仕事が辛い、会社に行きたくない、これってうつ病の兆候?


会社に行きたくないと思ったことがありますか。仕事が辛い、辞めたいと思ったことがありますか。こんな質問をすると、100人中、80人以上の人が「YES」と答えるのではないでしょうか。

では、そんな自分を「うつ病かも・・・」と疑ったことがありますか、と聞けば80%の人が「NO」と答えるような気がします。会社に行きたくないという気持ちとうつ病はどんな関係になっているのでしょうか。辛い気持ちはうつ病の兆候でしょうか。

仕事にいきたくなくなる4つの原因

まず、会社に行きたくないという気持ちの原因を整理してみます。主に4つの原因(悩み)が考えられます。

職場の人間関係がうまくいっていない

職場の人間関係には、上司対部下というタテの関係と同僚というヨコの関係があります。上司が自分を無視する、辛く当たるというのはタテの関係の悩みです。上司との関係はうまくいっているのに、そのことで同僚から妬まれる、よそよそしく当たられるというのはヨコの関係の悩みです。

実際は、この二つの関係が複雑に絡まっていて、いつの間にか会社の中で自分が浮いているように自覚されると、悩みはかなり深刻になり、会社へ出勤するのが嫌になってきます。

納期のプレッシャーで押しつぶされそう

仕事には、難易度があり、納期があります。仕事のプレッシャーで一番こたえるのは、納期のプレッシャーでしょう。いつも納期に追われ、残業が続いたりすると、仕事から逃げ出したいという気持ちになってきます。

また、明日の仕事の段取りを考えると、夜もろくろく眠れなくなり、身体的に参ってきます。こうなると、いっそ、転職しようか、という気持ちになってきます。

今の仕事への嫌気がさしてくる

人間関係の悩みや納期のプレッシャーが鬱積されてくると、自分に与えられた仕事そのものへの嫌気が芽生えます。自分は何でこんなつまらない仕事であくせくしているのだろうか。

こんなことで人生が浪費されるのは、耐えられないという気持ちになってきます。会社や仕事に対する愛着が消え、将来に対する不安も芽生えます。本気になって転職を考えるようになるのもこの頃からです。

完璧主義から生まれる悩み

以上は、職場という環境の中から発生する悩みごとですが、このほかに個人の性格に起因する悩みがあります。それを、ここでは「完璧主義者の悩み」と命名しておきましょう。

一口に仕事といっても、その処理の仕方は一律ではありません。じっくりと時間をかけて仕上げなければならない仕事もあれば、スピード最優先で仕上げなければならない仕事もあります。

言葉は悪いけれど、時には手抜きも必要です。ところが、中には生真面目にどんな仕事も手抜きすることなく完璧に仕上げなければ納得できないという人もいます。納期のプレシャーが一番きついのが完璧主義者です。それだけに、ストレスも強く、悩みも深刻です。

仕事の悩みとうつ病の関係

うつ病は、その原因を基準として、心因性うつ病、内因性うつ病、身体因性うつ病に分類することができます。今回のテーマに関連するのは、心因性のうつ病です。

ストレスを起因とする心因性うつ病

心因性うつ病は、自分の許容範囲を超えたストレスが長く続くことによって発症します。上記の4つの悩みは、心因性うつ病のリスクを含んだストレスといってもいいでしょう。

これに対して、内因性うつ病というのは、外的な原因が見当たらず身体の内側に原因があると推定されるうつ病です。たとえば、遺伝や性格といったものが、これに該当します。

典型的なうつ病とされているのは、内因性うつ病です。内因性の場合、さまざまな原因が特定しにくいところから、治療も難しいとされています。身体因性うつ病とは、アルツハイマー型認知症などのように脳の障害といった身体の病気を起因として発症したうつ病です。

全ての人がうつ病になるわけではない

冒頭に述べたように多くの人が、会社に行きたくない、仕事が辛いと感じる体験をしています。だからといって、すべての人がうつ病になるわけでもありません。どうしてでしょうか。

ストレス・脆弱性モデルという考え方があります。脆弱性というのは、遺伝、脳のトラブル、気質・性格などを含んだ要因です。つまり、うつ病になりやすい「もろさ」を構成する要素です。

