症状(精神疾患別)に合わせて行う認知行動療法の種類


認知行動療法は、精神疾患の様々な治療で広く利用されています。認知行動療法には認知面から修正を加える手法と、行動面の改善を行う手法が有ります。

患者さんの持つ病気によって、どの手法が効果を発揮するか異なります。今回は認知面から行う手法と行動面から行う手法、それぞれどのような症状に有効であるか紹介します。

目次

認知面から変える

   
人間は「認知」というフィルターを通して、物事を思考したり、行動にうつしたりします。認知によって思考がプラスに働けば問題はありませんが、物事の捉え方によってはマイナスの感情が生まれてしまうことがあります。

認知行動療法の考え方では物事を現実に不適応な捉えかたをするのは、認知に歪みが生じていることが原因とされます。以下の手法で認知面の修正を行います。

(1)コラム法

うつ病の方は、ものごとを0か100で判断したり、たった一度のできごとで全てがそうであると決めつけてしまうなど、現実的でない偏った認知を持っている場合があります。外部からの刺激に対し、とっさに浮かぶ思考のことを自動思考といいます。自動思考は各人が持つ認知のくせによって生み出されています。

その癖をとらえ、より現実的な捉え方をする手法にコラム法があります。不安や、怒りなどネガティブな感情を引き起こす様々な状況を書き出し、それに対してとっさに浮かぶ自動思考を書き出します。

自動思考は認知の歪みによって生み出されているので。歪みのパターンを書き出します。それに対する反証を書き出し、より現実的、適応的思考を考えます。(ゆがみのパターンの種類やより詳しいコラム法の詳細は自分でできる認知行動療法①を参照)

(2)ビデオフィードバック

社会不安障害の方に使用される手法です。社会不安障害の方は自身が他者にどう見られているか過剰に注意を向ける傾向があります。自分が変わった人、おかしな人にみられているのではないかといった誤った認知による自己イメージにとらわれています。

ビデオフィードバックは他者と自分が会話をしている場面を録画して、映像として見ることで自己の認知が作り出していたイメージと、映像を通じて客観的に自分を見たイメージの差異を知ることできます。映像でみる自己の姿は、当初持っていた自己イメージよりもそれほどひどくないことを知ることが出来るのです。

行動面から変える

普段行っている行動に変化を加えることで、より現実的に適応した生き方を見つける手法です。

問題解決技法

うつ病や全般性不安障害の等の疾患を抱えている方は、自分が抱えている不安の内容が漠然としていて、それがさらなる不安を引き起こしている場合があります。

問題解決技法は、漠然とした不安の内容をより具体的に特定し、細分化します。細分化した問題に対し、どのような解決を望むのか、目標を立てます。目標を達成するには、何ができるのか検討し、具体的にどんなことをするのか決定します。決定したことを具体的に実行し、結果を振り返ります。気持ちの捉え方よりもまず行動面を変えることで不安の原因を取り除ける場合があるのです。
     

 質問/行為
1.問題の明確化何が問題となっているか
うつ病で辛い

会社の人間関係・家族問題・金銭問題・失業の恐れ
2.目標の設定自分はどうしたいのか

病気を直し、会社に復職したい
3.選択肢の作成自分は何が出来るのか

今は何もせず、ゆっくり症状がかるくなるのを待つ
4.結果の考慮どんな結果がおこるのか
症状が軽くなれば、冷静な判断ができるようになる
5.決定自分はどんな決定をしたのか
休職をする
6.実行実行してみる
7.評価それははたしてうまくいったか

行動活性化技法

認知面からの修正が困難な中度~重度の患者さんに試みられる手法です。

うつ病を患っている方は、一日中何をしても楽しくないといった認知にとらわれている場合があります。ネガティブな認知にとらわれることによって本来自分の好きであること、楽しいと思えることすらも回避してしまいます。

実際はうつ状態にある時でも楽しいと思えることはあるのです。行動活性化技法は、一日の活動を通して楽しめること、嬉しい場面を活動記録表等を使用ながら出来る限り洗い出し、それらの行動を毎日の生活の中により多く組み込むことでより意義のある活動的な生活を行えるようにします。

エクスポージャー法

パニック障害、恐怖症等の治療に広く使われる手法です。パニック障害や恐怖症を持つ方は、症状の発生を恐れるあまり不安や恐怖を引き起こす物や場所を回避することで、それが実際に危険でないことに気づく機会を得ることができず、さらに誤った認知が強化されてしまう悪循環に陥ってしまいます。

