子供が吃音症(どもり)かもしれない、対処法は?


赤ちゃんも2歳半を過ぎると、カタコトの2語文をしゃべるようになります。言葉のよちよち歩きがはじまるわけです。ところが、言葉が立ち上がったものの立ち止まったまま佇んだり、よろけたりするとお母さんは、「ウチの子は、どもり(吃音症)ではないか」と心配になります。子どもをもったお母さんたちが抱える最初の心配ごとかもしれません。

目次

吃音症とは

発達性吃音症

吃音症は大きく2種類に分類されます。

一つは、「発達性吃音」です。2歳から5歳の幼児期に2語文以上の複雑な発話を開始する時期に発症しますが、7、8割は自然と治ります。一つは、「獲得性吃音」です。これは10代後半に発症するもので、神経学的疾患や脳損傷などにより発症します。

今回のテーマは、発達性吃音です。

吃音症か発達の遅れか

吃音症かどうかを見分ける診断の基準としては、以下のような3点で、1つ以上の兆候が見られたら、吃音症の可能性があります。

•音のくりかえし⇒「わ、わ、わ、っわたし」(連発)
•引き伸ばし⇒「わーーたし」(伸発)
•言葉を出せずに間があいてしまう⇒「・・・・わたし」(難発、ブロック)

連発というのは、同じ単語や音を繰り返して発音してしまうタイプです。伸発は、最初の一音が伸びてしまう状態です。難発は,言葉そのものを発するときに詰まってしまうタイプです。

このほかに、話していると言葉の語尾をよく伸ばしたり、難発をかくすために伸発の吃音になったり、「えー、あー」といった音を文章の間に挿入してしまう特徴があります。

悪影響、二次障害もある

幼児期の吃音の7、8割は自然になおりますが、残りの2、3割は症状が固定化し、さらに症状が進むと、話そうとしても最初の言葉が出なくなるようになります。

そうなると、話すことを嫌がり、話すことに恐怖感すら抱くようになります。その結果、より言葉が出にくくなります。また、小学生になっても治らない場合、その子はからかわれ、いじめの対象になる可能性があり、深く傷つくことになります。

そうして、言葉を円滑に話せないことに起因するうつ病、対人恐怖症、社会恐怖症、引きこもりなどの二次障害がでることもあります。

原因は特定されていない

発達性吃音の原因はよくわかっていませんが、体質的な要因や発達的な要因、周囲の人との関係や生活上の出来事といった環境的な要因が絡み合って発症するのではと考えられています。

発達的要因というのは、身体、認知、言語、情緒が爆発的に発達する時期における何らかの影響をさしています。環境的要因と言うのは、主としてストレスです。

最近の研究では、吃音のある人が話しているときの脳の活動領域と吃音のない人の脳の活動領域が異なることがわかっています。基本的に右利きの約98%は脳の左側に発話に関する領域があるといわれています。つまり吃音でない人は、発話中、脳の左側の言語領域が動きますが、吃音症の人の脳を調べると発話中に右側の領域に大きな活動がみられています。

興味深いことに、吃音症の人で訓練を受けた後、再度調べてみると、吃音症の人も脳の活動領域が左側に変化しているというのです。ただし、この事実に基づいた治療の医学的手法は、まだ開発されていないようです。

子供の吃音症

大人になってからの吃音とは異なる

10代後半に発症する獲得性吃音は、神経学的疾患や脳損傷などにより発症する「獲得性神経原性吃音」と心的なストレスや外傷体験に続いて生じる「獲得性心因性吃音」があります。

獲得性吃音の原因は、治るか治らないかは別にして、原因はわかっているのです。ところが、子どもの吃音、つまり発達性吃音は、先に述べたように原因がよくわかっていません。7、8割が自然と治るとしても、自然に治らない吃音の子どもが2、3割いるということですから、楽観は禁物です。

教育の結果かはわからない

ある日から、子どもが突然どもるようになると、お母さんの中には、自分のしつけや教育が間違ったのではないかと自責の念にかられる人もいます。また、周りの人や離れて住んでいるおじいちゃん、おばあちゃんたちから、「虐待しているのではないか」という疑いの眼差しをうけることもあります。

しかし、研究が進むにつれて、どうやら吃音は生まれつきのものであり、親の育て方によって生じるものではないということがわかってきています。現在では、双子研究や脳の画像診断などで、吃音は脳の機能や構造に関する問題だと考えられています。

子供の吃音症の対処法

発達性吃音症の多くは、自然と治っていきます。ですから、一過性の吃音に慌てて、信頼性の薄い民間療法のような吃音の治療法や自分独自の方法で無理に矯正をしようとするのは考え物です。

耳鼻咽喉科や精神科、その他専門の機関にかかる

吃音症の治療の窓口は、一般的には、病院の耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、心療内科、精神内科、場合によっては口腔外科の受診窓口となります。耳鼻咽喉科はその名のとおり、喉、つまり発生の問題も取り扱う科で、言語聴覚士という言葉の訓練などに特化した専門の人もいるところがあります。

精神科は、主に大人の吃音、獲得性吃音が対象ですが、言語聴覚士がいる病院なら治療の窓口になるでしょう。このほか、小学校や中学校には、子どものさまざまな障害や困難に合わせた支援を行う通級指導教室や特別支援学級が設置されています。「ことばの教室」は、言葉に障害のある子ども向けに設置されたもので、吃音を対象にした教室もあります。

言語の専門家は言語聴覚士

言語聴覚士はSTとも呼ばれ、言語、聴覚、食べ物の飲み込みなどに関する訓練、リハビリをする専門家で、吃音に関しても取り扱うことがあります。そのため、言語聴覚士がいるかいないかを吃音に関して相談する目安の一つとしてもいいでしょう。

ちなみに、各都道府県の言語聴覚士会ホームページがあります。ここから、言語聴覚士がいる施設を調べたり、住んでいる地域の保健センターに紹介してもらったりして、治療先を選ぶのも一つの方法です。

きちんとした専門家に相談

日本では、吃音症はまだ医学はもとより言語聴覚士にも守備範囲ではないという傾向があります。また、病院によっては常勤の言語聴覚士がいない場合などあります。

信頼できる医療関係者が周りにいれば相談し、いなければネットなどで事前にチェックすることが重要です。

吃音症の治療は難しい

どの医療機関で治療を受けるかというのは結構難しい問題です。また、吃音の治療に関しては、様々な治療法があって、これが定番というのがなく、治療が後追い気味のところがあります。信頼できる医療機関探しからスタートしなければならないところに吃音症の治療のもう一つの難しさがあります。