うつ病になる原因、なる人とならない人の違いは?


ストレスの多い現代社会において、うつ病にかかってしまう可能性は少なくありません。誰しもがうつ病になる可能性があります。

うつ病になる人、ならない人、それぞれの違い、特徴とは何かご紹介します。

目次

うつ病の原因とは?

うつ病は原因別に分類されている

うつ病は、発病の原因によって下記のように分類されています。まず、それぞれの原因を押さえておきましょう。

●外因性うつ病

頭部への外傷や脳梗塞などを原因とするうつ病です。外因性の場合、発病の端緒となった外傷を治療するとうつ病も好転します。

●内因性うつ病

外的な原因が見当たらず身体の内側に原因があると推定されるうつ病です。たとえば、遺伝や性格といったものが、これに該当します。ただ、内因性の場合、さまざまな原因が特定しにくいところから、治療も難しいとされています。

●心因性うつ病

心因性うつ病は、極度のストレスや心理的なショックによって発症する典型的なうつ病です。

ストレスが大きな要因とされている

典型的なうつ病である心因性のうつ病の引き金になるのは、ストレスです。しかし、ストレスと無関係に発症するケースもあり、また、ストレスを受けた結果、どういうプロセスで倦怠感の伴う落ち込んだ気分に支配されるようになるのか、根本の原因は、十分に解明されていません。

分かっていることは、セロトニンやノルアドレナリンなどの脳内の神経伝達物質の働きが悪くなっているからではないかということです。まだ解明の途中ですが、セロトニンやノルアドレナリンに作用する薬がうつ状態に効くことは、臨床の場で実証されています。

「うつ病になってしまう環境」は人それぞれ

ストレスの多い環境にいると、うつ病になるリスクは高くなります。しかし、ストレス環境にいないとうつ病にならないとは断言できません。

また、同じストレスを受けたとしてもその影響の受け方は人それぞれです。そうすると、ストレスに強いか弱いかということが問題になってきます。さらにストレスの内容ということも考えなければいけません。

ストレス脆弱説モデル

統合失調症やうつ病に関して、ストレス・脆弱説モデルという考え方があります。脆弱性というのは、遺伝、脳のトラブル、気質・性格などを含んだ要因です。つまり、うつ病になりやすい「もろさ」を構成する要素です。

こうした脆弱性を持つ人が、転校、転居、離婚、親との死別、あるいは病気といったことによるストレスが重なったときに、発症するという考えです。

環境の変化と離別が直接の原因になりやすいイベント

一口にストレスといいますが、うつ病の引き金になるストレスは、環境の変化と離別があげられます。環境の変化には、引っ越し、異動、降格、リストラといったもの含まれています。

離別とは、身近な肉親の死などがこれにあたります。注意しなければならないのは、悲しく、辛いできごとだけではなく、昇進や栄転、新築した家への転居といった喜ばしい出来事も大きなストレスになってうつ病を発症するケースもあるということです。

つまり、日常生活の大きな変化に伴うストレスがうつ病の引き金になるわけです。このほか、最近では、人生の伴侶となったペットの死を契機に発症するペットロス症候群が注目されています。これは、うつ病に移行するリスクを抱えた症候です。

うつ病になりやすい要因、性格

執着気質

うつ病になりやすい性格・気質があることは広く知られているところです。これは、ストレス・脆弱性モデルからも頷かれます。

そうした性格の一つに、執着気質があります。具体的には、仕事熱心で、完璧主義、生真面目で、几帳面といった性格です。

融通が利かず、何事にも目いっぱい頑張りますから、適度に休むこともせず、ストレスを溜め込んでしまいます。

メランコリー親和型性格

生真面目さという点で執着性格と同じですが、メランコリー親和型は、これにルールや秩序を重んじる態度が加わった性格です。「今日中に・・・しなければならない」という義務感の強いタイプで、「できたら・・・今日中に」と思い込んで、ついつい無理をします。

是が非でもルールを守ろうとするこのタイプが、ストレスを溜め込みやすいことは、容易に想像できることです。

循環気質

ドイツの精神学者、クレッチマーが提唱した気質です。社交的で、親切で親しみやすく、さらに活動的でユーモアに富み、熱しやすいと言った躁的な性向ともの静かで気弱で、寂しがり屋な抑うつ的性向を併せ持つ気質です。

