発達障害を題材にした障害がよくわかる、おすすめの漫画


発達障害は、生まれつき脳の一部の機能に障害がある障害ですが、知的能力に問題があるというわけではありません。能力のバランスが崩れているために、生きていくために必要な「常識」が損なわれている人たちです。
一方で、ある特定の能力が突出してすぐれているため、ツボにハマれば天才的能力を開花するケースもあります。

発達障害は、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害(ALD)、チック障害、吃音(症)などのタイプに分類されています。
今回は、そんな発達障害を題材にしている漫画をタイプ別にご紹介していきます。

目次

注意欠如・多動性障害(ADHD)

ADHDの主たる症状は、不注意(うっかりミス)、多動性(落ちつけない、貧乏ゆすりをする)、衝動性(衝動買い、思ったことをすぐ口にする)です。
症状は7歳ころまでにあらわれてきますが、自分がADHDだったと気づかずに大人になり、上記の3つの症状によって、周囲の人たちとうまく折り合いがつかず、悩んでいる人も少なくありません。

ADHDは、俗称ジャイアン型(多動-衝動優勢型)とのび太型(不注意優勢型)の二つに分けられます。

前者は、衝動性が強く、あれこれといろんなものに手を出して活動的ですが、あくまで衝動的にやっているので何もやり遂げられないことがしばしばです。

後者はうっかりミスが多いタイプです。
 

『マンガでわかる 大人のADHD コントロールガイド』(福西 勇夫・ 福西 朱美著)

忘れっぽい、集中力が続かない、意欲がない、落ちつきがない、衝動的・・・。

本書は、こんな目が離せないADHDの子どもを持ったママやパパなどを対象に、トラブルを回避するためのノウハウをまとめた漫画です。

著者は、豊富な臨床経験をもつ精神科のドクター。

日米の医療機関での研究や実際のADHD患者が行って効果のあった取り組みなどの豊富な事例が紹介されています。
 

『私もADHD!』(http://webcomics.jp/mynavi-news/adhd)

ウェブにアップされているADHDの悩みを抱えたOL・水谷真帆を主人公にした4コマ漫画です。

最新のもののテーマは以下の通りです。
・第70回 田舎への移住
・第69回 薬を使い始めてからの生活
第68回  宴の後
 
1週間ごとに更新されていましたが、70回をもって終了し、来年から新しい連載が始まるそうです。
著者モンズースーさんは、ADHDの当事者ですが、二人のお子さんも発達障害グレーゾーンだということです。
 

『めざせ!ポジティブADHD』(アーサー著)

著者のあーささんが、自分がADHDと気づいたのは21歳の時でした。
気づいてみると、それまでの生きづらさや違和感も、そうだったのかと納得。
そこで、ADHDに悩む人たちのために、得意の漫画で、ADHDについての解説本にまとめたのが本書です。
主人公の「あーさ」とその相棒「あかし」が織りなす成すギャグによって語られていきますが、本書のコンセプトは「おもしろい」「わかりやすい」「元気が出る」です。
当事者ならではの実用的な改善策は、ポジティブ思考のオンパレードです。
ちなみに、ポジティブ思考というのは、起こった不都合な出来事でも、前向きに捉えて、くじけずに前向きにチャレンジする考え方です。
 

『私ってADHD脳!?』(司馬里英子著)

28歳の雑誌編集者里子を主人公にした物語風の解説と対策本。
彼女は、締め切りが守れない編集者で、机の上はぐちゃぐちゃです。だから、企画や原稿には定評があるのに、遅刻や凡ミスを繰り返し後輩にも先を越される始末・・・。ところが、ある日、ひとりの精神科医と出会い、1冊のノートを手渡されます。そこには、ADHDの特徴と対人関係の対処法が記されていました。
 
著者は、精神科医で医学博士の司馬里英子さん。自身もADHDで、アメリカでADHD児の子育てを経験されています。

自閉症スペクトラム障害(ASD)

自閉症スペクトラムとは、自閉症やアスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害など
を含む概念です。自閉症やアスペルガー症候群などには互いの境界線を引くのは極めて厳しいこともあり、病気の一連の続きとして「スペクトラム」として捉えられています。
この中のアスペルガー症候群とは、知的障害を伴わない自閉症のことで、高機能自閉症と呼ばれることがあります。
 
