過敏性腸症候群(IBS)が原因の吐き気、頭痛、腰痛とは?


過敏性腸症候群(IBS)は、主として大腸の運動および分泌機能の異常で起こる病気の総称です。IBSは、症状によって腹痛を伴う便秘型、下痢型、混合型と分けられますが、このほかに腸とは一見無関係のような吐き気、頭痛、腰痛などのその他の症状があります。

目次

過敏性腸症候群の概要

主な症状は下痢や便秘

腸に何も異常もみられないのに、腹痛を伴った便秘や下痢が続くのがIBSです。

IBSの代表的な症状は、便の状態によって以下のように分類されています。なお、この分類には含まれていませんが、ガス型というのもあります。

■IBSの代表的症状
便秘型:硬便または兎糞状便が25%以上あり、軟便または水様便が25%未満。
下痢型:軟便または水様便が25%以上あり、硬便または兎糞状便が25%未満。
混合型:硬便または兎糞状便が25%以上あり、軟便または水様便も25%以上。
分離不能型:便状の基準が上記のいずれも満たさないもの。

消化器の病気の2~3割はIBS

日本では、便通異常で受診する患者さんの2割から3割はIBSだと言われています。年齢層は男性で30歳から40歳代、女性は20歳から50歳代に多く見られます。

最近では、受験などのストレスの影響か小・中学生にも増えています。

ストレスが大きな要因となっている

IBSの原因は、まだはっきりわかっていませんが、ストレスが絡んでいることは間違いのないところです。それは、発症の年代からもうなずけます。

腸の内容物を運ぶ「蠕動(ぜんどう)運動」をコントロールしているのが自律神経ですが、ストレスにさらされると自律神経に乱れが生じ、蠕動運動に異常が発生します。

そして、蠕動運動が過剰であるか、これとは逆に不活発であるかという状態に応じて下痢や便秘などの相反する症状が発生します。

心理的ストレスで消化管知覚過敏に

IBSでは、消化管知覚過敏となり、心理的にも一種の強迫観念にとらわれるようになります。

IBSの下痢型では、通勤・通学の電車の中や会議が始まる直前にしばしば現れます。この状況は、症状がでてもすぐにトイレに駆け込めないような不安な環境です。いったんIBSの症状を経験すると、大きな不安を抱えて電車に乗り込むことになり、知覚過敏になってきた腸が反応し、腹痛、下痢の症状があらわれてきます。

日常生活に支障が起きることも

IBSは命に関わるような病気ではありません。しかし、日常生活の中では、結構厄介なところがあります。というのも、通学・通勤、会議の前など緊張した状態になると症状がでてくるため、通勤や通学途中で電車を降りて駅のトイレに駆け込むことになります。

こういうことが重なると、すぐに便意をもよおすために外出するのを避けるようになります。これを避けようとする、仕事中はパンツタイプの紙オムツを着用せざるを得ないということになって、生活の質が低下してしまいます。

また、症状が重くなると、IBSの症状自体が大きなストレスになり、精神面で変調をきたすことになりかねません。

医療機関による治療もありうる

先に述べたように、IBSには、腹痛を伴って下痢をする(下痢型)、便秘になる(便秘型)、あるいはオナラが頻発して困る(ガス型)があります。とはいえ、すぐに医療機関で受診するのをためらう人は少なくありません。加えて、休みの日などは症状がでないこともあり、ますます医療機関の敷居が高くなりがちです。

しかし、症状に悩まされるようになったら、医療機関できちんと検査し、症状に応じた治療に取り組まれることをお勧めします。自己流の素人判断での対応は、しばしば誤った治療になり、症状を悪化させることがあるからです。

もう一つは、症状の陰にIBSとは異なった病気が潜んでいるかもしれないからです。正しい診断のもとで治療に取り組むことで、安心感がでて、ストレスも軽減されてきます。

吐き気、頭痛などのその他の症状

IBSの症状の中には、下痢、便秘などのほかに腹痛、吐き気や頭痛、腰痛を併発する人もいます。これは、ストレスや自律神経のバランスが崩れることが主な原因です。

吐き気と頭痛

一見、IBSとは無関係なような部位での発症ですから、別の疾患かと思いがちですがこの二つの症状は腸と無関係ではありません。吐き気の場合はお腹に溜まったガスが原因となっていることがあります。ガスが胃などを圧迫することにより吐き気をもよおしてしまうのです。

