特別支援学校とは?学習指導要領や入学条件はどうなっている?


 障害のある子どもを持つ親は、子どもが大きくなるにつれて、進路をどうするかという問題に直面します。特別支援学校は、こうした心身に障害のある児童・生徒を受け入れてくれる学校です。

 今回は、この特別支援学校をテーマに、学習の内容や就学条件などについて解説します。

目次

通級、特別支援学級、そして特別支援学校

 通常の学校に就学することに不安があると思われる場合の選択肢として、①通級、②特別支援学級、③特別支援学校の3つのコースがあります。

 まず、それぞれのコースについて見てみましょう。

通級

 比較的に障害の程度が軽いケースの選択肢の一つです。通級とは、通常学級の学校に籍を置いて、通級指導の時間のみ通級指導教室に通って支援を受けるという制度です。在籍する学校に通級指導教室が無い場合は、通級指導教室がある他の学校に通って通級指導を受けることになります。

 担任は通常学級の先生が受け持ちます。ですから、学習面では通常学級の授業を受けることになります。また、通常学級の子どもとの交流もあるというメリットもあります。

特別支援学級

 特別支援学級に通う場合は、特別支援学級が設置されている学校に籍を置きます。ちなみに、特別支援学級を設置している小学校の割合は76.6%、中学校は73.7%と、ほとんどの小・中学校が特別支援学級を設置しています。

 基本的に特別支援学級で授業を受けますが、体育や図画工作、給食の時間は通常学級の子どもたちと過ごすこともあります。担任は特別支援学級の先生が受け持ちます。障害の程度に応じた学習が受けられると同時に、状況に応じて通常学級との行き来が出来るというのが特別支援学級のメリットです。

特別支援学校

 2007年までは、「ろう学校」「盲学校」「養護学校」と呼ばれていた学校ですが、同年の法改正で、「特別支援学校」へと一本化されました。今でも学校名の末尾が「ろう学校」「盲学校」「養護学校」となっている学校も多くありますが、これらは現在すべて特別支援学校に含まれます。

 特別支援学校(幼稚部・小学部・中学部・高等部)に通う場合は、通学する特別支援学校に籍をおきます。

 通級・特別支援学級は通常の教員免許のみでも受け持つことができますが、特別支援学校の教員は通常の教員免許に加え、特別支援学校の教員免許を取得しています。つまり、専門性を持った先生から、障害児童・生徒の立場に立ったキメの細かい指導が受けられるということです。

 授業は、基本的には幼稚園、小学校、中学校または高等学校に準じた教育を行っていますが、それに加えて障害のある児童・生徒の自立を促すために必要な教育を受けることができるのが大きな特徴です。

特別支援学校に入学するには

 特別支援学校に入学するためには、「就学基準」と呼ばれる要件が設けられています。なお、就学基準に該当していても就学先が特別支援学校に限られることはなく、その他の進学先も検討することができます。

就学基準

 それぞれの障害に対して設けられている就学基準を表にまとめてみました。なお、障害の程度が就学基準に達しない子どもについては、先に触れた特別支援学級か通級による指導を受けるか、通常の学級に在籍して支援を受けることになります。

 特別支援学校の就学基準

視覚障害者・両眼の視力がおおむね0.3未満のもの。
・視力以外の視機能障害が高度で、拡大鏡等の使用によっても通常の文字、図形等の視覚による認識が不可能または著しく困難な程度のもの。
聴覚障害者 ・両耳の聴力レベルがおおむね60デシベル以上で、補聴器等の使用によっても通常の話し声を解することが不可能又は著しく困難な程度のもの。
知的障害者・知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度のもの・知的発達の遅滞の程度が前に掲げる程度に達しないもののうち、社会生活への適応が著しく困難なもの。
肢体不自由者・肢体不自由の状態が補装具の使用によっても歩行、筆記等日常生活における基本的な動作が不可能または困難な程度のもの・肢体不自由の状態が前に掲げる程度に達しないもののうち、常時の医学的観察指導を必要とする程度のもの。
病弱者・慢性の呼吸器疾患、腎臓疾患及び神経疾患、悪性新生物その他の疾患の状態が継続して医療又は生活規制を必要とする程度のもの・身体虚弱の状態が継続して生活規制を必要をする程度のもの。

発達障害の場合

 発達障害のある子どもの場合、知的障害の診断がなくても、就学相談の結果によっては特別支援学校への入学は可能です。

 秋田大学によるアンケート調査によると、回答があった313校の特別支援学校のうち45.0%にあたる141校に発達障害のある子どもが在籍していました。

 詳しくは、各自治体の「特別支援教育推進室」にお尋ねください。
<東京都の場合:東京都特別支援教育推進室 03-5228-3433>

特別支援学校では何をどのように学ぶのか

 特別支援学校では、幼稚園、小学校、中学校、高等学校に準ずる教育を行うとともに、障害に基づく様々な困難を改善・克服するために、少人数による障害ごとの個別指導が行われています。

