自律神経失調症が原因の下痢や便秘、改善方法はある?


自律神経失調症とは、自律神経の乱れによって起こる身体的、精神的様々な症状の総称です。その中には、下痢や便秘も含まれます。今回は、これらの症状と自律神経との関係をまとめてみました。

目次

自律神経失調症が下痢や便秘を引き起こす理由

自律神経の乱れが様々な症状の原因に

私たちの人体にはたくさんの機能の異なる神経が張り巡らされています。

脳や脊髄の神経が「中枢神経」、内臓などに張り巡らされているのが「末梢神経」ですが、末梢神経は、「体性神経」と「自律神経」に分けられます。

体性神経というのは、意思によって体の各部を動かす神経、意思に関係なく刺激に反応して身体の機能を調整するのが自律神経です。

自律神経はさらに、「交感神経」と「副交感神経」に分けられます。交感神経は、体を活発に動かすときに働き、副交感神経は、体を休めるときに働きます。交感神経をアクセルに例えるならば、副交感神経はブレーキの役割を担った神経です。

通常では、この二つの神経がバランスをとりながら体の状態を調節していますが、強いストレスなどを受けるとこのバランスが崩れることがあります。自律神経のアンバランス状態によってあらわれてくる様々な症状が、自律神経失調症とよばれる症状群です。

様々な症状の中には下痢、便秘も

自律神経失調症の症状は、数えきれないくらいある、といわれるほどです。めまい、全身倦怠、頭痛、手足の痛み、動悸、息切れ、不眠、食欲不振などの身体的症状のほかに、怒りっぽくなる、不安になる、気分が落ち込む、自己嫌悪に陥るなどのうつ病に似た精神症状があらわれてきます。

そういった症状の中に下痢と便秘があります。食べ過ぎや食あたりといった確かな心当たりもないのに下痢になると、原因が分からず不安になってきますが、自律神経失のバランスが乱れることで消化器官に不調が生じることもあるということを知っておくとその後の対応も違ってきます。

下痢と便秘が交互に繰り返されることもある

自律神経失調症であらわれる下痢と便秘は、交互に繰り返されるケースが少なくありません。下痢と便秘という正反対の症状があらわれてくるわけです。

自律神経失調症では、保たれるはずの交感神経と副交感神経のバランスが崩れており、交感神経が極端に優位になったり、副交感神経が極端に優位になったりします。そのたびに、それぞれ便秘になったり、下痢になったりします。

自律神経と消化器官の関係とは

もう少し詳しく交感神経と消化器官の関係をみて行きましょう。自律神経の中の交感神経は、活動している時や緊張している時、ストレスを感じている時に優位になっています。一方、副交感神経は、リラックス時、休息時、睡眠時に優位になっています。

交感神経は身体が活動的になる神経で、活動しているときには排便したくなると不都合なので、消化器官の働きは抑えられています。そのため、交感神経ばかりが優位になると腸の働きが鈍って便秘になってしまいます。

反対に副交感神経は休息の神経で、休息時は排便をするときでもあるので、消化器官の働きは活発になります。そのため、副交感神経ばかりが優位になると腸の働きは必要以上に活発になり、下痢になってしまうのです。

ストレスが大きな要因になっている

では、自律神経はなぜ乱れるのでしょうか。失調の要因としては、ホルモンバランスの乱れやアルコールを要因とするもの、あるいは生まれつき自律神経が乱れやすい体質である、ということもあります。

しかし、一番大きな要因とされているものはストレスと生活習慣の乱れです。日々の生活の中でたまっていくストレス、突発的な出来事によるストレス、それに生活の乱れから生じる疲労や不眠などによって、自律神経のバランスを乱し、自律神経失調症としてのさまざまな症状をもたらすことになるのです。

