統合失調症の急性期、慢性期とは?病期別の特徴と治療方法


統合失調症の症状は、急性期と慢性期に分けられます。急性期では、幻覚や妄想などの陽性症状(後述)があらわれ、症状が安定してくる慢性期になると、陰性症状(後述)があらわれてきます。当然、治療法も違ってきます。

今回は、急性期と慢性期をキーワードに統合失調症の治療について説明します。

目次

急性期と慢性期の違い

急性期と慢性期

これは統合失調だけではなく、広く病気一般について使われる医学用語です。急性期とは、症状が急激に現れる時期のことを指します。病気になり始めの時期と言ってもいいでしょう。

慢性期とは、病状は比較的安定してきているが、完全に治っているわけではなく、治療が続いている時期のことです。慢性期では、再発を予防すること、また身体機能の維持・改善を目指すことを基本に長期的な治療が行われます。

急性期と慢性期の簡単比較

急性期

時期:病気の症状が出始めたころ
期間:比較的短め
症状:激しい症状が出る

慢性期

時期:急性期の症状がおさまってきたころ
期間:比較的長め
症状:比較的に安定している

急性期病院と慢性期病院

急性期と慢性期では、このように症状がかなり違っています。当然、治療法も異なり、病院も急性期の病院と慢性期の病院に分かれています。

急性期病院は、激しい症状を伴う急な病気や事故などによるけが、持病が急に悪化して緊急に治療が必要になったという患者を受け入れて、入院や手術、検査などの高度の専門的な治療を行う病院です。

救命、救急、急性期の症状の治療などを行うのが急性期病院です。ある程度の治療ができたら、後は慢性期病院に送られます。慢性期病院は、急性期病院から治療を引き継ぎ、症状が急変しない限り命の危険がない状態の患者を受け入れ治療を行います。

また、継続的な治療のほか、退院して家や職場に復帰するためのリハビリやケアなども行います。ただし、両方の機能を備えた病院もあり、その場合は、同じ病院内で急性期と慢性期で病棟がわかれているのが一般的です。

精神疾患の急性期、慢性期

けがや急病などの症状に対して使われる「急性期」という言葉はイメージしやすいと思います。「慢性期」の方も、持病が慢性化した、など聞きなれています。

では、精神疾患における急性期とは?幻覚や妄想で暴れたり、自傷他害の危険な症状があらわれるのが、精神疾患における急性期です。こうした急激な症状が収まったものの、感情が乏しくなり、意欲も減退し、だらだらとした無関心な状態になっていくのが慢性期です。

急性期の統合失調症

急性期の統合失調症では、陽性症状があらわれます。激しい症状なので、薬物療法によって症状を抑えることを主眼とした治療が行われます。このほか、治療の一環としてゆっくり休むことも求められます。

症状

急性期にあらわれる陽性症状とは、幻覚・幻聴、妄想、思考の混乱、異常な行動などをさします。中でも、幻覚と妄想は、統合失調症・急性期の代表的な症状です。幻覚・幻聴とは、誰もいないのに人の姿や人の声が聞こえてくるとか、誰かが自分の悪口をいっているとかを訴える症状です。

妄想とは、あり得ないような誤った内容(事実)を信じてしまい、周りが訂正しようとしても受け入れられない症状です。要約すれば、本来はないものがあるように感じる症状といってもいいでしょう。

このほか、「敵が自分を襲おうとしている」)とか、「スパイが自分を追っている」)とか、「みんなが自分をそれとなく見ている」などの被害妄想もあらわれてきます。

治療

急性期の治療は、抗精神病薬による薬物療法を中心に進められていきます。統合失調症の治療に用いられる薬物を「抗精神病薬」は、神経遮断薬とも呼ばれますが、これは精神に作用する薬で、その作用は大きく3つにまとめることができます。

・幻覚・妄想・自我障害などの陽性症状を改善する抗精神病作用
・不安・不眠・興奮・衝動性を軽減する鎮静催眠作用
・感情や意欲の障害などの陰性症状の改善をめざす精神賦活作用

