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不眠症とは
不眠症には、入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害の4タイプに分類され、これらの不眠症状が1ヶ月以上続き、日中に倦怠感・意欲低下などの不調が出現する病気で、睡眠障害の1つです。不眠の原因はさまざまで、ス原因としては、ストレスやうつ病などの精神面の問題や、アレルギーや頻尿などといった身体面の問題、生活リズム、体内時計の乱れ、薬の副作用、生活習慣など様々なことが考えられます。自分の生活環境や生活習慣など、日常生活における自分の行動が原因になっている可能性がある一方で、自分では治せないなんらかの病気や精神疾患が原因になっている可能性もあります。
精神面では、ストレスが原因で不眠症となっているケースが多々あり、ストレスをため込みやすい完璧主義や生真面目な性格の人は不眠症になりやすい体質であるともいえます。
同じくストレスが発症の原因となっている精神疾患のうつ病でも、高い確率で不眠の症状があらわれるため、精神的なストレスが原因であると思われる不眠症は、うつ病の疑いもあります。
また、他の精神疾患でもしばしば不眠の症状が表れます。
身体面の問題では、様々な身体の病気がその症状で眠りを妨げます。痛み、かゆみ、せき、頻尿などの病気の症状はそのまま寝つきを悪くし、しばしば症状が原因で夜中にも起きてしまいます。そのため、不眠を克服するためにはこういった症状を治療し、抑える必要があります。
不眠が続くと不眠恐怖が生じ、緊張や睡眠状態へのこだわりのために、さらに不眠が悪化するという悪循環に陥ります。
不眠症の症状
- 日中眠気が強くなる
- 集中力・意欲低下
- 記憶力や思考力の低下による勉強などがうまくいかない
- 精神疾患を患っている場合、精神症状が悪化する。
- 生活習慣の悪化から生活習慣病になりやすくなる。
など、日中眠くなるだけでなく、日常生活への弊害、合併症のリスク、現在お持ちの病気の悪化など、睡眠一つで色々な悪影響に繋がることが分かります。
不眠症のおおまかなタイプ分類
①入眠障害:寝つきが悪い状態。寝付くのに大体1時間以上かかり、苦痛に感じている状態。
②中途覚醒:眠りが浅く、睡眠中に何度も目が覚める状態。
③早朝覚醒:意図した時間よりも1、2時間以上早く起きてしまう状態。
④熟眠障害:十分な睡眠時間を取っていても熟眠感を得られていない状態。ほかのタイプの不眠症と併発していることが多いです。
どうして不眠症になるの?
不眠症の原因
不眠症の原因別に分かりやすく表にまとめてみました。
ストレス | 職場や学校、様々な環境に対するストレスなどにより、気持ちが落ち着かず眠れない事があります。また、不眠となり、眠れないことによるストレスで余計不眠症になることがあります。 |
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身体の病気 | 高血圧や心臓に関する病気(胸苦しさ)・呼吸器疾患(発作や息苦しさ)・腎臓に関する病気・前立腺肥大(夜間頻尿)・糖尿病・関節リウマチ(痛み)・アレルギー疾患(かゆみ)など様々な身体の病気で不眠症に至ります。また睡眠時無呼吸症候群など、睡眠に伴って呼吸異常や四肢の異常運動が出現するために睡眠が妨げられる場合もあります。 不眠そのものでなく原因となる病気の治療を優先すると良いそうです。原因となっている症状が無くなれば、不眠が消失する可能性が高いです。 |
精神疾患 | 不眠症の方の約3割が精神疾患をもっています。 (うつ病・気分障害・不安障害など) また、不眠症が実はうつ病だったり、不眠症が原因でうつ病になるケースも少なくありません。不眠症と精神疾患はかかわりが強いと言えます。 |
薬 | 病気の治療で使っている薬剤の副作用で不眠になることがあります。例として、 (降圧薬・ステロイド薬・抗がん剤・抗うつ薬・抗パーキンソン病薬・気管支拡張薬)などが挙げられます。 睡眠が妨げられるからと言って自己判断で服薬をやめることはせず、お医者さん相談しましょう。 |
飲食物・嗜好品 | カフェインが含まれているコーヒーや紅茶・お酒・たばこなどは、覚醒作用などにより睡眠を妨げます。 |
睡眠時の環境 | 騒音や明るさ、温度、湿度などの睡眠時の環境が悪いことにより睡眠が阻害されます。人それぞれで快適な環境は異なります。 |
生活リズム | ゲームや勉強、スマホいじりなどによる夜更かし・夜間勤務などによる昼夜逆転といった生活リズムの乱れが不眠に至ります。 |
睡眠恐怖 | 不眠が続くと、眠らなければいけないと強く感じ、不安感や焦燥感が増し、ストレスや緊張からますます不眠になっていく状態です。 |
不眠症の対処法について
治療方法としては、睡眠薬による治療が行われたりもしますが、原因が様々であるため、その原因を見極め、それに合わせた治療を行うことが重要になります。生活習慣の改善で不眠症が改善される可能性もあります。