エクスポージャー法はあえて不安や恐怖を引き起こす対象に触れる、近づくなどして、徐々に実際には危険性がないことを体感的に理解してゆく手法です。正しい手法を用いないとかえって症状が悪化する危険性があるので専門家の指導の元で行うことが望ましいです。

精神疾患別にみる認知行動療法

うつ病治療のための認知行動療法

かつてのうつ病の治療は薬物療法が中心でした、しかし現在は認知行動療法が薬物治療とと同等の効果があることがわかり、両者を併用した治療が浸透しつつあります。

うつ病の主な症状とは?

うつ病を患うと思考、気分、行動、身体に問題が現れます。

思考
・些細なことへのこだわり
・悲観的な考え方
・自責感

気分
・抑うつ気分
・悲哀感
・不安感,イライラ

行動
・興味の喪失,集中力の低下
・意欲低下
・焦燥

身体的症状
・不眠
・食欲不振など
・頭痛
・肩こりなど

思考面では、あらゆる出来事を悲観的に捉えてしまいます。様々な出来事を自分の責任と捉えたり、本来なら楽しいと感じられることも「辛い」「苦しい」などとネガティブに捉えてしまいます。

思考面がネガティブになると気分面で抑うつ的な気分に陥り、イライラした気持ちを持つようになります。それによって行動面や身体的な部分で様々な問題が発生します。

認知行動療法でバランスの取れた考え方を身につける

うつ病の方は「自己」「将来」「世界」に対して否定的な認知を持っていることが特徴です。「どうせ自分はだめな人間だ」「どうせ何も変わりはしない」「自分はずっとひとりぼっちだ」と現実的でない認知(自動思考)をもつようになると、本来は自分にとって喜ぶべき出来事すら自身を苦しめる要因となってしまいます。

うつ病の人はもの捉え方に偏りが多く見られます。たとえば物事を「0か100」かで捉えてしまったり、一つのできごとで全てがそうと決めつけてしまったりします。それらの思考が果たして現実的であるか、客観的に見つめる必要があります。考え方を変えることができればより楽な生き方ができる可能性があります。

否定的な自動思考を修正するには以前(自分でできる認知行動療法①参照)にご紹介したコラム法等が有効です。自分の信念(スキーマー)に原因があるのならば、スキーマーそのものを現実的なものに切り替えることも有効な可能性があります。方法としては下向き矢印法などがあります。(自分でできる人知行動療法②参照)

治療は医師やカウンセラーと共に

うつ状態になると、意欲や集中力が低下しているので一人で認知行動療法を試みても、なかなか良い結論がでないことがあります。従来の薬物療法と併用しながら、医師やカウンセラーと共に長い時間をかけて治療をすすめて行く必要があります。

双極性障害治療のための認知行動療法

双極性障害は一般的なうつ病よりも長期的な治療が必要なケースが多いと言われています。「うつ」の周期と「躁」の周期ごとに治療方法が異なる為です。

双極性障害の治療の基本は薬物療法です。現在はそれに加え、認知行動療法を取り入れる場面も現れはじめました。

双極性障害の主な症状は?

双極性障害は気分が落ち込む「うつ状態」と逆に気分が高揚して活動的になる「躁状態」を周期的に繰り返すことが特徴です。躁状態は周囲からみて健康的にみえることがありますが、冷静でない衝動的な行動が増える為、人間関係や経済面で深刻なトラブルを引き起こすことがあります。

躁状態にある場合、患者さん自身が病識を持ち合わせていない場合も有り、治療者側が適切な治療を行えないことがあり、回復を困難なものにしています。

薬と併用しながら認知行動療法をすすめる

双極性障害の治療を認知行動療法のみで行うことはありません。あくまで薬物療法が治療の中心となります。しかし、うつ状態と躁状態の際の非適応な認知を患者さん自身が客観的に知ることができれば治療をすすめる上で大きく役立ちます。
  
