うつ病で休職中・療養中の人と家族がやってはいけない5つの行動


やってはいけないことその1:手軽に励ましてはいけない

厚生労働省の「患者調査」によると、うつ病などの気分障害の総患者数は100万人を超えました。平成11年の44万人と比較すると2.5倍に増えています。このうち63%が女性です。
また、「患者調査」は、医療機関にかかっている患者数の統計データです。うつ病患者の医療機関への受診率は低いことがわかっており、実際にはこれより多くの患者がいることが推測されます。
私たちの周りには、うつ病に苦しんでいる人たちがたくさんいます。

気分が落ち込み、意欲さえ失われるというのがうつ病の症状です。
会社の親しい仲間の一人が、うつ病で苦しんでいるのを見ると、ついつい、「がんばろうよ」、「あなたならできるはずだよ」と励ましてやりたくなります。
この励ましの言葉かけに悪意はありません。友人に良かれと、と思う善意から出た言葉です。
しかし、ことうつ病に関しては、善意からで励ましや叱咤激励は、やってはいけないことの最たるものです。

うつ病は頑張っていないからなる病気ではありません。勿論、頑張れば治る病気でもないのです。頑張っていないわけではない人に頑張れと声をかけるのは、ある意味で残酷な仕打ちです。
励まされた当人は、その言葉が善意から出たことを知っているだけに、頑張れない自分を責めて、余計につらくなります。

やってはいけないことその2:気晴らしに誘ってはいけない

うつ病になると、家に引きこもりがちになります。そんな友人をみていると、仕事を忘れて、気晴らしにどこかへ誘ってみよう、と思うのも友人としてのごく当たり前の人情です。
「気晴らしにドライブでも行こうよ。」
「ずっと家に居たって良くならないよ。」

でも、この善意の誘いも、うつ病患者には「やってはいけない」ことの一つです。
うつ病は、心身とも消耗しきった状態です。
外に出る。他者に会う。気を遣うなど外出することは刺激のオンパレードだということを普通の人は気づきません。
うつ病になって初めて(刺激に弱くなって初めて)、「外出ってこんなに大変なのか。」とわかるものなのです。
また、風呂に入る事はもちろん、歯を磨くことさえ億劫になるのがうつ病です。
ドライブに出かけるなんて、うつ病の人からみれば、苦役に等しいお誘いなのです。

いずれにしろ、うつ病で休職状態の人が外出するということは、それだけですごいエネルギー消耗なのです。エネルギーがないときに、わざわざエネルギーを消耗することは治療の妨げになるということを肝に銘じておきましょう。

やってはいけないことその3:素人に相談してはいけない

以上は、うつ病患者さんにとっての友人や家族など周りの人たちがやってはいけないことですが、以下は、ひょっとしたら自分はうつ病かな、と自覚せざる得なくなった人やうつ病で治療中の人のやってはいけないことです。

うつ病は、「心の風邪」とも言われることがあります。
ガンや心臓の疾患などの身体的な大病と違って、入院するまでもなく、みんながかかる風邪のようなもので、自力で直せるという思いがちです。

そこで、ついつい気を許した周りの人に相談しがちです。
すると、相談された方も、友人のために良かれと思って、激励し、アドバイスをしたりすることになります。
ここがクセモノです。

素人判断というのは、専門的な知識のない人が、自分の経験や考えに基づいて下す判断で、誤った判断になりがちです。
うつ病の人が相談すべき相手は、精神科の医師です。
きつい言い方になりますが、素人には、相談しない方が身のためです。

精神科医は精神科薬を処方してくれるだけではありません。
精神疾患の中には薬の処方をしない疾患も数多くあります。
同じうつ病でも、休職の有無に関わらず、薬を処方する場合としない場合があります。処方する薬がないからといって受診しないという選択はやめましょう。

精神科医(主治医)は、うつ病の患者さんにとって、最良の相談相手です。
復職のタイミングだけでなく、自宅での過ごし方や困っていること何でも相談にのってもらえます。薬がなくても相談相手として関係を築いておくことはとても重要です。

休職したからといって必ずうつ病が良くなるとは限りません。
ストレスを避けて休職していても悪化する場合があります。その時には悪化を判断してくれる相手が必要です。

誰かと一緒に生活していたとしても素人目では些細な変化をみつけられない場合があります。症状や日常生活の変化を診察時に再確認することで悪化に気づく場合もあるのです。例えば希死念慮が出てしまったり、飲食もできないほど衰弱してしまったりすると自宅療養が難しいとなる場合もあります。

入院の必要性を判断してもらうという意味でも、専門的な知見とたくさんの事例を経験している主治医こそ、最適の判断をしてくれる相談相手です。

やってはいけないことその4:頑張ってはいけない

心因性のうつ病の場合は、引き金となっているのはストレスですから、ストレス環境から離れて、休むことが治療の第1歩です。
ところが、うつ病になる人の多くは、きまじめで、休むことに抵抗感や罪悪感を持っていて、何とかがんばって休まないようにしようと思いがちです。
うつ病が病気であることを理解し、医師に休むことを勧められた場合は、思い切って休職するということも考える必要があります。

うつ病治療に限らず、精神疾患の多くは「1に休息、2に休息。3,4も休息、5に休息」です。勿論、活動を促していなくてはいけない時期もありますが、安定期でなければ休息が最重要事項です。
「働き詰めから、急に休むと落ち着かない。」
「休んでいるとなんか申し訳ない。こんなのでいいのかと思う。」
このような健気な気持ちは、気持ちだけで十分です。。
とにかく、「1に休息、2に休息。3,4も休息、5に休息」を実行しましょう。
罪悪感を捨てられるかどうかがあなたの治療に影響を与えます。
だったら捨ててしまうという覚悟を固めましょう。

やってはいけないことその5:病院に行くことを躊躇ってはいけない

風邪をひいた、熱が出た、お腹がいたい、と言うとき、時間の余裕さえあれば、ごく素直にクリニックや病院に出かけていきます。
しかし、精神疾患にかかっているように自覚されたときの病院の敷居は、かなり高いようです。

うつ病の場合も例外ではありません。
何故でしょうか。
いろいろな理由が考えられますが、その中のひとつに、判断の結果を恐れる、ということがあります。
休学・休職という判断を下され、自分が瀬戸際に立たされているという感じに襲われるからです。その現実をみるのが怖い・・・。

これは間違った感性ではありません。
しかし、選択を迫られれば迫られるほど、瀬戸際であればあるほど、素人判断を放棄して、専門医に判断を委ねるべきです。
そうして、いち早く決断し、専門的な治療に取り組むことが、うつ病の克服にとってもっとも賢明な対策であること忘れないようにしてください。