不眠症の治療のために医療機関にかかる場合は、睡眠専門医や、精神的なものが原因である場合には精神科医にかかることでより効果的な治療が望めます。
日ごろの生活習慣による不眠の改善には、以下のような方法が効果的であるといわれています。
自分でできる不眠症対策
就寝時間を一定にし、夜更かしと昼間まで寝ない
睡眠などは体内時計で調整されています。24時以降までの夜ふかしや午後まで寝たり、昼寝のしすぎは体内時計を乱します。毎日できるだけ同じ時刻に起床・就床する習慣を身につけることが大事です
睡眠時間を気にしない / 無理に布団に入って寝ようとしない
睡眠時間には個人差があります。「6時間以上寝ないと!」など考えず、意識しすぎないことが大切です。短い時間であろうと熟眠考えれていれば問題はありません。気にしすぎが不眠に至る可能性があります
太陽の光を浴びる
太陽光には体内時計を調整する働きがあります。光を浴びてから14時間目以降に眠気が生じてきます。早朝に光を浴びると夜寝つく時間が早くなり、朝も早く起きられるようになります
適度な運動を行う
適度な運動による疲労感は良質な眠りを生み出します。運動は午後に軽く汗ばむ程度の運動をするのがよいです。必要以上の運動は刺激になって寝付きを悪くするため逆効果です。負担にならない程度の有酸素運動を長時間継続することが効果的です。
寝る前にスマホやテレビを見ない
液晶画面から発せられる光は刺激となり、寝つきが悪くなります。寝れないからと、何回もスマホを弄るのは睡眠によくないので極力見ないようにしましょう。
寝酒は×
お酒は睡眠にとって一ミリもよくないです。特に深酒は×。寝酒をすると寝付きが良くなると言う方がいると思いますが、効果は短時間しか続きません。飲酒後は深い睡眠が減り、早朝覚醒が増えてきます。不眠対処に使ってはないようにしましょう。
快適な寝室づくり
自分にとって眠りやすい環境づくりは重要です。光や音があまり入ってこないようにする、ベッド・布団・枕・照明などは自分に合ったものを選ぶなど、個人の好みがあると思いますので熟眠できる環境を自分で探してみましょう。また、睡眠のための適温は20℃前後で、湿度は40%-70%くらいに保つのが良いといわれています
日ごろからストレスをため込まない / 自分に合ったストレス解消法
ストレスは眠りを阻害します。音楽・読書・スポーツ・旅行など、自分にとっての癒し、ストレス発散になる趣味をみつけて上手に気分転換をはかり、ストレスを解消しましょう。
寝る前に入浴する
お湯は熱すぎないようにする 入浴時間は就寝の2時間前くらいが目安。
激しすぎないリラックスできる音楽を聞くなどする
寝る前はリラックスする
・布団やベッドで本を読んだりしない
なるべく布団に寝ずに入っている時間を減らす
対策しても改善されない場合
自分でできる対処法を行っても改善しない場合は、専門医に相談することを躊躇わず、受診しましょう。一人で不眠に悩み続けることは、不眠を回復するどころか悪化させてしまいます。不眠症は精神科や心療内科で扱います。精神科へ行くのは気が重いという方はまずかかりつけ医に相談してみるといいでしょう。お医者さんに相談するだけでも不眠に対する恐怖は和らぎます。
睡眠薬について
睡眠薬に対して、「睡眠薬は一度使い始めると手放せなくなる」「次第に量が増えていくので副作用が怖い」などのイメージをお持ちの方は少なくないと思います。しかし、現在の不眠治療は睡眠薬を用いた薬物療法が中心です。現在広く使われている睡眠薬は不安や緊張・興奮をやわらげて眠りに導くので自然に近い眠りが得られ、副作用も少なく安心して使えます。ただし長期にわたって漫然と使い続けるのはよくありません。医師の指導の元に適切に使用することが大事です。
最近、ドラッグストアで購入できる市販の睡眠薬が売られています。これはアレルギー薬の副作用(眠気)を利用したもので、あくまでも短期間の使用に限られています。不眠症に対する治療効果は確かめられていませんので、不眠症の方はこれら市販の睡眠薬を長期に用いてはなりません。
まとめ
不眠症は、原因が一つの単純な病気ではなく、原因が様々で個人差があります。精神的なものもあり、自分一人で悩み続け更に不眠が悪化する悪循環になる場合もあります。自分でできる対処法もありますが、躊躇わず専門の医療機関を活用することが重要です。
参考文献
・三島和夫:不眠症ガイドライン外来診療2006. 泉孝英編. 東京, 日経メディカル開発, 2006, pp.296-302.
・三島和夫: 不眠症:内科疾患および精神疾患に伴う不眠. 精神科臨床ニューアプローチ8:睡眠障害・物質関連障害. 上島国利編. 東京, メディカルビュー社, 2006, pp.84-95.
・独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター(精神保健研究所・精神生理部)