双極性障害の方がうつ状態にあるときは、自己に対して否定的な認知をしている一方で、躁状態にある時自己の能力を過大視してしまう傾向にあります。

また物事を0か100かの極端な捉え方を癖があるかもしれません。果たしてそれらが現実的に適応的であるか客観視するためのトレーニングができれば理想です。自分でできる認知行動療法①コラム法自分でできる認知行動療法②の下向き矢印法等を参照)躁状態にある時は、自分の認知の偏りを自覚することが困難な場合があるので家族やカウンセラー等の協力がかかせません。

行動面から見直す

躁状態のある場合、患者自身に病識がない状態になっている事があります。それでは適応的な思考を患者さん本人が導きだすことは困難です。その場合は認知面よりも行動面の修正から試みる方が有効である可能性があります。

グラフ等を作成し自分の気分の波を把握できるようにしましょう。
躁状態に陥る前の段階で行える対処法を身につける必要があります。たとえば軽躁状態なった時に直ちに病院に行く、カウンセリングを受けるなどの行動をする習慣を身につければさらなる悪化をふせげる可能性があります。

パニック障害治療のための認知行動療法

パニック障害は息切れや目眩などが繰り返し起きる病気です。従来は薬物療法が中心でしたが病気や体に対する誤った認知を修正するトレーニングをすることでより回復に近づけることがわかってきました。

不安感が症状を引き起こす

パニック障害の主な症状は息切れや、動悸、目眩などです。しかしそれらの症状は誰でも一度は経験したことのあるもので、深刻な事態に至らないものがほとんどです。パニック障害を持つ患者さんは、それらの症状が起こることに対し過大な恐怖心をもっています。
「心臓が止まってしまう」「死ぬのではないか」などと考え、それに対する恐怖心が実際の身体的な症状につながってしまいます。

とっさに浮かぶ自動思考を洗い出す

電車に乗る、広場に行くなどの不安を引き起こす刺激に晒された時、パニック障害をもつ方は「心臓が止まる」「窒息する」ととっさに思考が浮かんでしまいます(自動思考)。不安をもつことは人間が身を守る為の大切な本能ですが、はたして電車にのることや、広場にいくことが生命の危機にあたるのか、客観的に見直す必要があります。

現実的でない自動思考の修正にはコラム法が有効です。(自分でできる認知行動療法①を参照)死ぬかもしれないという思考に対し、より現実的なものの捉え方が可能か考えてみましょう。さらに、心の奥底にあるスキーマー(信念)に原因がある場合は、下向き矢印法(自分でできる認知行動療法②を参照)が有効である可能性があります。

回避行動を見直す

パニック障害を持つ方は、かつて症状がおきた場所を避けることで、安心感を得て身体症状を抑えようとします。たとえば広場や電車内で発作が起きたことがあれば、そこには一切近寄らないといった行動を取ります。

それでは一時的に症状は抑えることはできても、実際はそうではないという反証を得る機会を得ることができません。自分の行動範囲を狭めてしまい、却って不安感を増幅させる恐れもあります。

エクスポージャー法

回避していた行動をあえて行うことで不安を軽減させる手法の一つにエクスポーシャー法があります。その不安に何度も繰り返し晒され続けると、不安感が軽減するのです。

電車に乗ることに不安を持っている場合、それを実際にやってみることで現実に危険がないことが体験することができるのです。この場合最終的なゴールは「電車に乗る」ことですが、いきなり「電車に乗る」という行動ではなく駅前に行く、ホームまで行く等段階的にチャレンジしていきます。

PTSD治療のための認知行動療法

PTSDはトラウマ体験が原因で、恐怖感や不安感が繰り返しフラッシュバックすることを症状とする疾患です。治療には認知行動療法の一つである持続エクスポージャー療法を試みることがあります。

PTSDの症状

人は誰でもトラウマ体験にあった直後は、重度のPTSD反応を示します。恐怖だった記憶を回避しようとするのは自然な考えであり、トラウマ体験と向き合うことは容易なことではありません。しかし、トラウマ体験を喚起させる刺激からの回避を続けることによって(世界は自分を助けてくれない、世界は危険で満ち溢れているといった、)現実的でない認知が強化され、回復を遠ざけることになります。トラウマ体験を呼び起こす刺激を極度に回避することにより、回復の機会を失い慢性化する可能性があります。

持続エクスポージャー療法

持続エクスポージャー療法は、PTSDの患者さんが回避していた行動をあえてとることによって、恐怖を乗り越えてゆく治療法です。持続エクスポージャー療法は現実エクスポージャーと想像エクスポージャーを組み合わせて行います。