こうした脆弱性を持つ人にストレスが重なると発症するという考えです。

ストレスによってあらわれるさまざまな症状

ストレスが長く続くと、うつ病につながりかねないさまざまな精神的、身体的症状があらわれてきます(下記の表参照)。

ただし、表の中の一つの症状に心あたりがあるからといって、うつ病と決めつけるのは早とちりというものです。

表を示した真意は、こういう症状に心当たりがあったら、そのことを自覚し、自分の今を考えなおすきっかけにしてほしいということです。

■ストレスによってあらわれる精神的・身体的症状

精神的症状身体的症状
・気分が落ち込んでいる
・日々の生活が楽しめない
・食欲がない
・何かとやる気が出ない
・好きなことですら、やる意欲が湧かない
・何かと理由をつけて自分を責めてしまう
・イライラして落ちつかない
・慢性的な睡眠不足
・動悸が激しくなることがある
・頭痛、めまい
・身体がだるい
・胃の中が落ち着かない(吐き気)
・首、肩こり
・呼吸がうまくできなくなることがある
・体重の減少

うつ病の診断基準

先に上げた様々な症状は、うつ病の前兆ともいえる黄色信号ですが、この信号が青に変わることなく点滅し続けていると、うつ病の前兆とみなすべきでしょう。

ちなみに、うつ病の診断基準では下記の9項目のうち5つ以上の症状が認められ、2週間以上持続しているとうつ病と診断されます。

①憂うつになり気分で、落ち込む
②何をしても楽しく感じられない(興味、喜びの著しい減退)
③体重や食欲の増加か減退
④不眠または過眠
⑤身体の動きが遅くなり、口数が少なくなる(精神運動焦燥または制止)
⑥疲れやすく気力も減退
⑦生きている張り合いが感じられなくなり、自分はダメだと責めたてる(無価値観、または過剰か不適切な罪責感)
⑧思考力と集中力減退、決断困難
⑨死んだら楽になるかと考えてしまう(死についての反復思考)

会社に行きたくないという気持ちを乗り越えるために

会社に行きたくないという気持ちの元凶はストレスです。このストレスをどう処理するかがポイントです。

ストレスを発散させる

仕事にストレスはつきものです。大切なのは、自分に合ったストレス発散の手法を身に付けるということです。

誰にでもできて、今すぐに始められるストレス発散法の一つが、運動です。休みの日には、散歩の時間をとって、ひと汗かき、気分転換をはかりましょう。定期的な運動の効果は、やってみて実感できるものです。

思い切って会社を休む

うつ病の治療の大きな柱の一つが休養です。会社に行くのが辛い。無理に行こうとすると動悸がしてくるというような状態では、思い切って会社を休む、ことも考えましょう。

なかなか休みをとれるような状態ではない、という事情もわかりますが、ストレスが鬱積し、うつ病を発症したら元も子もありません。

転ばぬ先の杖。今、休むことが自分にとっても会社にとっても最良の選択だと言い聞かせて、休みをとることをお勧めします。

自分を見つめ直す

思い切って会社を休んだ期間に、自分を見つめ直してみましょう。人間関係で大きなストレスがかかっているとしたら、人間関係の相関図を描いてみて、どこに問題点があるのかをチェックしてみる。あるいは、相手の人間の言動を言葉でメモし、自分の反応を言葉でメモしていく。こうした作業をする中で、自分が観落としている問題点も明らかになってきます。

相談する

気心の知れた信頼できる人に相談してみるということ大切です。彼/彼女は、自分が気づかなかった問題点を指摘してくれるでしょうし、自分の思い込みが自分固有のものではなく、みんなが共有している問題だということが明らかになるかもしれません。

なかでも、人に相談するということは、愚痴も含めて気持ちを吐露することですから、ストレス発散にもつながります。

辛いから辞めたって構わない

仕事が辛い、会社を辞めたい。でも、これって、甘えではないか。こんな自分の呟きがブレーキとなって、決断を先送りしている人は少なくありません。

仕事が辛いからやめる、転職することのどこがまずいのでしょうか。もし、まずい点があるとすれば、転職の損得計算を冷静にすることなく感情的判断で辞める決断をすることです。

少なくとも10年のスパンをとって、今の会社にいることのメリットとデメリット、転職する場合のメリットとデメリットをチェックしてみましょう。

冷静に損得計算をしたうえで、転職する方がプラスになると判断したら、それは正当な選択肢だといえるでしょう。

うつ病は心の風邪

会社に行きたくないと思うようになると、毎日の生活がとても不安定になります。そんな思いを抱いて会社に行くことで、ストレスは溜まる一方です。ストレスを抱え込んだままにしておくと、気分は落ち込み、楽しくない、やる気が出ないなどの精神的症状が現れ、慢性的な睡眠不足、動悸、頭痛、めまいなどといった身体的な症状が現れます。

心因性のうつ病は「心の風邪」だと言われます。どんな健康な人でも、風邪を引くことがあるという意味で使われています。さまざまな症状が出てきた状態は、風にかかりかけの段階だといえるでしょう。かかりそうだなという不吉な予感に襲われたら、早めに専門の医療機関で診断をうけることをお勧めします。心の風邪はこじらせない、というのが非常に重要です。


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