ストレスからくる症状ってどんなものがある?関連する病気とは?


厚生労働省の調査によると、「仕事や職業生活でストレスを感じている人」の割合は60.9%です。働く人の6割がストレスを感じながら仕事をしているわけです。

ストレスが様々な現代病の元凶であること考えると、これはゆゆしき数値です。

目次

ストレスの悪影響は幅広く、相互に影響しあう

ストレスとは?

ストレスはよく風船にたとえられます。風船を指で押さえると風船の表面が歪みますが、この指で押さえる力をストレッサーといい、ストレッサーによって歪みが生じた状態をストレス反応といいます。

もともとは物理学の用語ですが、医学や心理学の領域では、心や体にかかる外部からの刺激をストレッサーといい、ストレッサーに適応しようとして心や体に生じたさまざまな反応をストレス反応と言います。

ですから、厳密に言えば、「ストレッサーを受ける」と言うべきですが、ここでは、一般に広く使われているストレスで統一します。

ストレスの種類

ストレスは、大きく3つに分類することができます。

1.厚さや寒さ、騒音や混雑などによる「物理的ストレス」
2.公害物質や薬物、一酸化炭素などによる「化学的ストレス」
3.人間関係や仕事の上でのトラブルや家庭の問題などによる「心理・社会的ストレス」

ストレスと一般的に言われているものは3つめの心理・社会的ストレスです。

精神面、行動面、身体面に様々な症状があらわれる

ストレスは様々な病気を誘発します。身体的な症状はもちろん、精神症状もあらわれてきます。

また、ストレスによって非行や犯罪に走るというケースも見られます。ストレスは、体と心をむしばむ不吉なプレッシャーです。

ストレスによる悪循環

ストレスによって不眠症になることがあります。すると、そのことによるストレスが高まり、症状が悪化したり、慢性化したりします。慢性化した症状は、今度は関連した別の病気を誘発し、さらにストレスが高まるという悪循環に陥っていきます。

程度の差こそあれ、誰にでも降りかかってくるストレスは、早めに発散しないと、いつの間にか危険な病気になる、というのがストレスの厄介なところです。

精神面、行動面の症状、病気

ストレスを受けると、どんな状態になるかは、多くのみなさんがすでに経験済みのことです。ある人は怒りっぽくなり、ある人はイライラが募り、ある人は何となく不安な気持ちになります。

しかし、みんながみんなストレス症状までに至るわけではありません。それは、適当に発散させる生活の知恵があったり、幸いなことにストレス環境が変わることがあるからです。

とはいえ、すべての人が自力や他力のおかげでストレス発散ができるとは限りません。その結果、ストレスを溜め込んたつなみ状態でストレス反応が改善されないでいると、慢性化して、精神面や行動面でのストレス症状がみられるようになります。

精神面の症状

ストレス反応が慢性化すると、まず活気が低下して、憂うつな気分に支配され、元気がなくなってきます。この状態が解消されずに慢性化すると、自分で自覚してもどうにもならないイライラが募り、不安感を覚えるようになります。

やがて、やる気も失われ、歯磨きや入浴さえ億劫になってきます。こうなると、うつ病になるのは時間の問題です。

行動面の症状

ストレス反応は、行動面にも反映されます。例えば、1日10本吸っていたタバコが20本になり、アルコールの量が増え、ドカ食いするようになります。

また、遅刻や欠勤が増えてきたり、無精ひげや寝癖のついた髪で出勤するようになったら、これは明らかにストレスによる行動面の症状です。ギャンブルにのめりこむようになり、また衝動買いを抑えられなくなったら、かなり症状が進んでいると自覚すべきでしょう。

精神面の症状としてのうつ病

ストレスによって誘発される精神疾患といえば、まずうつ病があげられます。常に憂うつな気分に支配され、食欲、睡眠、性欲などの意力が低下した状態を抑うつ状態といいます。これが、常態化して身体的な自覚症状を伴うようになると、うつ病と診断されます。

ちなみに、一般的なうつ病の診断基準となる主な症状を列記すると以下のようになります。

・気分の落ち込み(抑うつ気分)
・何も楽しめない、興味を持てない
・食欲増加もしくは低下/不眠あるいは過眠
・疲れやすい
・身体活動と思考能力の低下
・自分に価値がないと考える
・死についての思考

精神面の症状としての自律神経失調症

自律神経失調症(心身症)の症状は、さきにあげたうつ病の症状とよく似ています。憂うつで、気分が落ち込み、意力が減退し、思考能力が低下します。

しかし、うつ病と自律神経失調症は、全く異なる病気です。自律神経失調症は、ストレスなどが原因で、自律神経のバランスが崩れたことによってあらわれる症状です。

うつ病はストレスが原因で、脳内の神経伝達物質の分泌異常によってあらわれる脳の病気です。自律神経の異常と脳の異常。症状は似ていても全く異なる病気/症状です。

精神面の症状としての適応障害

適応障害も、ストレスが引き金になって起きる精神疾患の一つです。あらわれる症状もうつ病や自律神経失調症とよく似ています。では、どこが違うのか。

実は、適応障害というのは、他の精神疾患には当てはまりきれない症状の時につけられる病名という側面があります。いってみれば、暫定的な精神疾患です。

つまり、何らかの症状が出ているものの、その他の疾患と診断できるほどではない時に適応障害と診断されます。なお、早稲田大学人間科学部の野村忍教授は、適応障害の診断基準として、以下のようなポイントを挙げられています。