学習指導要領に準じた教育

 学習指導要領とは、全国のどの地域で教育を受けても、一定の水準の教育を受けられるようにするため、文部科学省が定めた教育課程(カリキュラム)の基準です。

 これを「学習指導要領」といいますが、特別支援学校では、この学習指導要領に準じた教育が行われます。

専門の先生に少人数の指導

 特別支援学校の特色は、1クラス当たりの人数は平均3人で、少人数によるキメの細かい学習指導が行われるということです。

 特別支援学校の先生は、通常の教員免許に加えて特別支援学校の教員免許を持っている先生たちたちです。つまり、障害児童・生徒に対して専門的な知識をもった先生が、子どもの障害や発達の度合いに合わせたきめ細やかな指導を行っていきます。

障害ごとの個別指導

 特別支援学校では、障害ごとの特別な支援学習が行われるということです。

 以下、その要点をまとめてみました。

 【視覚障害の場合】

・小・中学部では、よく触って物の形や大きさなどを理解したり、音やにおいなども手がかりとして周りの様子を予測したり確かめたりする学習や点字の読み書きなどの学習をします。

・また、白杖を使って歩く力やコンピュータなどで様々な情報を得る力を身に付けるための学習も行っています。

・高等部では、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、理学療法士などの国家資格の取得を目指した職業教育を行われます。

【聴覚障害の場合】

・小・中学部では、書き言葉の習得や抽象的な言葉の理解を目指し、発達段階に応じて指文字や手話を活用するなど、自立活動の指導にも力が注がれています。

・高等部では、産業工芸や機械、印刷、被服、情報デザイン等の多様な職業学科が設置されています。

・最近では、聴覚障害者・視覚障害者の方を対象とした国立大学である筑波技術大学などへの進学を目指す指導や理容師、歯科技工士、調理師などの資格を取得して職業の自立のための指導も行われています。

【知的障害の場合】

・言語、運動、知識などの発達の状態や社会性を把握したうえで、生活に役立つ内容を実際の体験を重視しながら、少人数の集団での学習を行います。

・小学部では、基本的な生活習慣や日常生活に必要な言葉の指導を行い、中学部では集団生活や円滑な対人関係、職業生活についての基礎的な事柄の指導などが行われています。

・高等部では、家庭生活、職業生活、社会生活に必要な知識、技能、態度などについての学習が中心ですが、このほか木工、農園芸、食品加工、ビルクリーニングなどの作業学習を実施し、特に職業教育の充実が図られています。

【肢体不自由の場合】

・中心となるのは、自立活動です。身体の動きの改善を図ることやコミュニケーションの力を育てる指導などを行っています。

・医療的ケアを必要とする子どもが多いことから、医療との連携を大切にした教育が進めてられています。

・高等部では、進路指導に力をいれています。会社やや社会福祉施設と連携し、卒業後の生活を具体的に体験できるような実習が積極的に取り入れられています。

・最近は福祉施設への入所が多くなっていますが、企業に就職したり大学に進学したりする生徒もいます。

【病弱の場合】

・小学校、中学校、高等学校とほぼ同じ教科学習が行われます。

・自立活動の時間では、身体面の健康維持だけでなく、病気への不安感や自信の喪失などに対するメンタル面での健康サポートも行っています。

・治療等で学習に空白がある場合は、グループ学習や個別指導による授業が行われます。病気との関係で長時間の学習が困難な子どもについては、学習時間を短くするなどして柔軟に学習できるような配慮がされています。

自立活動

 さまざまな障害を抱え込んだ子どもたちが将来自立できるような知識やマナーやスキルを修得させる、というのが特別支援学校の使命です。そのために、自立活動という枠が設けられています。

 自立活動には、上記に列記した通りですが、まとめると、①健康の保持、②心理的な安定、③人間関係の形成、④環境の把握、⑤身体の動き、⑥コミュニケーションの能力の向上ということになります。

それぞれの選択

 障害をもつ子どもにとって、どういう進路が望ましいのか。子どもが学齢期を迎えると、進路選択に悩む親が少なくありません。出来れば、通常学級に進ませたい、でも、いじめの心配はないだろうか。この子の場合、通常学級はとても無理。じゃ、どんな進路があるのか。

 親の悩みは、子ども障害の程度や性格、環境などによって、さまざまですが、はっきりしている共通の願いは、この子にとって学校が、のびのびと学べる場であって欲しいということです。

 今回は、その際の最良の選択ができるための参考なればという思いで、まとめてみました。

 百聞は一見にしかず、ともいいます。特別支援学校では、見学会や説明会を行っているところもあります。また、文化祭などのイベントに行くことでも雰囲気や様子をつかむことができます。こうした学校訪問も最良の選択に大いに役立つはずです。