発達障害が天才といわれる理由とは?実際はどうなの?


エジソン、ダーウィン、モーツァルト、ゴッホなどの天才は、実は発達障害だったのではないかと言われています。能力の著しい偏在という発達障害の特色からすると、これはうなずける話です。障害が天才的才能の重要な要因となっているのです。

目次

発達障害とは

発達障害の人は、知的能力には問題がないのに、能力のバランスが崩れているために生きていくために必要なことが欠けているといわれています。しかし、ある特定の能力が突出してすぐれているために、ツボにハマれば天才的能力を開花することになります。

発達障害のタイプ

発達障害には、自閉症スペクトラム(自閉症、アスペルガー症候群を含む)、注意欠如・多動性障害、学習障害など様々なタイプがありますが、生まれつき脳の一部の機能に障害があるという点が共通しています。

先天的な機能障害ですから、ストレスなどを起因とするうつ病などの精神疾患の障害(病気)とは、ちょっとニュアンスが違います。

主なタイプの内容をまとめると、以下のようになります。

●自閉症スペクトラム(ASD)
ASDの中のアスペルガー症候群とは、知的障害を伴わない自閉症のことで、高機能自閉症と呼ばれることもあります。相手の気持ちを考えて察することが難しい発達障害です。

●注意欠如・多動性障害(ADHD)
7歳までにあらわれるもので、発達年齢に見合わない多動・衝動的なふるまい、あるいは不注意などを特徴とする障害です。ADHDは、俗称ジャイアン型(多動-衝動優勢型)とのび太型(不注意優勢型)の二つに分けられます。

前者は、衝動性が強く、あれこれといろんなものに手を出して活動的ですが、あくまで衝動的にやっているので何もやり遂げられないことがしばしばです。後者はうっかりミスが多いタイプです。

●学習障害(LD)
全般的な知的発達には問題がないのに、読む、書く、計算するなど特定の事柄のみが不得手という障害です。たとえば、読み書き等の一部のことが極端に苦手だったり、字がうまく読めなかったりします。

空気が読めない高機能自閉症

発達障害と天才との関連で注目されているのが、知的障害を伴わないアスペルガー症候群(高機能自閉症)です。高機能自閉症の特色は、相手の感情や雰囲気を察することが苦手で、社会的ルールや暗黙の了解を察知できません。その結果、コミュニケーション能力が欠如するということになります。

頭がいいのにその場の空気が読めなくて、とても尊大な態度を取る人がいます。性格的にエラぶる人もいますが、中には高機能自閉症のために、こういう対応しかできない人もいます。

アスペルガーはIQが高い

アスペルガー症候群の人は、IQが高い傾向があります。一般人のIQの正常値は85以上115未満と言われますが、アスペルガー症候群の人々には、115以上のIQを示す人が少なくありません。

アスペルガー症候群は、受動型・孤立型・大仰型などに分類されますが、天才輩出の可能性が高いのは、孤立型だとされています。

高機能自閉症の特徴

高機能自閉症の人たちの特徴として、以下のようなことが指摘されています。天才というのは、このような人たちから生まれるのかもしれない、ということが納得されますね。

・頭が良くて、論理的で合理的にものを言う。
・思ったことをストレートに言ってしまう。
・一人でいる時間を大事にする(高機能自閉症の中の孤立型と呼ばれる人たちの特色)
・こだわりが強く、自分のルールに固執する。
・情緒的に考えることができなく、論理的思考する。
・得意な分野のことになると異常に集中する。

実は発達障害だったとされる天才たち

自閉症スペクトラムの特色は、人とのコミュニケーションが不得手で、興味や関心の幅が著しく限られています。一方で、こだわりが激しく、自分の特異な分野では、寝食を忘れて没頭します。これらの性向は、天才の多くに見られるものです。

高機能自閉症だとされる天才たち

自閉症の研究で有名なマイケル・フィッツジラルド博士は、『天才の秘密 アスペルガー症候群と芸術的毒性』という本の中で、アスペルガー症候群だと思われる歴史上の天才芸術家をあげています。

もちろん、当時はアスペルガー症候群という言葉はありませんが、記録に残された言行からみて、アスペルガー症候群ではなかったかと推測されているわけです。

●アスペルガー症候群と思われる天才芸術家と哲学者

エジソンはADHD(注意欠如・多動性障害)?

以上、高機能自閉症の天才たちをみてきましたが、ADHDの中からも天才があらわれています。有名なのは、発明王・エジソンです。

子どもの頃のエジソンは、注意力散漫で空想にふけることが多く、いつも上の空で授業を受けていたといいます。授業中に居眠りすることも多く、決して勉強好きの頭の利発な子どもではありませんでした。ADHDの傾向が強かったわけです。

ただし、好奇心が強く、徹底的に何かを究明しようとする少年だったといいます。蜂の巣を調べようとして牧草地に入り雄羊に追いかけまわされたり、スケート靴の紐を短くしようとして誤って中指の先端部分を切り落としたり、鳥が空を飛べるのはミミズを食べるからだと思い込みミミズをすりつぶした液体を近所の女の子に飲ませて鞭で叩かれたりといった失敗談が残されています。

ADHDの傾向が強かった天才たち

エジソンのほかにADHDの傾向が見られたよく知られている天才たちをあげておきます。作家では、童話のハンス・クリスチャン・アンデルセン、詩人のウィリアム・バトラー・イェイツ、作家のアーサー・コナン・ドイル、音楽家では、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトがあげられています。

ダーウィンはLD(限局性学習障害)だった?

限局性学習障害とは、知能指数には特に問題がないものの、「文章を読む」ことや「計算をする」するといった限定的な学習がうまく出来ない症状です。進化論で有名なチャールズ・ダーウィンは、この限局性学習障害と、自閉傾向が強かったとされています。

幼かったころは長い時間一人歩きをするのが大好きで物思いにふけることを好む自閉的な少年でした。また、一生の間でどんな言語もマスターすることができず、学校の必須科目ともいえる作詩が大の苦手で、時には友達に手伝ってもらって題目を作っていたそうです。これは限局性学習障害が示すものです。

自閉症スペクトラムの存在意義

高い発症率

遺伝的要因によって生じるとされている自閉症スペクトラムの発症率は、どんなに少なく見積もっても1~2%、中には25人に1人とする研究者もいます。通常、遺伝的障害は、0.01~0.02%とされていますから、これは異常に高い数値です。

なぜ、自閉症スペクトラムの発症率はこれほど高いのでしょうか。

健常者と心の向け方が異なる

京都大学霊長類研究所教授・正高 信男先生は、この疑問にこう答えておられます。以下、先生のブログからの引用です。

もしもこの「障害」が本当に生きていくうえで障害となるのなら、その人が子孫を残す確率は小さくなり、ダーウィン流の淘汰が働くはずである。しかしそうはならなかった。自閉症スペクトラムには他の多くの遺伝的障害のようには、淘汰圧がかからなかったのだ。つまり存在意義があったと考える方が、自然ということになってくる。それでは、どんな意義があるのかということを私は、ここのところ実証的な立場で研究してきた。そこで明らかになったのは、自閉症者はそうでない人と認識世界が何がしか異なる、しかも後者が仲間とのこころの交流に重心をすえた行動をとるのに対し、前者は人間を取り巻く物理的環境に自らのこころを向けるという事実であった

自閉症スペクトラムの人たちにとって、心強いメッセージです。


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