意外なものがストレスになっていることも

緊張するとトイレが近くなり、汗をかいたりします。会社の人間関係がうまくいかず、悩んでいると眠れなくなり、食欲も衰えます。

こうしたストレス状態が長引いていくと、自律神経やホルモンのバランスが崩れ、自律神経失調と呼ばれる症状があらわれてきます。

ストレスというと、職場の過労や人間関係などが思い浮かびますが、人事異動で栄転した場合もストレスがかかることもあります。

出世して、給料もあがり、喜ばしいことなのに、無意識のうちに今までとは違う責任感の重圧がかかり、知らず知らずのうちにストレスになっているケースもあるのです。

下痢と便秘を改善するためには

薬については医師、薬剤師に相談

下痢や便秘になった時、すぐに医者に行く人は少なく、まず、市販の下痢止めや便秘薬に頼ろうとします。

これはこれで効果がありますが、下痢と便秘が繰り返すような自律神経失調症と思われる症状が出たら、診察対象が細分化された大きな病院で診てもらうよりも、かかりつけの医者に相談することをお勧めします。

自律神経失調症の薬は、2種類あります。一つは、症状を抑えるための対症療法として処方された薬です。お腹の具合が悪ければ整腸薬、痛みがあれば鎮痛薬と言った薬です。

もう一つは、ストレスや心の面に働きかける抗うつ薬や抗不安薬などです。場合によっては、専門医による精神療法をすすめられることもありますが、そこまで行かない場合でも定期的に通院して治療に取り組むことが重要です。

ストレスを減らす、発散する

自律神経失調症を克服するためには、ストレスを減らし、発散させることです。ストレス解消法としては、散歩などの軽い有酸素運動、趣味でカラオケなど、人それぞれ様々なものがあると思います。

いずれにしろ、リラックスできて、心が休まるひと時を確保するのがポイントです。

暴飲暴食等の消化器官に負担をかけることをしない

ストレスがかかると、過食になる人がいます。また、ストレス発散が暴飲暴食になりがちです。

身体症状として下痢と便秘の症状が出ているときは、消化器官に負担がかかるようなことは避けるべきです。

下痢、便秘の際に気を付けるべき点

下痢の際は水分、塩分をしっかりととること

下痢をすると大量の水分が失われます。でも、水を飲むと頻繁にトイレに行かなければならないと思って、水分の摂取を避けがちですが、これは間違いです。

水分を摂るから下痢をするのではなく、下痢になると水分を摂っても摂らなくても、体は病原菌などを外に排出しやすくするために、無理やり水分を腸管に放出しているのです。

ですから、下痢が激しい場合はむしろ、失われた水分や塩分を補充することが重要です。経口補水液と呼ばれる脱水状態を防ぐための液体などを飲んで失った水分や塩分を補充してください。

便秘の時に無理にいきまない

便秘になると、出したいのに出せないもどかしさやつらさからついついトイレでいきんで排便したくなります。しかし、無理にいきみすぎると血圧が瞬間的に急激に上がって、脳の血管などが破れてしまう恐れがあります。寒い冬場や、血管がもろくなっているお年寄りは要注意です。

また、硬くなった便を無理やり出そうとしていきむと、肛門に負担がかかって痔になる恐れがあります。実際、痔を発症するきっかけのほとんどは便通異常だといわれています。

専門家は、いきむのは3分まで、それでも出ないときは、いったんあきらめてトイレを出ること。また、排便のコツとして、上半身を前かがみにし、おなかに力を入れ、かかとを上げることなどをアドバイスしています。

別の原因がある可能性も

下痢や便秘だけでは、なかなか医者にかかりづらいものです。しかし、自律神経失調症は、うつ病に移行するケースがあります。

また、最近では、「仮面うつ病」が注目されています。体のあらゆるところに身体症状があらわれるのが自律神経失調症ですが、不安やイライラなどの精神的症状はみられない場合、うつ病ではない、と思い込みがちです。

たとえば、心臓がキリキリ痛むという身体的症状(仮面)があるため、てっきり仮面の方の病気だと思い込んで、身体科の医療機関に出かけます。でも、一向に症状が改善しない。そこで、改めて精密検査をしたら、実はうつ病だったということになるのが、仮面うつ病です。

この場合、本質は「うつ病」ですから、仮面を捨てて、一日も早くうつ病の治療をスタートさせなければなりません。

悪循環に陥らないように対策を

自律神経失調症における下痢や便秘の多くは、ストレスによるものです。ところが、下痢と便秘という症状によって、日常生活の質が落ち、これが新たなストレスとなって、症状を悪化させるという悪循環に陥りがちです。

先に述べたように症状が改善しないようなら、早めにかかりつけの医者に診断を仰ぎ、病気の元である自律神経失調症の治療に取り組まれることをお勧めします。


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