PTSD(心的外傷後ストレス障害)その症状、治療方法は?


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PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、命の危機に陥った経験や、ショッキングな出来事に遭遇することによって 心的外傷=トラウマ が発生してしまった人におこる疾患です。過ぎた過去のことであるはずのつらい記憶が原因となって現在の自分が苦しみ続けることになります。また、心が強ければ発症を防げるわけではなく、トラウマになるような経験をした人ならば、だれでもPTSDを発症する可能性があります。

PTSDやトラウマというと災害や戦争などの大きな出来事にばかり関係があることのように思えるかしれませんが、日常の中でふと起こる事故や犯罪被害が原因でPTSDを発症することも多いです。災害の被災者よりも人に相談しづらい一部の犯罪の被害者の方がPTSDになる割合が多いとも言われています。

生涯に一度でも発症する人の割合は1%強であるといわれており、こういった数値の面からみてもPTSDは決して他人事とは限らない疾患であるといえます。

この記事では、PTSDの症状、原因、治療方法についてご紹介します。

目次

PTSDの症状

・つらい記憶、怖い体験をふとした時に思い出す
・常に神経が張り詰め、イライラする
・つらい記憶を呼び起こすきっかけになるものを避けるようになる
・感情、感覚が鈍くなる、マヒする
・不眠、頭痛、食欲不振
・何度も同じ悪夢を見る

などの症状が長い間続きます。つらい経験のあと1か月くらいならこのような症状が表れるのは一般的ですが、数か月たっても症状がなくならかったり、悪化したりする場合は、PTSDの疑いがあります。

また、アルコールや薬物に依存するようになって健康を損ねることもありますし、高い割合でうつ病等の他の精神疾患を併発します。

PTSDは基本的にはつらい経験から数か月以内に発症しますが、発症の原因となるつらい経験をして半年以上たってから発症することがあります。原因となる出来事から長い時間をおいてから発症するケースだと、症状の原因がかつてのつらい記憶であるとわからず、自分ではPTSDではないほかの病気だと思い込んでしまう場合もあります。

PTSDの原因

強い恐怖感を伴う災害や、強い精神的ストレスを感じる虐待、犯罪被害など、さまざまな過去のつらい経験が原因となって発症します。つらい経験をした人すべてがPTSDになるわけではありませんが、発症する可能性は心の強い、弱いは関係なくつらい経験をしたすべての人にあります。また、女性の方が発症しやすいと言われています。

PTSDの原因となるつらい経験は、当事者や被害者が本人であることが多くはありますが、自分が何らかのショッキングな出来事の当事者でなくても、その現場を見ただけで強い衝撃を受ければそれがPTSDのきっかけになることがあります。

また、トラウマを人に相談できずに支援を受けられなかったり、相談してもきちんとした対応を取ってもらえなかったりすると、PTSDが長引くことになるともいわれています。

PTSDの治療方法

精神療法と薬物療法を行うことで症状の緩和とトラウマの克服を目指していきます。症状が強く、通院での治療が困難な場合は入院して治療することになります。

考え方を調整する認知行動療法などが精神療法として行われますが、PTSDに有効なものとして、持続エクスポージャー療法と呼ばれる精神療法があります。この療法では、専門の治療者のもと、安全な状況であえてトラウマを思い出し、思い出しても危険や怖いことはないと感じ取って、つらい記憶をコントロールしていきます。

持続エクスポージャー療法は治療として有効ではありますが、治療の一環とはいえ、疾患の原因であるトラウマを思い出しているので、逆効果にならないためにもしっかりとした環境で治療を行う必要があります。

また、PTSDでは不眠やうつ状態などの症状もあらわれますが、その症状が強く、症状自体を抑える必要がある場合は、その症状を弱める抗うつ薬などの薬を用いた薬物療法が行われます。

医療機関の治療として行われるものには以上のものがありますが、数か月で自然とPTSDが治っていくケースも多いです。そのためには、PTSDは決して自分の心が弱いからなったものではないということを理解し、自分を責めないこと、危機から離れ、安心できる環境を作り、しっかりとした睡眠をとるようにすること、トラウマについて人に相談することが重要になります。

複雑性PTSD

上記のPTSDは基本的に一度、あるいは短期間のつらい出来事が原因で発症していますが、いじめや虐待などの長期的なつらい出来事が原因で発症する複雑性PTSD(C-PTSD)と呼ばれるものもあります。

症状としてはPTSDと同じものもあらわれますが、さらに自己嫌悪や人間不信の傾向が強く、それにともなった症状もあらわれます。また、症状がPTSDより深刻になりやすいです。

つらい出来事が長期間にわたっていた分、心への悪影響もPTSDより強く、治療が難しく、時間がかかるため、治療者も複雑性PTSDの治療法をしっかりと理解している人である必要があります。


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