ホルモンとメンタルの関係


ホルモンの基本

ホルモンの働き

気温や日光など外部環境または疲労や空腹などが原因となり、血糖値や体温が急激に変化することは命に関わることになります。そのため生物は環境に適応し体内の状態を一定に保つ必要があります。その際に特定の臓器で分泌され、血管を通して体内を循環し、決まった細胞で効果を発揮する物質がホルモンです。

ホルモンで重要なこと

ホルモンで重要なことは必要な時に必要な量が必要な場所で働くことです。例えば血糖値を下げるホルモンであるインスリンが不足すれば糖尿病になり、血圧を上げるホルモンであるアドレナリンが過剰になれば高血圧症や自律神経失調症となります。

ホルモンの種類

ホルモンは大きく3種類に分類されます。タンパク質で構成されるペプチドホルモン、コレステロールから作られるステロイドホルモン、アミノ酸から作られるモノアミンホルモンがあります。ペプチドホルモンにはインスリンや成長ホルモン、ステロイドホルモンには男性ホルモンや女性ホルモンがありますが、精神科で重要なホルモンはモノアミンホルモンです。

モノアミンホルモンの特徴

脳は人間の臓器の中でも重要な働きを持ち、それを保護するために物質が入りにくい構造になっています。そのためホルモンであっても脳内への移行は制限されています。そのなかでアミノ酸から作られるホルモンであるモノアミンホルモンは分子の大きさが小さいため脳内に入りやすいのが特徴です。

代表的なモノアミンホルモン

精神科で重要なものは興奮や覚醒に関連するアドレナリン、喜びや快感に関連するドーパミン、満足感や安心感に関連するセロトニンがあります。他に痒みや胃酸分泌に関連するヒスタミンや代謝機能に関連する甲状腺ホルモンが存在します。

アドレナリンホルモンとは

アドレナリンホルモン

アドレナリンの役割

ストレスや緊張がかかった時に主役となるホルモンです。動物が獲物を襲う、天敵から逃れるといった生死に関わる状況で分泌され体を戦闘モードにする作用を持ちます。分泌されることで集中力や瞬発力が上がる一方で不眠や高血圧の原因にもなります。

アドレナリンと精神の関係

興奮に関与するため過剰に分泌された場合はイライラ感や不眠などに繋がります。そのため統合失調症や双極性障害ではアドレナリンを抑える薬が使用されます。不足した場合は集中力が持たなくなり注意散漫な状態となります。そのためADHDなどの発達障害ではアドレナリンを増やす薬を使用することもあります。

アドレナリンを調整する薬

ADHDの治療に使用されるインチュニブストラテラ、統合失調症に使用されるセロクエルジプレキサなどがあります。インチュニブやストラテラはアドレナリン増やすことで、セロクエルやジプレキサはアドレナリンを抑えることで症状を改善します。

アドレナリンの調整による副作用

アドレナリンの作用を増やす薬では不眠、頭痛や食欲不振などが現れるとされています。一方アドレナリンの作用を抑える薬では眠気や低血圧が現れることがあります。

ドーパミンホルモンとは

ドーパミンホルモン

ドーパミンの役割とは

精神面ではやる気、記憶、快感に、肉体面では運動神経や性ホルモンの調節に関わっています。そのため減少すると運動神経がうまく働かなくなりパーキンソン病と呼ばれる症状になります。脳内のドーパミンのバランスが崩れることで統合失調症と双極性障害は発症するとされています。

ドーパミンと統合失調症

統合失調症ではドーパミンが増えた場合には陽性症状と呼ばれる幻覚や妄想などのエネルギーの増大した症状が現れ、減少した場合には陰性症状と言れる無気力や抑うつ的なエネルギーの低下した症状が現れます。治療ではドーパミンを調節する薬が使用されます。

ドーパミンと双極性障害

双極性障害ではドーパミンの増大によって躁状態と言われるやる気や活気に満ちた症状が現れ、減少によって鬱症状と言われる気分の落ち込んだ症状が現れます。双極性障害とうつ病は似た症状が現れますが治療方法は異なります。双極性障害ではドーパミンを、うつ病ではセロトニンを調整する薬が使用されます。

ドーパミンを調節する薬

陽性症状や躁状態にはドーパミンを抑える薬としてセロクエル、ジプレキサ、リスパダールなどがあります。陰性症状にはエビリファイやレキサルティなどのドーパミンのバランスを調節する薬が使用されます。ADHDでは集中力を改善するためにコンサータと呼ばれるドーパミンを増やす薬が使用されます。

ドーパミンの調節による副作用

ドーパミンを抑える薬では運動神経がうまく動かせなくなりアカシジアと言われる震えやムズムズ感が現れたり、ホルモンバランスが崩れ生理不順などが現れることがあります。ドーパミンを増やす薬ではイライラ感や不眠などが現れることがあります。

セロトニンホルモンとは

セロトニンホルモン

セロトニンの役割とは

精神面では安心感や満足感に関わり、肉体面では食欲、睡眠や痛みに関与しています。うつ病は慢性的なストレスでセロトニンが枯渇することで発症されるとされています。

セロトニンとうつ病

うつ病ではセロトニンが減少することで精神、肉体の両方に不調が現れます。精神症状では不安、抑うつなどが現れ、身体症状では食欲不振、不眠や疼痛が現れます。そのため治療ではセロトニンを増やす薬が使用されます。

セロトニンを増やす薬

セロトニン量を増やすために再取り込みと言われる血中からの排泄を阻害する薬が使用されます。セロトニンのみを増やす薬はセロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と言われパキシルやレクサプロがあります。セロトニンに加えノルアドレナリンも増やす薬としてセロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)と言われるイフェクサー、サインバルタなどがあります。両者の違いはSSRIは作用が穏やかで、SNRIはノルアドレナリン を増やす分効き目が早いとされており症状によって使い分けられています。

セロトニンを増やすことによる副作用

飲みはじめに賦活症候群と言われるセロトニンの急な増加による焦燥感、イライラ感が現れることがあります。

まとめ

ホルモンとメンタルには深い関係があります。しかし今の研究では完全には解明されていない部分があります。そのため薬も患者さんごとに合う合わないがあります。したがって治療をする際には医師薬剤師看護師などからしっかりと説明を聞き、気になる場合にはすぐに相談することが重要です。