経過

統合失調症の症状は、前兆期、急性期、休息期、回復期の経過をたどるのが一般的です。前兆期は、文字通り、発症の前触れとしての症状が現れる期間で、不眠、集中力の低下、イライラするなどの情緒の不安定がみられます。

急性期では、不安や緊張感、敏感さが極度に強まり、幻覚、妄想、興奮といった統合失調症特有の陽性症状があらわれてきます。ところが、本人は何かがおかしいと薄々感じていても、病気だと思っていないので、周りの人には不可解な言動が目立ってきます。急性期の期間は、人によってことなりますが、およそ数か月単位です。

急性期から慢性期に変わる

急性期の激しい症状が収まると、症状が一転して慢性期の特有の症状があらわれてきます。急性期が終わったからといって、治ったのではなく、まだ病気の途中だということを忘れてはいけません。

慢性期の統合失調症

急性期が過ぎたあとの休息期、回復期(慢性期)の後にでてくる症状が陰性症状です。慢性期の治療は、薬物療法と並行して認知療法や社会復帰に向けたリハビリなどが行われます。

症状

慢性期にあらわれる陰性症状とは、感情や意欲や集中力が低下した症状です。喜怒哀楽が乏しくなり、だらだらとした無気力、無関心状態に陥ります。

一方で口数も少なくなり、思考力が低下して、会話がなりたたなくなってきます。急性期の症状にくらべると、一見穏やかな症状ですから、傍から見ると、単に怠けているだけのようにもみえますが、まだまだ病気の途中だと理解してあげることが重要です。

治療

慢性期になると、薬物療法のほかに患者の社会生活をサポートする心理社会的療法や認知行動療法などが行われます。デイケアにおける社会復帰のための訓練も慢性期の治療の一環です。

経過

嵐のような急性期の症状が収まると、休息期とも呼ばれる時期に入ります。この時期は、感情や身体のエネルギーが不足しているためにもたらされた外見的には穏やかな時期です。しかし、まだ不安定な精神状態にあり、ちょっとした刺激が誘因となって、急性期に逆戻りしやすい時期でもありますから、注意が必要です。

こうして、回復期とよばれる時期を迎え、徐々に治っていき、入院生活から自宅療法に切り替わり、家族や周りの人のサポートで社会復帰を目指すことになるのです。

やがて、症状が落ち着き、陽性症状も陰性症状も消えいきます。しかし、統合失調症は再発しやすい病気ですから、服薬は続けて行きます。

投薬の継続

慢性期から薬の量は減ってきますが、予後の維持量というのが指示されるはずです。この服薬を中断すると、1~2年以内にかなりの効率で再発する危険があります。

統合失調症は、再発の危険がある病気なので、長期間にわたって服薬を続けることが重要です。服薬の期間は、初発の人で1年、再発・多発の人で5年が目安とされています。

勝手な服薬禁止は厳禁

予後も医師の指示に従って、規則正しく服薬を続けるというのが、統合失調症を直すための原則です。ところが、中には服薬をサボって、再発し、病院に舞い戻るというケースも少なくありません。

といって、服薬はずっと続けるというものではなく、医師が判断すれば服薬は止まります。ですから、自分の判断で勝手に中止することのないように肝に銘じておいて欲しいものです。

統合失調症は治る病気

統合失調は不治の病ではありません。症状がおさまったあとも長い服薬期間がありますが、きっちりと薬を飲み続ければ、十分直しうる病気です。

精神分裂病という恐ろしげな名前で呼ばれていた時期には、この病気にかかると人柄が変わるとか、不治の病、などといった誤った言説が流布していました。

長期の予後を追った研究報告によると、軽度の障害を残すのみというケースが50~60%で、重度の障害を残す場合は10~20%であるとされていました。

しかし、医療技術の進歩で新しい薬の開発が進み、心理社会的ケアも充実してきています。楽観は禁物ですが、病気と向き合って、治療を怠らずに取り組めば、道は開けてきます。

参考:
厚生労働省[みんなのメンタルヘルス]
統合失調症ナビ


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