自閉症スペクトラムでは、臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心・やり方・ペースの維持を最優先させたいという本能的志向が強いのが特徴です。
ただし、置かれた環境によっては、自分の関心を押し通す本能的な志向が幸いして、実績につながり、高く評価されることもあります。
しかし、不適切な環境では、人間関係をうまく築くことができず、自閉症スペクトラム「障害」に悩むことになります。
 

『光とともに』(戸部けいこ著)

月刊の女性漫画雑誌に連載され、話題になった作品です。
自閉症の子供を抱える親や施設関係の人への丹念な取材をもとに、自閉症の子供を持った母親が困難に立ち向かい、現状を肯定して生きていくさまが描かれています。
主人公がヒロイックに描かれているわけではなく、着実に地道にひとつひとつの困難をクリアし、最後に「光」を見出す感動が描かれています。

本書は、2004年、文化庁メディア芸術祭マンガ部門で最優秀賞を受賞し、同年4月には日本テレビで化されました。残念なことに著者は2009年病にたおれ、翌2010年満52歳の若さでお亡くなりになりました。
 

『僕はアスペルガー症候群(漫画:そろ、監修:長谷川知子)

アスペルガー障害者の小学校から大学時代までを追ったコミック・ストーリー。

主人公木村辰典クンは、「僕は天に選ばれた特別な存在。人とは違う!」と思い込み、不可解な言動を行います。
しかし、周囲に受け入れられず、辛い思いを抱えて生きています。
そのうち、正しい診断を受け、適切な対応を学んだ結果、社会と折り合って生きるすべを学びとっていきます。
監修者の長谷川知子さんは、日本の代表するような絵本作家で、『ひつじぐものむこうに』(あまんきみこ作)、『兎の眼』(灰谷健次郎作)、『教室はまちがうところだ』(蒔田晋治作)などがあります。
 

『毎日やらかしてます。アスペルガーで、漫画家で』(沖田 ×華著)

漫画家であると同時に、アスペルガー症候群、学習障害、注意欠陥多動性症候群をあわせもった著者の手になる障害者目線で描かれたコミックエッセイです。
本の構成も、「アスペルガー編」、「注意欠陥/多動性障害編」、「学習障害編」と3部構成になっています。
障害者特有の考え方、振る舞いなどを、ゆうメンタルクリニック代表の精神科医ゆうきゆう先生がわかりやすく解説するというスタイルになっています。

なお、著者の名前「×華」は、「Bakka」と読むそうです。
 

学習障害(LD)

全般的な知的発達には問題がないのに、読む、書く、計算するなど特定の事柄のみが不得手という障害です。
学習障害の中にディスレクシア(発達性読み書き障害)というのがあります。知的能力や一般的な理解能力などに特に異常がないにもかかわらず、文字の読み書き学習に著しい困難を抱える障害です。
 

『うちの子は字が書けない』 (千葉リョウコ著)

フユ君は、小学2年生になってもなかなか字が書けるようになりませんでした。ノート1ページの漢字練習に1時間もかかります。テストの点もとれません。
まわりからは、ただ“勉強ができない子”と思われていました。
ところが、たまたま参加した講演会をきっかけにディスクレシアのことを知ることになります。
その結果、フユ君の苦手の正体がわかり、賑やかで、温かい家族のサポートに支えられて母子二人三脚で、トレーニングに励み、障害を克服していきます。

このほか、成長の段階に合わせた誤解やつまずき、学校の対応、感じたことや交渉した内容、フユくん自身の反応や意見なども丁寧に描かれています。
 

発達障害の人たちへの応援歌

発達障害は、個人差の大きい障害です。
また、障害者が置かれている環境や症状の軽重によっても障害のあらわれ方はさまざまです。
ですから、発達障害者のすべての人に適用できるようなマニュアルは作るのが難しいということにもなります。

ここに紹介した漫画は、個別的な事例です。
しかし、個別事例の中から応用できそうなヒントを見つけることや、漫画という具体的な現場のシーンを見ることで、現実的な対応策を思い描くことも可能でしょう。
そして何より、障害者目線に立って描かれた分かりやすい物語を読むことで、共感と勇気を得ることができます。

なにしろ、これらの漫画は障害者への応援歌でもあるのですから。