子供がスマホを見て夜寝るのが遅い!取り上げると癇癪を起こす子供にどう接する?


この記事を読むとわかること
  • 反発されにくい家庭内のルール作りがわかる
  • 応用行動分析学を用いたお子さんの行動の変え方がわかる

目次

反発されにくい家庭内のルール作りとは

 前回の記事で、スマホの普及や電気などにより睡眠に影響が出るような社会事情や、睡眠のメカニズム、なぜ不眠になるのか、不眠になるとなぜいけないのかを説明してきました。ですが、いくら原理や影響をわかったとしても、家族全体の日常生活を大きく変えることは難しいです。ですので、まずは家庭内のルール作りから始めることをおすすめします。

 今回はスマホによる影響というテーマを用いているため、スマホに関するルール作りを例に考えていきます。

ルールは守れそうなものを本人と相談して決める

 子どもの行動を制限することは、これは家庭内のルールだけに留まらず、社会全体も影響を与えることです。「ゲームが進まないと、仲間外れにされるかもしれない。」「返事を返さないと、仲間外れにされるかもしれない。」など家庭内だけのルールで済ませるには難しい問題です。

 親が子の成長だけを考えて、頭ごなしに指示しても解決する問題ではないところが難しいです。高学年にもなれば十分理解はできますので、まず得た知識を説明すること、そのうえで、守れそうなことを一緒に相談してルール作りをすることが大切です。一緒に親の心配を正直に伝えることも重要です。元気に育ってほしいという愛情に勝る説得はありません。

不眠はすぐには解決しない、ルールはすぐにやめない

 前述したとおり、ブルーライトをカットすれば、それによるメラトニンの減少は防ぐことができますが、ブルーライト以外でもメラトニンの量は減少していきます。不眠を解決することは容易ではありません。一つずつ生活を直していく地道な作業が必要なので、改善がみられなかったからといって、効果がないと決めつけ、ルールを元に戻してしまうと、せっかくブルーライトをカットできたのに、意味がありません。これではいつまでも不眠は解決しません。

どういうルールにするべきか

 ルールの決め方はご家庭によってさまざまです。極論を述べてしまえば、「〇時になったらWi-Fiルーターの電源を切る」というルールにすれば、夜間の利用は減らせるでしょう。ですが、これに納得してもらえるお子さんは少ないと思います。どの程度の制限であれば守ってもらえるかは親御さんが一番把握されていると思います。どれがいいという話は出しませんが、例をいくつか紹介します。中から守れそうなものを選んでみてください。

例1.ディスプレイを見てもいい時間は朝にする、夜〇時以降は使わない

 ただ禁止にすると難しいので、使うなら夜ではなく、朝であればいくらでもしていいというルールにするのも手です。光を避ける時間帯は、理想は夕方からです。太陽の光が沈むとともに、ブルーライトなどの光刺激も避けていくことが理想です。しかし現実は難しいため、現実的な時間を提示していきましょう。

例2.夜間モードを使用する

 これはスマホやパソコンの設定ですぐにできます。ブルーライトをカットする機能ですので、これであれば守れるお子さんも多いのではないでしょうか。カットできる量も設定できますが、できるだけ多い量をカットすることが望ましいとされています。過去の研究では、夜間モードの利用により、メラトニンの分泌抑制を最大93%削減することができたという結果もあります。

例3.ブルーライトカットの眼鏡を利用する

 少しコストがかかってしまいますが、ディスプレイを見る際には、ブルーライトカットの眼鏡、伊達眼鏡を着用させるというのも手です。夜間モードの付いていないディスプレイ、テレビなどにも効果がありますので、検討の余地はありかと思います。

 ただし、ブルーライトカットの眼鏡よりも、夜間モードの方が効果的という研究結果もありますので、眼鏡を過信しすぎるのもよくはありません。

例4.リビングや寝室の照明を調整する

 お子さんに、すぐには必要性を理解してもらえなくても、親御さんの意識を変えれば、家族全体に波及していくことも考えれます。家族の過ごす場所の照明を19時以降は暖色の暗めに設定するなど、全員で取り組む姿勢を見せることで、本人のやる気も出てくるかもしれません。

こどものやる気は突然湧く

 子どものやる気というのはよくわからないところで突然として沸くものです。感受性豊かですので、友情や恋愛など、ちょっとしたことがきっかけで、突然猛烈に勉強しだしたり、ちゃんと学校に行きだしたりします。もっとも、親が介入したときにやる気がちょうど湧くなんてことの方が少ないでしょう。大切なのは知識を与えておくこと。なぜダメなのか、どうするといいのか知るきっかけを与えて、いつからやり始めるのかは、子どもに託すというのも手です。完全放置はよくなく、ちょっとした小突きは必要かもしれませんが、親御さんが、他人のタイミングで、お子さんが行動を始めることは少ないと認識しておき、達観して見守ることも大切です。

応用行動分析学を用いて、お子さんの行動変容を促す

 ルール作りだけではなく、作ったルールを守らせるということが最重要になります。そこで、応用行動分析を用いて、お子さんへの関わり方も工夫してみましょう。

応用行動分析とは

 応用行動分析学は英略してABAとも呼ばれます(以下、ABA)。本来発達障害の子どもへ行動の変化を促すためのものとして研究されていますが、どのお子さんにも応用は可能であると考えています。

