若年性認知症とは?原因と特徴、何歳からなる可能性がある?


認知症にはいろいろな種類があります。よく知られているのがアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症です。これらは、原因によって分類されているのですが、「若年性認知症」、18歳~64歳という発症年齢で区分された認知症です。

目次

若年性認知症とは

厚労省の調査(2009年)によると、人口10万人に当たりの若年性認知症患者の有病率は男性57.8人、女性36.7人。

患者数は3.78万人で、推定発症年齢の平均は51.3歳となっています。

64歳以下の人が発症する認知症

認知症は、次のように定義されています。

<後天的な脳の病気により正常に発達した知的機能が全般的かつ持続的に低下し日常生活に支障を生じた状態>

人間の知識と知能や周囲との適応性は、成長するにしたがって発達しますが、このようにして獲得された知識・知能・適応力が異常に失われた状態や症状が認知症です。

代表的な症状に、記憶や判断力が低下します。記憶と言うのは、多かれ少なかれ年と共に衰えて行きますから、認知症というのは老人がなる病気だと考えられがちです。

ところが、厚労省の調査であきらかなように働き盛りの50代で認知症を発症するケースが少なくありません。若年性認知症は、18歳から64歳の間に発症したさまざまな認知障害の総称です。

認知症の種類は人それぞれ

認知症には、いろいろな種類があります。よく知られているアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症にレビー小体病が、認知症を代表する障害です。このほか、アルコール性認知症、パーキンソン病、ピック病などがありますが、64歳以下で発症すると「若年性認知症」と呼ばれます。

つまり、一口に若年性認知症といっても、人それぞれに異なった原因の認知症を抱えているわけです。当然、治療や対応策も異なってきます。先に紹介した厚労省の調査では、若年性認知症で一番多いのが脳血管性認知症39.8%、アルツハイマー型認知症25.4%です。この二つで若年性認知症の65%を占めています。以下、頭部外傷後遺症7.7%、アルコール性認知症3.5%、レビー小体型認知症3.0%と続きます。

物忘れをはじめ、様々な症状が発症する

その人の認知症の種類にもよりますが、おおよそ認知症の初期症状に似た以下のような症状があらわれてきます。

●物忘れ
発症した人の50%にみられる症状です。見知った人の名前を思い出せなくなったり、会議があることを忘れるようになります。洗濯機を回しながら、お湯を沸かしていると、洗濯機のことを忘れてしまったりします。

●行動の変化
視覚で得た情報を正常に処理できなくなるため、方向感覚が衰え、地下鉄の駅の構内で同じところをうろうろしたり、転んだり、電柱にぶつかったりします。

●性格の変化
焦りや不安などから、性格に変化があらわれ、温厚だった人が親しい人に暴言を吐くようになります。また、人と会うことを極端に避けるようになります。

●言語障害
言語中枢の障害によって、会話中に話が詰まるようになり、「あれ」とか「これ」などが頻発し、具体的な言葉がでてこなくなります。

若いので生活に様々な問題が発生しやすい

40代、50代の人が発症する若年性認知症の最大の問題は、経済的な問題です。発症すれば、離職せざるを得ません。このため、家族の生活状況が一変し、子どもたちが進学を断念するケースも珍しくありません。

年齢で区切られているために、介護保険第1号被保険者(65歳以上)の適用からはずれます。もっとも、第2号被保険者(40歳~64歳)でも、介護サービスは利用できますが、40歳未満だと介護サービスが受けられなくなります。

また、周辺症状があらわれてきたとき、まだ若くて体力があるため、家族では暴力などの対応が難しくなることもあります。病気によって心身がむしばまれる本人の苦悩と家族の苦悩が複合して、生活の基盤が大きく揺るいできます。

高齢者の認知症より進行が速いことも

アルツハイマー型の若年性認知症は、高齢者のそれよりも進行がはやいと言われています。一般に、アルツハイマー型認知症は、軽度⇒中等度⇒高度と進行していきます。

発病から4~6年で高度に至るというのが一般的ですが、若年性の場合、ばらつきがあるものの、年寄りよりも進行が早まります。

軽度の場合、時間や場所や人物に対する認知機能が衰えますが、日常生活に支障をきたすほどではありません。一番厄介なのは、中等度です。というのも、まだ本人は足腰が元気な状態ですから、家族では取り押さえられないような周辺症状がでてくるからです。

高度になると、寝たきりの状態になります。初期症状があらわれたら、すぐに専門医に診断してもらってください。治療で進行を遅らせることが出来ますし、後述するようになかには治る認知障害もあります。

若年性認知症の原因、何歳からなる?