現実エクスポージャー

トラウマ体験の記憶をよびおこす場所やものを見ることによって、徐々に不安に慣らしてゆく手法です。それが今の自分にとって危険なものではないことを徐々に学習してゆきます。

想像エクスポージャー

不安に感じる場面を思い浮かべて、それを言葉にして、イメージに慣れていく手法です。自らが語った声などを録音して聞くなどします。

治療は必ず専門家の指導で行う

エクスポージャー療法は、一時的に強い恐怖を感じることがあります。その為、高度な専門知識と経験をもった治療者と共に入念な計画を立てながら治療をすすめてゆきます。

実際の治療では一回90分を週一で約10回から15回程度の頻度で行ってゆきます。現実エクスポージャー療法は宿題として一人で行い、話すことを中心に行う想像エクスポージャーは治療者と共に行うことが一般的です。

エクスポージャー療法はトラウマ体験の記憶を思い出したり、取り戻させたりするための治療ではありません。正しい知識を身につけていない専門家以外が行うと、病状が悪化する危険性があります。治療の成功には治療者と被治療者との信頼関係が絶対不可欠です。治療は必ず専門家と共に行ってください。

強迫性障害治療のための認知行動療法

強迫性障害には、かつては有効な治療法が無い病気でしたが、現在は有効な薬の登場に加え、認知行動療法が高い治療効果を発揮することがわかってきました。

強迫性障害の症状

強迫性障害は何かの思いつきに心がとらわれ、何か行動をせずにいられなくなる病気です。例えば、手に汚れが付くことで病気になることを恐れ、一日に何十回も手を洗ってしまう状態や、家に施錠をしたことが心配になり、何度も帰宅して確認をしてしまうことがあげられます。    

強迫性障害の特徴は認知面と行動面の両面に問題が生じていることです。例えば、「手に汚れが付くと必ず病気になる」といった強迫観念は現実的でない認知にとらわれているといえます。認知面で問題が生じると、過剰に手を洗うと言った強迫的な行動をとってしまいます。

まず「手が汚れると必ず病気になる」という誤った認知を修正し、過剰に手を洗うという行動を止める必要があります。

強迫性障害特有の認知のゆがみを修正する

日常生活の中で「手をしっかりと洗ったかどうか」「ドアの鍵をちゃんと締めただろうか」といったことが突然心配になること(侵入思考)は誰にでもあります。それに対し「手を洗う」「施錠を確認する」といった行為で心配は解消されます。

あるいは、別のことが頭に浮かび、いつの間にか忘れていることもあります。強迫性障害の方は、病気から身を守るには常に清潔でなければならない、財産を守るためにはドアは絶対に施錠しなければならないといった、必要以上に広く、強い責任感にとらわれています。その為放置することで自責感や後悔にかられて何度も同じ行為を繰り返してしまいます。

自分の持つ責任の範囲が広すぎ、疲弊してしまう状態になってしまうのです。この広すぎる責任感は現実的でない認知であるので、修正を行う必要があります。

コラム法等を使用して自分の考え方の癖と、より楽な考え方がないか検討します。(自分でできる認知行動療法①を参照。)過剰な責任感は心の奥にあるスキーマーから発生している場合があります。その場合はスキーマーを捉え修正します。(自分でできる認知行動療法③を参照)広すぎる責任感を修正すると侵入思考に対する過剰な不安が軽減します。

暴露反応妨害技法(ERP法)

暴露反応妨害技法は、あえて強い不安に自分をさらすことで、それを放置しても恐ろしい事態にはならないことを学習する技法です。病気から身を守るためには清潔でなければならないといった認知をもっている場合、汚いものに触れ、あえて手を洗わないといった手法をとります。手を洗いたいという欲求を必死にこらえ不安に慣れてゆくことで、不安が現実的で無いことが理解でき始めます。

恐怖症治療のための認知行動療法

恐怖症は特定のある一つのものに対して異常な恐怖を感じる症状のことを指します。恐怖症の治療には薬物療法や、自律訓練法、認知行動療法があります。今回は認知行動療法について解説します。