ABAの原理とは

 まずはABAの原理から説明していきます。ABAは、人の行動は、その後に生じる結果(ご褒美や嫌なこと)によって、その行動の増減が決まるという法則があるという原理を用いた介入方法です。簡単に言うと、人の行動は、「①褒められるからその行動をする(強化)」、「②褒められないからその行動をしない(消去)」、「③叱られるからその行動をしない(弱化)」の3つに分類されるということです。

 つまり、好ましい行動を増やしたいのであれば、①の原理を使って、その行動に対して、褒める、ご褒美(強化)を与えると、行動は増え、維持される。問題行動をやめさせたいのであれば、②の原理を使って、その行動に対して、褒めない、ご褒美を与えない(消去)と、行動は減ります。③の原理「叱られるから行動をしない」は、叱るや注意する(弱化)というのは、罰になってしまいますので、基本的には選択しません。あくまで最終手段としての位置づけとします。順序としては、まず①強化と②消去を用いて対処していくことになります。

 まとめますと、①は本人にとってプラスとなる結果が得られる(強化)、②の消去は本人にとってプラスとなる結果が得られない、つまり0になる(消去)、③は本人にとってマイナスとなる結果が得られる(弱化)ということです。

ABAをどうやって使うのか

 まずは問題行動、減らしたい行動を明らかにしましょう。今回の場合は、「〇時以降にスマホをいじる」というのが減らしたい行動です。この場合に、①と②の原理を使って、介入方法を検討してみましょう。

 ABAは児童発達支援・放課後等デイサービスのOnlyOne足立(東京都足立区)で受けられます。お近くの方は是非ご相談ください。

ABA(応用行動分析)

その行動を強化している結果(強化因子)を考える

 人は「好ましいこと」「褒美」の結果があるからその行動を増やすと説明しました。それが強化因子です。つまり、お子さんは「〇時以降にスマホをいじること」で何らかの「好ましいこと/褒美」を受け取っているため、その行動を減らさないということが言えます。

 まずはこの「好ましいこと/褒美」は何なのかを探っていきましょう。そのためにはしっかりとコミュニケーションを図る必要があります。親御さんの腕の見せ所です。

 ここでは仮に、お子さんの好ましい結果は「ゲームのレベルが上がる」ことだとしましょう。ゲームのレベルが上がることは嬉しいことですので、本人にとってとても好ましい結果が得られています。すると、沢山ゲームをします。
つまり、この例では、ゲームのレベルが上がるという結果が「〇時以降にスマホをいじること」の行動を強化していると言えるのです。

この状況をどう解決するのか

 「〇時以降にスマホをいじると、ゲームのレベルが上がらない」状況になればいいのです。であれば、「〇時にゲーム(スマホ)をやめれば、朝〇時間やってもいい、放課後〇時間やってもいい」など、夜のゲームをやめたほうが、ゲームのレベルが上げられる状況に切り替えてあげるといいでしょう。それは別のご褒美に置き換えても構いません。〇時にスマホを使わないルールを守っていれば、本人にとって好ましい何か(ご褒美)を与えることを繰り返すと次第にその問題行動は減っていきます。ルールを守ったほうが得だという状況を作り出すことがポイントです。

本人にとって好ましい状況が得られない(消去)

 これはその行動を起こすと、本人が利益を受けられない状況を作ることです。②の消去にあたり、プラスを0にするということです。今回の場合は、「〇時にゲームをやめたのに」、「ゲームのレベルが上がらない」という状況にしてしまうということです。この状況を作ってしまうと、行動は減らせなくなってしまいます。例えば、「夜スマホを使わなかったのに、昼間も使わせられなかった」などがあります。こうなると行動は減らなくなってしまいますので、本人のご褒美をしっかり確保することが重要です。

ルールを守って当たり前と考えるとうまくいかない

 消去の応用で、ルールを守っていることが当たり前になってしまうと、そのことに対する褒めをつい忘れてしまいがちです。そうすると、本人への強化因子がなくなってしまうため、褒められない、得がない状況では、本人の問題行動は増えてしまいます。ルールを守っていることが当たり前(平常運転)ではうまくいかないことを覚えておきましょう。

それでも駄目なら奥の手

 ③の弱化を使います。本人にとって不利益を被る状況を作り出すということです。今回の場合は、「〇時にスマホをいじる」と、「ゲームのレベルが上がらない」という状況です。例えば、〇時にスマホをやめないと、次の日は1日Wi-Fiを切るなどのルールになります。このルールを作ると、上げられるはずだったレベルを上げられないという不利益を被ることになるので、行動を減らせることになります。先に説明した通り、弱化は最終手段であることを忘れず、奥の手として取っておきましょう。

ABAを使って行動を変える

 このように、問題行動による、本人の利益(好ましい状況や褒め)は何かを探し、その利益を強化、消去する、ダメなら弱化させるという3つの介入を試してみてはいかがでしょうか。

まとめ

 なお、学業の遅れ、遅刻など日常生活へ大きく影響が出ている場合は、背景に病気が隠れている場合があります。その場合は別の心理療法や薬物療法が必要であるため、ABA単体では効果が出ない場合もあります。ご家庭内で解決できない場合は、お早めに小児を見れる精神科、メンタルクリニックに受診してみてください。

解説動画はこちら