若年性認知症には、様々な種類の認知症が含まれています。この中には、原因がわかっているものと原因がわからない認知症があります。

原因がわからないもの

アルツハイマー型認知症は、脳内の神経細胞が壊れ、脳が萎縮し、知能や身体の機能も衰えていきます。しかし、なぜ萎縮していくかという発症の根本的な原因はわかっていません。

レビー小体型認知症では、レビー小体と呼ばれるたんぱく質が脳の神経細胞を減らしていくことで発症します。しかし、そもそもなぜそういったことが起こるのかはよくわかっていません。

このほか、ピック病、前頭側頭型認知症、パーキンソン病なども原因が分からない認知症です。

原因が分からないもの原因が分かるもの
アルツハイマー型認知症脳血管性認知症
レビー小体病頭部外傷性認知症
ピック病アルコール性認知症
前頭側頭型認知症正常圧水頭症
パーキンソン病

原因がわかるもの

若年性認知症の4割を占める脳血管性認知症は、原因が分かっている認知症です。脳血管性認知症は、脳梗塞、脳出血など脳の血管に異常が起きた結果、認知症になるものです。つまり、脳血管疾患の後遺症です。

脳血管性認知症の場合の原因となるのは、ほとんどが生活習慣病といわれるものです。そのほかにもアルコール依存や頭部外傷の後遺症による認知症も原因がわかっています。

18歳で発症する可能性もある

先に紹介した厚労省の調査では、10万人に当たりの有病率が最も高いのは、60歳~64歳の222.1人、ついで55歳~59歳の144.5人、50歳~54歳の68.1人です。

年齢が高くなるほど有病率があがってきていますが、18~19歳では1.6人、20~24歳で7.8人となっています。まれに18歳、20歳代で発症するケースもあるのです。

若年性認知症の治療、対策方法

認知症の中核症状というものは、現在のところ治すことができません。しかし、わずかですが治すことができる認知症もあります。

治療できる認知症

治療できる認知症の代表的なものが慢性硬膜下血腫です。これは、頭を打撲した後、脳を包む硬膜の下に出血がおき、脳が圧迫されて起こる病気ですが、その後遺症として、1ヶ月ぐらいしてから、頭痛、不全片麻痺、歩行障害、認知症などがあらわれます。

正常圧水頭症は、随液圧は正常であるものの髄液の吸収障害によってあらわれる認知症ですが、これも治療できる認知症です。

治療できない認知症

三大認知症と言われるアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症は、いずれもその中核症状を治療して治すことはできません。根治は不可能ですが、進行を遅らせることはできます。

アルツハイマー型認知症では、情報をやり取りする「アセチルコリン」という神経伝達物質が減少していきますが、これを分解する酵素の働きを抑える新薬が開発されています。

脳出血の場合、血圧を下げる薬を服用し、血圧の管理を行います。脳梗塞の場合は、血糖値、コレステロール、血圧を下げる薬を服用し血栓を予防する薬が用いられています。

薬物によって周辺症状を抑える

認知症の中核症状は治せなくても、薬物によって、周辺症状を抑えることはできます。薬物療法としては、妄想や幻覚を押さえる抗精神薬、不安や興奮をおさめる抗不安薬、抑うつ症状を改善する抗うつ薬が用いられています。

早期対応、早期治療がポイント

仕事に支障をきたすまでではないが、かなり物忘れするようになったと自覚しても、強いて年のせいかと思い込んで、病院を敬遠するケースが少なくありません。

また、治療が可能な認知症もあることですから、自分でおかしい、と自覚したら躊躇うことなく専門の医療機関の診断を仰ぐようにしてください。早期対応、早期治療が現在できる最善の対策です。


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