自分で行う認知行動療法② 行動を変える


前回は、コラム法を利用して、より現実的で楽なものの捉え方をする手法をお伝えしました。

自分で行う認知行動療法 ①思考を変える

しかしあくまで紙の上で見つけ出した答えでありそれが実生活で本当に適応的であると確信するまでには至らないかもしれません。今回は新たな認知が実生活どれだけ適応的であるか検証し、行動することによって新たな認知の正しさの確信を高める手法を紹介します。

目次

新たな認知の定着にはトレーニングが必要

適応的な思考をみつけても、それを現実の生活に応用できなければ意味はありません。実際に現実生活の様々な場面で新たな認知にそった行動をして、その正しいことの確信を積み重ねてゆく必要があります。

行動選択の為のポイントシートを作る

前回、コラム法を使って上司に無能であるとみなされることを不安に感じるわたしが、部下は世話を焼かれるぐらいがちょうどいいという適応的思考を見つけました。では現実で以下のような問題に出会ったとします。

「仕事上、初歩的な部分でわからない箇所があり、仕事をどうすすめるべきか悩んでいる」

それに対し、限りの選択肢を書き出します。一見馬鹿馬鹿しいものでも思いついたら構わず書き出しましょう。問題解決の思わぬヒントに繋がるかもしれません。

選択肢1:ミスをした時、同僚に失敗を押し付ける
選択肢2:自分でこっそり勉強して、仕事をすすめる
選択肢3:知ったかぶりをしてそのまま作業を続ける
選択肢4:素直に上司に聞く

選択肢を書き出したら、どの行動をとるべきか選択します。その1つずつに評価を加えます、評価の基準は「解決度」「感情的好ましさ」「時間と労力」の3つです。下の表を使って-5点を最高点に。+5

点を最高点にして、最も高い点数のものを現実的に望ましい行動とします。

行動の選択肢解決度感情的好ましさ時間・労力総合
ミスをした時、同僚に失敗を押し付ける
0

-550
自分でこっそり勉強して、仕事をすすめる
35-53
知ったかぶりをしてそのまま作業を続ける

01-3-2
素直に上司に聞く5-357

自分でこっそり勉強しつつ仕事をすすめることは、かつての認知に基づくもので心理的抵抗感が無いため「感情的な好ましさ」は5です。しかしそれでは膨大な時間と労力がかかってしまうので「時間・労力」は-5としました。一方で新たな認知に基づいて、「素直に上司に聞く」を選択した時、新しい認知へ挑戦する不安や恐れが生じるので「感情的好ましさ」に-3をつけました。

しかし上司に聞くことよって問題の速やかな解決がきますので「解決度」は5です。加えて時間や労力を使うことはないので「時間・労力」も5点です。よって総合点から判断すると現実的に合理的なものは「素直に上司に聞く」であることがわかります。この表からわかってくることは自分のポリシーや感情面を優先すると現実面で不必要な労力を使うことがあることです。

アクションプランを立てる

行動選択シートを使用して「わからないことは上司に聞く」ことが最も現実的、合理的な選択肢であることがわかりました。この選択はかつての認知では「自分がダメな部下だと思われる」ことを恐れ、回避してきた行動です。「部下は世話が焼かれるぐらいがちょうどいい」という新たな認知に従い実際に行動してみることで実際にどんな結果が生じるのか予測を立て行動してみましょう。行動によってマイナスの結果が生じるかもしれません、マイナスの結果の予測も立て。その際の対処を書いておくと安心でしょう。

アクションプラン

具体的な行動計画
自分で問題を解決するのが困難な為明日の10時に上司のデスクにいって不明点な箇所を口頭で質問する

新たな認知
上司の前で常に優秀な部下である必要がないむしろ部下は世話を焼かれるぐらいがちょうどいい。だから分からないことは素直に聞こう

結果の予測・対処

1. 優しく仕事を教えてもらえる
2. 今は忙しいから、他の時間にしてくれと言われる
対処⇒また午後にお願いできませんでしょうかと聞く
3. そんな簡単なことは自分で考えろと言われる
対処⇒ひるまず、自分の勉強不足を謝り、教えを請う

行動の結果・新たな認知の確信度

そんな簡単なことは自分考えろと言われたが、強くお願いしたら仕事を教えてくれた。

新たな認知の確信度→70%

きつめに怒られはしたが最終的には仕事を教えてもらえた。優秀な部下でないからといってすぐに見捨てられるわけではなかった。ダメな部下でも仕事はさせてもらえる。
→100%に近づくまでアクションを修正する

アクションプランの実行後はその結果を別の欄に書き込みます。望ましい結果が得られればその行動を繰り返し、習慣にしていきましょう。もちろん100%の確信に至らないことや望ましい結果が得られない場合もあります。その場合はプランの修正し別のアクションプランを立てて見ましょう。

その行動は難易度が高すぎではないか、アクションプランが問題となっている認知に直接繋がりはあるか、プランの内容はより具体的かを見直してみましょう。

ポイント
・5W1Hは明確か(いつ、どこで、だれか、なぜ、どうやって)を明確にする。
・ハードルをあげすぎない。
・結果や、予測の対処をなるべく沢山書き出す。マイナスの結果が生じた時の対処も書く。
・起こりうる最悪の事態も記載する。
・行動に移す前にアクション場面のイメージトレーニングを行う。

まとめ

今回は前回のコラム法で見つけ出した、新たな認知が本当に現実的であるか検証し、より確証に近づけるためのトレーニング方法を紹介しました。実際に行動をしてゆく中で新たな自動思考が浮かんできてしまう場合、以前の自動思考と共通のスキーマーがあるかもしれません。次回は自動思考よりより深い部分にある「スキーマー」に焦点をあてます。