担が過大なものとならないよう、1ヶ月当たりの負担には世帯の所得に応じて上限額が設けられています(表参照)。「一定の所得以上」であっても、「重度かつ継続」治療が必要な患者さんなら、月額の医療費は2万円以内に収まります。

なお、表中「重度かつ継続」に該当するのは、統合失調症、躁うつ病・うつ病、てんかん、認知症等の脳機能障害、薬物関連障害の患者さん、または精神医療に一定以上の経験を有する医師が判断した患者さんです。

■所得による上限額

所得区分所得の条件負担上限月額
生活保護生活保護世帯又は支援給付世帯0円
低所得1区市町村民税非課税世帯で本人収入80万円以下の方(公的年金収入等含む)2,500円
低所得2区市町村民税非課税世帯で本人収入80万円超える方(公的年金収入等含む)5,000円
中間所得層1高額治療継続者(重度かつ継続)に該当する方で区市町村民税(所得割)額が合計3万3千円未満の世帯5,000円
中間所得層2高額治療継続者(重度かつ継続)に該当する方で区市町村民税(所得割)額が合計3万3千円から23万5千円未満の世帯10,000円
一定所得以上高額治療継続者または「重度かつ継続」に該当する方で区市町村民税(所得割)額が合計23万5千円以上の世帯20,000円

自立支援医療の対象となる疾患は?

自立支援の対象となる疾患は、てんかんを含むすべての精神疾患です。

すべての精神疾患が対象

何らかの精神疾患により、通院による治療を続ける必要がある以下のような疾患が対象となります。

・統合失調症
・うつ病、躁うつ病などの気分障害
・不安障害
・薬物などの精神作用物質による急性中毒又はその依存症
・知的障害 ・強迫性人格障害など「精神病質」
・てんかん

入院医療は対象にならない

精神疾患においては、症状が極めて強く、自傷、他傷の恐れがあるような事態が発生し、入院をせざるを得なくケースが少なくありません。しかし、入院医療の費用は自立支援医療の対象にはなりません。

入院ではなく、通院医療の対象となるか否かは、症例ごとに医学的見地から行われます。また慢性の感染症、新生物、アレルギー、筋骨格系の疾患については、精神障害に起因するものとは考え難いとされていますから、自立支援医療の対象外となります。

普通の医療保険が適用される治療のみ対象

精神疾患では、カウンセリングによる治療も実施されますが、その中には公的医療保険の適用外の治療もあります。精神病院や心療内科などのクリニック以外の施設で行われる適用外のカウンセリングは、自立支援医療は適用されません。

あくまで、医療保険が適用される精神疾患が対象です。

自立支援医療を受けるためには

自立支援医療の対象となる人の多くは、すでに病院に入院した経験のあるかたや外来の患者さんたちです。まず、医療機関で自立支援の制度について問い合わせてください。

市区町村の窓口で申請する

自立支援医療を申請するのは、市区町村の窓口です。担当する課は、障害福祉課や保健福祉課になります。

申請するのは本人ですが、18歳未満の場合は、保護者が申請します。申請が認められると「受給者証(自立支援医療受給者証)」が交付されます。

受給者証の有効期間は1年です。申請する際に必要な書類は以下のようなものです。

●自立支援医療支給認定申請書(医療機関で用意されている場合もあります)
●医師の診断書(通院している精神科の病院や診療所で記入してもらい ます)
●住民税の課税証明書もしくは住民税の非課税証明書など世帯の所得の状況等が確認でき
●生活保護世帯の場合は生活保護受給証明書。
●健康保険書

なお、自治体によって必要書類が異なることがありますから、事前に市町村の担当課や精神保健福祉センターにお問い合わせた上で用意してください。

病院と薬局を一つに指定する必要がある

自立支援医療が適用されるのは、各都道府県または指定都市が指定した「指定自立支援医療機関」(病院・診療所・薬局・訪問看護ステーション)に限られています。

つまり、病院と薬局を一つ決めて申請することになります。精神科の医療機関等の多くは指定機関となっています。

なお、複数の病院に通院したいという場合は、負担額の軽減が限られたものになります。

安心して治療に取り組むために

精神疾患においては不安が大敵ですが、その不安の元の一つでもある金銭面での不安を少しでも減らすことは治療の助けにもなります。特に低所得の世帯にとって、自立支援医療は実に頼りに支援です。

さらに、自治体によっては、所得区分の「低所得1」、「低所得2」の政体に対する負担額の助成をおこなっているところもあります。詳しくは区市町村窓口にお問い合わせください。