発達の遅れを取り戻すための感覚統合と体幹トレーニング

周りと歩調を合わせて、まっすぐに歩けない、姿勢よく座れない・・・。
発達障害や発達の遅れた子どもは、運動がうまく出来ないという身体の問題を抱えています
そこで、感覚統合と体幹トレーニングにスポットをあて、発達の遅れを改善する運動による身体づくりを紹介します。

運動はどのようにして身に付くのか

運動は「粗大運動」と「微細運動」に分けられます。
順番としては、粗大運動を修得して、微細運動を身につけていきます。
まず、このような運動の発達のプロセスをみてみましょう

粗大運動―体が自由に動くようになる過程

「顔をあげ」→「頭をあげ」→「寝返りをし」→「支えなしに坐り」→「伝い歩き」ができるといったプロセスを経て、1歳前後に1人で歩けるようになります。
そのあと、「後ずさり」→「階段をのぼる」→「ボールを投げる」→「ジャンプ」、といった運動ができるようになるのが2歳前後です。
赤ちゃんは、まず体が自由に動くようになる粗大運動を修得していきます

微細運動―手を使って道具を使えるようになるまでの過程

「ガラガラを握る」→「モノに手を伸ばす」→「積み木を両手に取る」といった手を使った動作ができるようになった赤ちゃんは、1歳を過ぎると「なぐり書き」ができるようになります。
その後、積木遊びを経て、2歳を過ぎることになると、何も見ずに「直線」→「十字形」→「円」を書けるようになります。

運動と感覚の働き

運動と感覚は切っても切れない関係です。
人間の感覚には、①触覚、②視覚、③聴覚、④味覚、⑤嗅覚の五感がありますが、このほかに⑥固有受容覚、⑦前庭覚の7つの感覚があります。
⑥、⑦の感覚は、聞きなれない用語だと思いますが、固有受容格というのは、筋肉を使う時や関節の曲げ伸ばしによって生じる感覚のことです。
前庭覚とは平衡感覚とも言われるものです。

感覚統合

このように7つの感覚器官から脳に入ってきた情報が統合されて、一つの動作・運動ができるようになります。
私たちの脳は、感覚から入力された膨大な情報をきちんと分類したり、整理したりすることで、体の動きをコントロールしています。
これが感覚統合です。
この感覚統合の発達が遅れると、複数の感覚を統合して身体を動かす時に、ぎこちない動きになったりして問題が生じることがあります。

感覚統合がうまく出来ないとどうなるか

感覚統合の発達が遅れてしまうと、つま先歩きになり、ふらふら歩くといった具合に歩き方がぎこちなくなります。
人は歩く時は、どこが歩ける場所なのか、地面は平らなのか凸凹なのか、どのくらいの固ささなのかなどなど、五感からの情報を統合して、歩き方を瞬時に決めています。
感覚統合の発達が遅れると、ロボットのようなぎこちない歩き方になります。
また、教室で先生の話を静かに聞けないというケースでは、実は感覚統合の発達の遅れが原因であったりします。

なぜ、話しを静かに聞けないのか

先生の話を静かに聞けないのは、どうしてでしょうか。
このようなシーンでは、普通の子は、「視覚」で先生を見つめ、「聴覚」で話を聞いています。ところが、感覚統合がうまくいっていない子どもは「触覚」や「前庭覚」などにも同じ程度の注意を向けてしまいます。
そのために、たまたま触れた隣の席の子の腕に過剰反応してしまったり、姿勢を一定に保てずそわそわしてしまうというような動作・様子が見られるようになるのです。

発達のステップ(過程)が抜け

たとば、子どもが「テーブルで食事ができる」ようになるためには、いくつかのステップ(過程)を身につけなければなりません
まず、体のバランスを調整する前庭覚(平衡感覚)と筋肉の動きを感じ取る固有受容覚が育つことが不可欠です。これによって、「きちんとした姿勢で一定時間座ることができる」ようになります。
次に、手や指などの微細運動が身に付かないとお皿を持ったり、箸を掴むことができません。
こんな具合に、いくつかの発達の過程を経て、テーブルで食事をできるようになります。
テーブルで食事がうまく出来ない場合、子どもの発達段階のある過程が抜けている可能性があります。

感覚統合がうまく育っていない場合の対処法

ここでは、感覚統合の発達が遅れた場合のぎこちなさとその対処法をいくつか紹介しましょう。

洋服がうまく着られない(2歳前後)