また、ストレスが自律神経のバランスを崩して吐き気が生じるという場合もあります。自律神経が乱れると頭痛を起こすこともあるので、IBSの症状のひとつとして上げる人も少なくありません。

腰痛

腰痛に悩む人も少なくありません。原因は、お腹周辺の筋力低下を招くからです。

腹筋が弱まると、姿勢が悪くなると同時に背骨や内臓を正しい位置に保つことができなくなるため、腰痛になりやすくなるのです。

一般にトイレでいきむ便秘型の人より下痢型の人が腰痛になりやすいようです。

対策方法

IBSの原因の一つがストレスだということは既にのべています。従って、IBS対策の基本は、ストレスをなくし、メンタルの健康を回復することになります。

日頃のストレスを減らす

IBSの発症の契機となっているのはストレスです。ストレスを上手に処理することが、IBSの予防と治療にとって不可欠です。

とはいえ、仕事のストレスを自分の意志でコントロールするには限度があります。働いている以上ストレスは、織り込み済みです。

それよりも、たまったストレスを発散する手法を身に付けることが重要です。週末には、気心の通じる友だちとの飲み会(ストレス発散会)をするとか、泣けそうな映画を観て思い切り涙を流すとか、スポーツ観戦にでかけるとか、人それぞれのストレス発散の手法を身に付けることをお勧めします。

健康的な生活を心がける

健康な生活の理想形とは、日の出とともに起きだし、夜更かしを避け、決まった時間に食事をし、暴飲暴食をさける生活です。とはいえ、仕事をしていると、なかなか理想的な健康生活をするのは難しくなります。

しかし、今より1時間早く寝て、1時間早く起きることは実行可能でしょう。また、休みの日には、だらだら時間をやりすごすのではなく、なまった体に活をいれるための軽い運動なども実行可能です。

その気になれば誰でもできるこうしたことを地道に実行するようになると、生活のリズムがおのずから整ってくるものです。

食事に気をつかう

アルコール、コーヒー、辛い物など刺激の強い食品や消化の悪い食品を避けることは言うまでもないことです。腸内の老廃物を体外に排出してくれる食物繊維を含んだ食品を摂るようにしましょう。

ただし、食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維がありますが、植物繊維なら何でも良いというわけではなく、偏らず、バランスを考えてとるようにしてください。

ちなみに、不溶性食物繊維は、ごぼう、ブロッコリー、さつまいも、いんげん豆、大豆などなど、水溶性食物繊維は、わかめ、昆布、しいたけ、りんご、バナナなどです。このほか、腸の粘膜を強くする乳酸菌、ビタミンA、ビタミンB2などを摂ることもポイントです。

ガス抜きヨガをしてみる

ガス型のIBSに悩んでいる人は、ガス抜きのヨガを試みてはどうでしょうか。ネットには専門家のガス抜きのヨガやマッサージの方法がアップされています。

参考にしてみてください。そんな中で、比較的簡単にできるガス抜きのヨガを引用してみます。

1)あおむけに寝て、両ひざを抱えます。
2)息を吐きながら両腕でひざを胸に引き寄せ、上体を起こします。このとき、太ももを下腹に押しつけ、お尻を持ち上げ呼吸を5回します。これで自然にガスが抜けます。
3)体を元に戻し、息を吸って、また繰り返します。
参考:https://www.seirogan.co.jp/bf/yoga/basic.html

薬は根本的な治療にならないことも

下痢、便秘、腹痛、吐き気、頭痛、腰痛などなどIBSの症状に対応した市販薬があります。たしかに、こうした市販薬で一時的に症状をおさえることは可能です。

しかし、IBSが身体的疾患ではなくストレスを契機としたメンタルな疾患だということを考えると、やはり専門の医療機関できちんと診断を受け、医師の指示に従った治療に取り組むのが回復への正しい筋道です。

生兵法(なまびょうほう)は怪我の元

生半可な知識でこと臨もうとすると、かえって大けがをするという意味で、素人判断の危うさを指摘したことわざです。

生活に支障がでても命に別状がないIBSの場合、とかく自己判断で自分の病気を決めつけ、間違った療法に陥るリスクが少なくありません。

たびたび繰り返したように、症状がなかなか収まらないというのであれば、思い切って専門の医療機関で診断をうけて治療に取り組むようにしてください。