恐怖症のパターン

恐怖症は以下の4パターンに分けることができます。

①動物型
クモなどの虫や、ヘビなど、特定の動物を恐れるパターンです。犬などに噛まれた経験が原因になる場合もあります。

②自然環境型
雷や嵐、地震等の自然災害を恐れるパターンです。

③注射・外傷型
注射等の医学的処置で痛い思いをしたりケガをして傷や血を見ることをきっかけ発症するパターンです。

④状況型
飛行機やエレベーターの中等、高いところや、狭いところに過剰な恐怖心を抱くパターンです。

⑤その他の原因型
胸の苦しさや、息切れなど、嘔吐等、身体になんらかの症状が現れることを極度に恐れるパターンです。

呼吸法を学ぶ

強い恐怖に直面した時、人は過呼吸になりがちです。呼吸法を腹式呼吸に変えることで恐怖を感じた際のストレスを軽減できることがあります。

腹式呼吸のやり方

①6秒間かけて、息を吐き出す
仰向けになって、口をすぼめお腹をへこませながら、ゆっくりと息を吐きます。

②4秒間かけて息を吸う
お腹を膨らませながら、鼻から息を吸い込むことを繰り返します。

エクスポージャー法(暴露療法)

恐怖症の治療は恐怖を感じている対象物にあえて近づき、それに慣れることで現実は危険がないことを学習するエクスポージャー法が有効です。エクスポージャー法には以下の手法があります。

前項で覚えた、腹式呼吸法を使い恐怖に対処しながら行うとストレスが軽減できます。

暴露反応妨害法(ERP法)

以下のような不安階層表を作成し、小さなことから段階的に不安に慣れていく手法です。どのような事に恐怖を感じるか、下図のように段階的に書き出してみます。
 
対人恐怖症の場合

点数課題
100会社の会議でレポートを発表する
90上司に仕事を報告する
80同僚に仕事の引き継ぎをする
70同僚と昼食を取る
60一人で外食する
50通勤電車に乗っている
40親友と話をしている
30カウンセラーに悩みを打ち明けている
20家族と世間話をしている
10一人でいる

点数が高いほど、不安の強度が高まります。実際に行動を起こす前に結果を予測してみましょう。最も点数の小さい課題からチャレンジし、段階的に恐怖を克服していきます。チャレンジした結果と事前に予測していた結果と比較してみましょう。

社会不安障害治療のための認知行動療法

社会不安障害は人とコミュニケーションを交えること対して強い不安感を持つ精神疾患です。全人口の3~13%が人生のうちに一度は経験すると言われます。抗うつ剤を使用した治療法が一般ですが、認知行動療法と薬物療法を併用することでより高い治療成果を期待できます。

強い自意識が特徴

社会不安障害を持つ方は常に「自分が他人からどう見られているか」ということに意識が集中しています。自分がおかしな人であると思われはしないか、嫌われはしないか常に不安な状態にあります。

安全行動

人からおかしな人に見られたくない気持ちが強くなりすぎると、行動が実際に不自然になり(人との接触を避けたり、注目されないように振る舞う)人からかえって注目を浴び、それが不安を強化する…といった悪循環に陥ります。そのような不安を回避する行動を安全行動といいます。典型的な安全行動は以下のようなものがあります。
  

・表情や赤面が見られないように顔を隠す
・人や影に隠れる
・頭の中で喋ることをリハーサルする
・下を向いて話す

上記のような安全行動を繰り返し続けると、不安に思っている事態が実際に起こりうるのか検証することができません。回避することせず実際に行動してみて自分の予想と結果の違いを体験で知る必要があります。以下のように検証してみましょう。

具体的な状況
昼休みに同僚たちが話をしている
会話に混ざりたい

予想・その確信度は?
自分のたどたどしい喋り方では馬鹿にされるだろう(80%)

その予想を実験するために何をしたか
リハーサル無しで声をかけてみる

安全行動→遠くから同僚たちを見続ける。

実際におきた結果、予想との差は
普通に話ができて馬鹿にもされなかった。以外に会話も続いた。10%

実験から学んだこと、さらにしてみたいこと
みんな少なからず自分に興味を持ってくれて、喋り方を気にするような人はだれもいなかった。相手も緊張していてお互い様だとわかった。今度は同僚でない他の人で試してみよう

自己イメージを客観視する

社会不安障害を持つ人の多くが、偏った自己イメージ持っているとされています。

他人からの視線を感じた時、自分がこんなに不安に感じているのだから、きっと他人におかしくみえるに違いないと感じるのです。それははたして現実に正しいのか主観ではわかりません。  