洋服を着る時に、ズボンの後ろが上手にあげられない子がいます。
また、トイレでお尻を上手に拭けない子もいます。
これは感覚統合の問題で、ボディーイメージが育っていないことが原因です。
これを改善するためによく知られているのは、いろんな素材のもので、子どもの体に触るということです。
お風呂で体を洗ってあげている時に、こすっている部位を教えたり、お風呂上りに拭いている個所を教えたりするようにしましょう。

砂やスライムを嫌がる(2〜3歳)

その対処法としては、慣れさせること。嫌がるから嫌がるモノを排除するのではなく、生活の中に取り入れて、徐々に慣れさせていくようにしましょう。

ジャンプができない、転んでも手がつけない(3歳~)

感覚統合の発達途上にある子どもにとって、右足と左足を同時に動かして、両足でジャンプするのは、思いのほかに難しい動作です。
これを改善するために、歩きにくいところを歩いたり、トランポリンで飛んだりすることが、一般的によく行われています。
アスレチック遊具や自然の遊具(大きくて平たい飛び石など)で遊ばせるのもいいでしょう。遊具を掴んで登る動作をするうちに右と左、手と足を上手に同時に動かせるようになります。

転んで手をつけないという子供も増えているようです。
これは、歩行器を使って早く歩くようになった子どもが、ハイハイの期間が短かったために、手をつくことを覚えていいなかったからと考えられています。

箸を上手に使えない(3歳~5歳)

右左の足を同時に使うことができるようになると、三輪車が漕げるようになり、縄跳びもできるようになります。
ところが、箸を上手に使うという動作や、モノをそっとおくという動作は、視覚と触覚のやり取りとなります。
感覚統合が遅れていると、不器用さとなってあらわれます。
あせらず、じっくりと取り組んでいきましょう。

授業中に同じ姿勢を保持するのが難しい(6歳~)

同じ姿勢で静かに座ることに関しては、先にふれたように感覚過敏が原因であることもありますが、この年齢になると体幹が弱い、ということも考えられます。
体幹というのは、頭や四股を除く胴体部分を指しますが、体幹筋が弱いと同じ姿勢を保持するのが難しくなります。
したがって、体幹トレーニングで体幹筋を鍛えることが改善につながります。

体幹トレーニング

体を支え、手足の動作をスムーズに行うためのベースになり、捻りや運動の軸になるのが体幹筋です。ここでは、幼児期のトレーニングのいくつかを紹介します。

線上歩行

床に貼られた白線の上を、白線からはみ出さないようにゆっくり歩くのが線上歩行です。
ゆっくり歩くことができるようになったら、かかととつま先をぴったりと付けて歩くようにします。バランスが崩れそうになるのをこらえることで、体幹の筋力がつくことになります。
ゆっくりと線上歩行ができるようになったら、鈴を鳴らさないように持って歩いたり、水をこぼさないようにグラスを持って歩いたりと内容をステップアップしていくのがいいでしょう。
線上歩行は、注意力、集中力、自己コントロールもあわせて養う効果があります。

ケンケンパ

ケンケンパは、左右均等のバランス感覚を養うために有効な体幹バランストレーニングです。
昔、学校帰りの子どもたちが外でワイワイガヤガヤと遊んでいたころ、ケンケンパは縄跳びと並ぶ遊びの人気メニューでした。
最近では、外遊びをしなくなったのでケンケンパを知らない子どももいるようです。
そこで、家の廊下などにケンケンパをなぞって、床にマスキングテープで足を置く円や四角を描いて放置しておいて置くというのはどうでしょうか。
子どもは言われなくても、並べられた円や四角の上をケンケンパするものです。

バランスボールやバランスボード

最近、人気があるのがバランスボールを使った体幹の筋力トレーニングです。
これは、筋力を鍛えると同時に前庭覚(平衡感覚)の発達を促進します。
子どもが大好きなアンパンマンの顔がバランスボールになっているものもあります。
また、ハンドルつきのものもあり、ハンドルをもって使えば転倒防止にもなります。
バランスボールの大きさの目安は、バランスボールの上に座ったときに膝の角度が90度になるサイズです。90度にならない場合は、空気の入れ具合で微調整をしましょう。

楽しんでトレーニング
無理強いするのではなく、子どもが楽しく遊ばせながら鍛えるというのがポイントです。
体幹トレーニングをすることで、走る、転がる、ぶら下がる、跳びはねる・渡るといった人の基本的な動作が、自然と養われていきます。
親が工夫して上手に遊ばせれば、動作や運動が苦手で、動作が不器用な子どもたちの表情も明るくなっていくはずです。