躁とうつの二つの気質を周期的に揺れ動くというところから「循環」と名づけられたのですが、この気質の人は、他人に同調する傾向が強いため、周りのひとに振り回され、大事な決断のときには板挟みになりがちで、躁鬱病に多いとされる気質です。

幼少期の親子関係に恵まれていない

幼少期に親に褒められる体験のなかった子ども、親のいうことが絶対だった家庭で育った子ども、放任されっぱなしで親子の親密な関係を結べなかった子どもたちには、自己否定の感情が強く残っています。

要するに、自分を価値ある存在として肯定することができないまま育った子どもたちです。自己否定の感情は、うつ病を引き起こす要因になりがちです。

生まれつき、あるいは性格的な繊細さ

HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)という言葉をご存知ですか。音や光や匂などに関して鋭い感受性を持つ一群の人たちを指す言葉です。

HSPの人は、非情に繊細で、他人の感情やその場の雰囲気に敏感に反応してしまうとされています。HSPは人口の5分の1を占めるといわれていますが、このタイプの人はうつ病になりやすいといわれています。ただし、HSPだから病気だと考えるのは間違いです。HSPは、生得的な一つの個性です。

うつ病になりにくい要因、生活習慣

ストレス発散の方法を確保している

うつ病にとって、ストレスは天敵のようなものです。ストレスを溜め込むと、じわじわと心身を蝕み、うつ病をはじめとする様々な心身の病気を誘発します。

ですから、ストレス過多と言われる現代を生き抜くためには、ストレス発散の方法を身に付けるというのが、健康に暮らしていくための必須項目です。自分にマッチしたいくつかのストレス発散法を修得しておきましょう。

運動をする

誰にでもできて、今すぐに始められるストレス発散法の一つが、運動です。運動は、無酸素運動よりも長くゆるめの有酸素運動の方が効果的です。

有酸素運動とは、酸素を多く取り入れ、その取り入れた酸素で体内の脂肪を燃焼させるものための運動をさします。エアロビクス、エアロバイク、ウォーキング、ゆっくりした水泳などは有酸素運動です。

日光を浴びている

うつ病と日光浴は、一見遠回りの予防策に思われますが、実は神経伝達物質セロトニンと関係があるのです。精神の安定につながる神経伝達物質のセロトニンは、脳の覚醒を促し、これと相対する性質のメラトニンは睡眠を促す作用があります。

太陽の光を浴びると、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌がストップして、脳の覚醒を促すセロトニンの分泌が活発化します。実際、日光が出る時間が減る冬場にうつな気分になる人が多いのは、セロトニンの分泌が少なくなるからだと言われています。

睡眠と休養をしっかりとっている

うつ病患者の多くは、不眠症を抱えています。睡眠不足は、うつ病の大きな要因です。

先に上げた運動は、心地よい疲れで睡眠を誘うという効果をもたらしてくれます。リラックスして、ゆっくり休むというのもうつ病予防に効果的です。そのために、音楽、香り、ハーブなどを利用することもお勧めです。ただし、ハーブは薬の飲み合わせで副作用があったりするケースもあります。

このほか、入浴は自律神経を整え、リラックス効果があるばかりではなく、快適な睡眠を促してくれる効果もあります。

規則正しい生活を送っている

昔から、健康の基本は、早寝早起きを心がけることだとされています。早く起きれば、それだけ太陽の光を浴びる時間が長くなり、セロトニンの恩恵をより多く受けることになります。

加えて、早寝早起きをすると、必然的に規則正しい生活が導かれますし、おのずから食生活も安定してきます。

その気になれば誰でもできる身の周りの暮らしを規則正しく整えて行くことが、うつ病に限らずすべての病気の最も効果的な予防策であることを忘れないようにしましょう。

「絶対にうつ病にならない人」はいない

うつ病は「心の風邪」だと言われます。どんな健康な人でも、風邪を引くことがあるという意味で使われています。

しかし、心の風邪は、こじらせると、身体の風邪どころの話ではありません。辛くて、暗くて、死んでしまいたいという自責に苛まれる日々が続きます。

誰でもひく可能性を秘めた心の風邪に、かかったかな、と思ったら、躊躇うことなく専門の医療機関で診断をうけることをお勧めします。心の風邪はこじらせない、というのが非常に重要です。


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