●はっきりとした心理社会的ストレスに対する反応で3ヶ月以内に発症する。
●ストレスに対する正常で予測されるものよりも過剰な症状。
●社会的または職業(学業)上の機能の障害。
●不適応反応はストレスが解消されれば6ヶ月以上は持続しない。
●他の原因となる精神障害がないことが前提条件。

身体面の症状、病気

「病は気から」ということわざがあります。心配事や不愉快なことがあると、病気になりやすかったり、病が重くなったりするという意味です。このことわざそのままの病気が、ストレスによる様々な身体の病気です。

身体面の症状

身体検査をしても何の異常もみられないのに、頭痛がしたり、胃がキリキリと痛むといった心身症の症状があらわれます。ちなみに、心身症とは、心が大きく関与する病気のグループにつけられた名前です。自律神経失調症との区別が難しいところですが、ここでは、心理的・社会的因子が大きく関与した「身体の病気」と定義しておきます。

心身症としての身体の病気

心身症として現れてくる代表的な身体の病気は、以下にあげるように、実に多種多様です。ストレスは万病の元といっても過言ではありません。

ただし、これらの疾患の原因がすべてストレスによるわけではありません。高血圧を例にとれば、ストレスによる場合とそうでない場合とがあります。

ストレスを起因とする心身症としての高血圧であれば、体の治療とともにストレス状態の改善についても考慮しなければなりません。

●器官支喘息、過喚起症候群
●狭心症、心筋梗塞
●胃潰瘍、十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、心因性嘔吐
●単純性肥満症,糖尿病
●筋収縮性頭痛,痙性斜頚,書痙
●慢性蕁麻疹(じんましん)、アトピー性皮膚炎,円形脱毛症
●慢性関節リウマチ,腰痛症
●夜尿症,心因性インポテンス
●眼精疲労,本態性眼瞼痙攣
●メニエール病

ストレスによる悪影響を抑えるには

まずストレスを自覚する

頭痛がしたり、下痢をしたり、蕁麻疹がでてきたりすると、普通、体のどこかが悪いのだろうと思います。しかし、すでに見てきた通り、ストレスが病気の元であることが少なくありません。

ですから、身体的な症状がでてきたら、「ひょっとしたらストレスなのか?」と疑ってみることが重要です。胸に手を当てて冷静に振り返ってみると、どこかで心当たりするものがあるかもしれません。ストレスを自覚できれば、今あらわれている症状への対処の仕方が、おのずから明らかになってきます。

ストレス発散の方法を確保する

ストレスが原因であることが自覚できたら、次にストレス発散の手法を身に付けることです。その手法は、人それぞれでしょう。

旅に出て気分をリフレッシュするのもいいし、カラオケでシャウトして鬱憤を発散するのもいいし、一人でゆったりと音楽を聞いて疲れを癒すのもいいです。軽い運動で汗を流すのもお勧めです。運動をすると、ネガティブな気分が発散されます。大切なことは、自分にあった発散の方法を持つことです。

物事の考え方を変える

精神科の治療の柱の一つに認知行動療法というのがあります。これは簡単に言えば、ネガティブになりがちなものの見方や考え方を修正し、心に元気を復活させる療法です。

ネガティブな考えだと、ストレスが新たなストレスを誘発し、段々と沈み込んで行きます。認知行動療法の原則を日常生活にも応用し、物事をポジティブに捉えるように心がけると、ストレスも衰えて行くはずです。

もやもやした気分でいるとき、もやもやの状態を紙に書いてみることを勧める専門家もいます。きちんとした文章を書こうとするのが面倒だというのであれば、「イライラ、不安、なぜ?」といったメモでもいいし、日付や場所でも構いません。試してみてください。

大きく環境を変えることも選択肢のひとつ

自分の工夫でストレスを減らすことができますが、職場における人間関係がストレスの元になっているような場合などでは、限界があります。にもかかわらず、自分の工夫(努力)に固執すると、ストレスがこじれてくる可能性があります。

そのような場合、思い切って環境そのものを変える、つまり転職も視野に入れて決断すべきでしょう。

明らかに不調ならば医療機関にかかることも考える

強いストレスを感じながら生活していると、精神面、身体面に様々な不調があらわれてきます。その症状が自力改善では手に余るということになったら、医療機関にかかって治療に取り組むことです。

できることなら、「これはストレスが原因かな」と自覚した時期に、専門の医療機関で受診されることです。ストレスによる病は、早い者勝ち、ですから。なお、ストレスに伴う様々な症状を治療する医療機関としては、精神科、心療内科、メンタルクリニックなどになります。

近年、メンタルヘルスの重要性が高まっている

ストレスに起因する様々な症状は、現代社会に潜む宿病のようなものです。現代では、誰でもこの宿病にとりつかれるリスクを背負っています。

こうした事情を背景に、国でもストレスチェックを義務化して、予防に努めています。働き方改革もこうした流れを意識した政策だということができます。

メンタルヘルスを維持するということは、厳しい現代社会を生き抜くための最優先事項といっても過言ではありません。


診療のご案内

当サイトは、精神疾患や発達障害の悩みや疑問を解決することを目的に運営を行っております。

診療をご希望の場合は下記詳細ページをご覧ください。

詳細を見る