非定型(新型)うつ病が甘え、わがままと思われてしまう原因

非定型うつ病は、アメリカの精神医学会が作成するDSM-5に登録されているれっきとした精神疾患です。

ところが、病気というより本人の甘えやわがままだと誤解されがちです。その原因はどこにあるのでしょうか。

非定型うつ病とは

メランコリー型うつ病(以下うつ病)では、うれしいことがあっても気分が改善することはありません。ところが、非定型うつ病の場合、うれしいことがあると気分が改善するといった特徴があります。

そこで、嫌いなことを避けて好きなことばかりする、単なるわがままではないかという誤解が生まれがちです。非定型うつ病が持つ独特の症状の中に誤解の要因が潜んでいるわけです。

非定型うつ病の特徴その1 気分反応性

もう少し詳しく非定型うつ病のいくつかの特徴をみていきましょう。定型のうつ病では、一日中気分が落ち込んでいるというのが一般的です。

ところが、非定型うつ病では、先に述べたように、気分の浮き沈みが激しく、いやなことがあると落ち込んで無気力になる一方、好ましいことやうれしいことがあると、気分が晴れてうきうきし、ときには興奮します。

ちょっとしたことで落ち込むかと思えば、ちょっとしたことで舞上がる(軽躁状態)というように気分の揺れ幅が大きいのが特徴です。

非定型のうつ病は、以前は「神経症性うつ病」と呼ばれてきたタイプのうつ病で、「お天気屋うつ病」とも呼ばれたうつ病です。しかし、軽躁状態は長続きせず、また憂うつな気分に戻っていきます。

非定型うつ病の特徴 その2 拒絶過敏性

拒絶過敏性というのは、何気ない言動を否定的に解釈して過剰に反応することです。常識的にみて相手に悪意はなさそうなのに、「軽べつされた」「恥をかかされた」「バカにされた」などと否定的に解釈して、落ち込んでしまいます。

例えば、上司から、作成した書類の誤字、脱字を指摘されただけで、上司から見捨てられた、侮辱されたと曲解し、大きく落ち込み、早退したり出勤不能になったりします。

非定型うつ病の特徴 その3 すぐにキレる

拒絶過敏性と関連していることですが、些細なことで落ち込むと同時に、些細なことでキレてしまい、怒りがエスカレートしていきます。そうして、いったん怒り出すと自分で怒りを止められず、大声で相手を非難し続けたりします。

この怒りの発作も非定型うつ病の大きな特徴です。ふだんは温厚な人なのに、些細なきっかけでキレて、怒りをまき散らすこのアンバランスに周りの人たちは戸惑ってしまいます。

一方、本人も発作が治まったあとには、自己嫌悪に陥リ、うつ状態に落ち込み、徐々にうつ状態が悪化していきます。

非定型うつ病の特徴 その4 過眠と過食

定型うつ病の症状の一つに、不眠があります。ところが、非定型うつ病では、これと真逆の過眠状態になります。

いくら寝ても寝足りないという状態になります。寝すぎると脳の働きが鈍り、気分が憂うつになるため、ますます起きられないという、悪循環に陥ります。

また、異常に食欲が高まり、過食になりがちです。ただし、過眠・過食はすべての非定型うつ病に見られるわけではなく、欲求が軽い人もいます。

非定型うつ病の特徴 その5 鉛様麻痺

うつ病では、けだるい、疲労が抜けないといった身体症状が見られますが、非定型うつ病の場合の身体症状は、手足に鉛がつまったような重疲労感に襲われます。

これを鉛様麻痺といいますが、嫌なことに直面したり、不安を感じるときに起ってきます。検診をうけても異常がないため、「都合が悪くなるといつもこうなんだから」と非難される原因にもなります。

非定型うつ病の診断基準

ざっと、非定型うつ病の特徴的な症状をみてきましたが、DSM-5の診断基準を紹介しておきましょう。

チェックポイントは、以下のようなものです。

1)抑うつ気分(気分の落ち込み)。
2)興味または喜びの著しい低下。
3)食欲の増加または減少、体重の増加または減少(1か月で体重の5%以上の変化)。
4)不眠または過眠。
5)強い焦燥感または運動の静止。
6)疲労感または気力が低下する。
7)無価値感、または過剰・不適切な罪責感。
8)思考力や集中力が低下する。
9)死について繰り返し考える、自殺を計画するなど。

以上の項目の中で5つ以上が2週間のあいだほとんど毎日存在し、またそれによって社会的・職業的に障害を引き起こしている場合、うつ病と診断されます。本人も発作が治まったあと自己嫌悪に陥リ、さらにうつ状態を悪化させます。

非定型うつ病になりやすいタイプ

ストレスは万病の元。特に精神疾患では見逃せないリスクファクターです。非定型うつ病も例外ではありません。

ただ、同じストレスを受けても、ストレス耐性の強い人と弱い人がいるのも事実です。そこで、ストレスに弱い人、そして非定型うつ病になりやすいタイプについてまとめてみました。

褒められて大人になった人

非定型うつ病の場合、病前性格が一般のうつ病と大きく異なるという指摘があります。つまり、養育歴の影響が大きいということです。

では、どんな養育歴が非定型うつ病になりやすいかというと、褒められて大人になった人、ということができそうです。

具体的にいえば、小さいころから褒められることが多く、手のかからないおとなしい子供で、勉強も良く出来るというタイプの人です。こんな人は、社会に出ても、職場の評価も高くなります。ところが、上司から叱責を受けたり、仕事に失敗したりすると、精神的に大きなダメージを受けえ、落ち込んで行きます。