ビデオフィードバック

以下の手法を用いて自分の主観で作り上げた自己イメージ像と他者から見えるイメージの違いを知ることができます。
  

① ビデオで自分と他者の会話を録画してもらう
② 目をつぶりながら動画の映像を思い浮かべてみる (顔は赤くなっているに違いない、緊張で震えいるに違いない、)
③ ②でイメージした、自己イメージの状態を1から100の間で数値化する (赤面80、震え70等)                          
④ 会話をしている相手が自分をどう見ているかイメージして文字に書き出す
⑤ 実際にビデオを視聴する
⑥ ②を再評定する (本当に顔は赤いだろうか、緊張しているようにみえるだろうか)
⑦ 自分と会話している他者がどのような態度で見ているか確認する④との差異を見直す

自分が主観でおもっているよりも酷いものではないことが自覚できるはずです。

全般性不安障害治療のための認知行動療法

全般性不安障害は日常のあらゆることに不安を感じる障害です。過剰な心配をすること日常生活に悪影響を及ぼします。一生涯でこの疾患にかかる人の割合は3~4%で決して珍しい病気ではありません。治療は薬物療法が中心ですが認知行動療法を治療に取り入れると、より高い治療効果を発揮できます。

全般性不安障害の症状とは

恐怖症など、特定のなにかに恐怖を感じるのではなく、様々なことへの不安が次から次へと起こり、イライラや抑うつ症状、目眩、不眠などの症状に悩ませられます。家族関係、友人等の人間関係から海外の戦争等、あらゆることが心配の対象になります。全般性不安障害の人の多くはうつ病やその他の不安障害を併発している場合が多いと言われます。

全般性不安障害の認知パターン例

きっかけとなるできごと

心配に対する肯定的信念

嫌なことが起きたらどうしようという心配

心配に対する否定的信念

心配しすぎてどうしようといった不安

心配の抑制の失敗
明日、戦争が起きたらどうしよう

今のうちに(心配)覚悟しておけば、慌てずに済む

もし一人で何もできなかったらどうしよう

心配はコントロールできない、ずっと心配し続けることなんかできない

心配しすぎて自分は気が狂うかもしれない

心配しないように努力するが上手くいかない
・戦争というキーワードをさける
・一切ニュースを聞かない

全般性不安障害の認知パターンをみると心配しないようにすることで心配に意識が集中してしまっていることがわかります。具体的な何か不安になることよりも心配するという事自体に振り回されてしまうのです。

抗不安剤と認知行動療法の様々な技法を試す

認知行動療法は薬物療法より治療効果が高いと言われ、両者を併用するとさらに効果が高まると言われています。薬物のみで治療した場合の2倍の治療効果があるといわれています。

認知を再構築する

自分が考えている不安が、本当に現実的なものか、紙に書き出しながら再検討してゆきます。コラム法等を応用してみましょう。

状況:

自動思考:

考え方のくせ:

根拠は:

それに対する反証:

より適応的な考え方はないか:

問題解決訓練

問題解決訓練を行うことによって、漠然としている不安の内容が明らかになり心配していることがはたして現実的に解決可能なことなのか明確になる場合があります。

 質問/行為
1.問題の明確化何が問題となっているか
2.目標の設定自分はどうしたいのか
3.選択肢の作成自分は何が出来るのか
4.結果の考慮どんな結果がおこるのか
5.決定自分はどんな決定をしたのか
6.実行実行してみる
7.評価それははたしてうまくいったか

まとめ

・うつ病に対する認知行動療法の手法として、認知面からアプローチするコラム法や行動面から改善を目指す問題解決技法、行動活性化技法等があります。

・恐怖症やパニック障害は対象からの過剰な回避行動が回復を妨げている場合があるので、あえて対象に触れる、近づくことで不安を軽減するエクスポージャー法が取り入れられています。

今回は、認知面、行動面、それぞれの面から改善を試みる手法を紹介しました。認知面に改善が見られると行動面にもプラスの変化が生じます。逆に行動面から改善が行われた場合、認知面もプラスの変化が生じます。認知面、行動面は常に連動しているのです。
 

    
参考サイト:
うつ病の認知療法・認知行動療法(患者向け)
書籍 優しくわかる認知行動療法  ナツメ社
認知行動療法のすべてがわかる本  講談社