対人緊張

褒められることにはなれていても、怒られることになれていないという順風満帆の履歴の人のすべてが非定型うつ病になるというわけではありません。

そこには、ある性格的なポイントが絡まって、非定型うつ病になりやすいタイプになるのです。その性格的ポイントの一つが、人前で過度に緊張する「対人緊張」です。

対人緊張型の人は、他人にどう思われているかということに敏感です。人から嫌われることを極度に恐れます。

そこで、他人に気に入られようと、自分を殺して接しますが、この行動パターンに耐えられなくなった時、発病することになります。

不安気質

人間の性格を粘着気質、執着気質などで分類すると、非定型うつ病の根底には、「不安気質」があると言われています。

不安気質というのは、ものごとを悲観的にみて、人生に起こり得るリスクに過敏な性向を差します。リスクを回避したがる欲求が強いために、「損害回避のDNA」とも言われる気質です。

非定型うつ病の人の中にパニック発作を経験している人がいます。パニック発作と言うのは、満員電車の中やエレベーターやトンネル内などの閉鎖空間にいる時に起りやすいのですが、一度発作を起こすと、「また発作が起こったらどうしよう」という強い不安から、外出や仕事ができなくなって、日常生活に支障をきたすようになります。これがパニック障害という病態です。

非定型うつ病の人の中にパニック発作の経験をしている人が少なからずいるということは、不安気質は、非定型うつ病とパニック障害に陥るリスクを抱えているということを物語るものです。

非定型うつ病の治療

非定型うつ病の多くは軽症で、外来通院での治療が可能です。しかし、診断が難しいため、治療がうまくいかず、慢性化しやすいことが指摘されています。

会社の中で「変わり者」扱い

非定型うつ病は、軽症であるものの他罰的傾向が強い。つまり、仕事の上での 失敗を自分ではなく、他人やまわりの環境などのせいにしがちです。

上司からみれば、手こずらされる「困った人」でもあり、密かに「変わり者」というレッテルを貼られて敬遠されがちです。

こうしたコミュニケーションの不具合を解決するために、企業の中には、リワークプログラムに心理療法などを取り入れて対応しているところがあります。

リワークプログラムとは、うつ病やストレス関連疾患などで休職中の社員対象にした職場復帰のためのプログラムです。

認知行動療法

非定型うつ病の治療は、精神療法と薬物療法二本立てで行われますが、精神療法の中心となるのは、認知行動療法です。「認知行動療法」というのは、自分の物事に対する認知、行動、感情を見つめ直し、自分の考え方のクセを正しく見つめさせる療法です。

この認知療法は、育った環境によって考え方や感じ方に偏向が生じている非定型うつ病患者には効果が高いとされています。

薬物療法

うつ病の場合、脳内の神経伝達物質の中のセロトニンとノルアドレナリンが深く関与しているということが分かっています。

セロトニンは、不安を抑える効果があり、平常心を保つように働きます。セロトニンが足りないと、不安になり、イライラしやすくなります。また、睡眠障害や衝動的な自傷行為も起こしやすくなります。ノルアドレナリンは神経を興奮させる神経伝達物質であり、やる気、意欲を高めます。別名「怒りのホルモン」といわれており、不安、恐怖、緊張に関係しています。

うつ病の場合、このセロトニンとノルアドレナリンの働きが低下することがわかっています。ところが、非定型うつ病ではセロトニンの低下は見られません。何に異常があるかですが、アセチルコリン受容体が過敏になり、浅い睡眠に関わってきます。また、ドーパミンも関係しているといわれています。

このように神経伝達物質の働きが異なるわけですから、うつ病と非定型うつ病では処方が異なります。とはいえ、処方された薬は指導されたとおりに飲み、自己判断で増減してはいけないという服用のセオリーは同じです。生活のリズムを整える生活面からのアプローチも大切です。

うつ病の場合、何よりも休息が重要ですが、非定型うつ病の場合は、起きたら窓のカーテンを開けて気分を爽快にするとか、目標を設定して掃除や洗濯をするといった積極的な行動が効果的だとされています。このほか、規則正しい生活を心がけることも忘れてはならないことです。

励ますのも効果的

うつ病の場合、「頑張ってね。あなたならできるんだから」といった励ましの言葉は逆効果ですが、非定型うつ病では、日常生活に目標をもたせて励ますことも効果的だといわれています。励ましながら前に進ませてあげないと、依存をしたままになってしまうからです。しかし、どの程度励ましのプレッシャーをかけたらいいのかは、個人差と症状の程度によりますから、きちんと担当の医師に相談、その指示に従って、自律を促すようにしましょう。

初期症状を見逃さない

先にセルフチェックのために、非定型うつ病の診断基準をあげておきました。しかし、非定型うつ病は、専門の医師さえ診断しかねるといわれるほど難しい疾患ですから、一般の人においてはなおさらです。

ある専門医は、セルフチェックをして、ひょっとしたらと思い当たった時、そのことによって、自分が困るほどの状態かどうかが目安だとアドバイスしています。この目安に合致していたら、心療内科か精神科の医師に相談し、早期に本格的な治療に取り組まれることをお勧めします。

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