薬剤師監修:精神科で処方される頓服薬を解説

薬剤師監修:精神科で処方される頓服薬を解説

頓服薬とは何なのか?

頓服=熱さまし、と誤解している人も居るかも知れませんが、頓服というのは薬の飲み方のことです。症状が出た時に飲む、症状が出そうな時に予防として飲むというような、症状に応じて薬を飲む動作のことを指します。

従って、症状に応じて必要なときだけ飲む薬が頓服薬ということになりますね。

こうしたお薬をわざわざ頓服薬と呼ぶのは、食前、食後等、決まった時間に飲むお薬と区別するためでもあります。

頓服薬はあくまで症状を一時的に抑えるお薬ですので、素早く効いて、その効き目も症状がおさまるころには素早く消えている、という性質が望ましいと言えます。

 

精神科で処方される頓服薬にはどんな種類があるのか

精神科で頓服薬は、不安や、不眠、興奮して大声を上げてしまうようなイライラする時等(不穏と呼んだりします)のために処方されます。お薬の種類としては、抗不安薬や睡眠導入剤、抗精神病薬等が良く使われます。以下、頓服薬として使われることの多い薬剤をいくつかピックアップして見てゆきます。

抗不安薬:  ロラゼパム

不安を和らげる作用に優れるお薬です。

内服してから15分から30分ほどすれば効果が実感できるようになり、服用してから約2時間で血中濃度が最大になり、その後約12時間で血中濃度が半分になり(半減期と呼びます)、効果が消えていきます。

素早く効いて効き目も比較的早めに収まるという頓服薬としては良い性質を持っていると言えます。ただ、このお薬はベンゾジアゼピン(BZ)系と呼ばれる睡眠薬ですが、実は、依存性などの問題があり近年はあまり積極的に使わない方が良いとされています。

長期連用や無益な乱用は絶対に避けなければなりませんが、頓服として処方された場合は医師の指示通りに使用することが大切です。

睡眠導入剤:  ゾルピデム

睡眠導入剤に分類されるお薬です。即効性があり、作用時間が短いのが特徴です。

また、服用から5~6時間前後にはほとんどの量が消失するため、翌日への持ち越しが少ないといわれており、頓服薬として使いやすい性質を持っています。

効果が実感できるのは、内服してから15~30分ほどで、服用してから約40~50分で血中濃度が最大になり、約1時間半-2時間半で半減期を迎え、効果が消えていきます。

BZ系によく似た、『非BZ系薬物(Z-drug)』と呼ばれるお薬の一つです。作用の仕方はBZ系とほとんど同じで、先にあげた依存性のような欠点も同じですが、BZよりは副作用が少ないと言われています。

抗精神病薬:  アセナピン

抗精神病薬は統合失調症のお薬ですが、興奮が収まらない時等に頓服薬として処方されることがあります。

過剰なドパミンの働きを抑える働きがあるため、統合失調症の治療薬として開発されましたが、気分の安定にも効果があり、頓服薬として処方されることがあるのです。

ピークに達するまでの時間は、一般的に約1時間から1時間半程度(人によっては4時間)

半減期は約20〜30時間程度です。

服用する場合、完全に吸収されるまで10分間は飲食を避ける必要があります。

このお薬には、舌下錠として作られたものがあります。舌下錠は飲みこまずにベロの下ないしは、 奥歯とほっぺの間に置いておくと、すぐに溶けて、口の粘膜から一気に吸収され、飲み込む形で服用するよりも即効性が期待できるのです。

アセナピンは、この抗精神病薬の中で、非定型抗精神病薬と呼ばれる第二世代のお薬です。色々な受容体に作用するため、MARTA(多元受容体標的化抗精神病薬)と呼ばれる仲間ですが、MARTAの中では副作用が少ないといわれています。

統合失調症と抗精神病薬については、既にブログや動画でもご説明していますので、詳しくはこちらをご覧ください。

https://www.allin1.co.jp/service/psychotherapy/blog/s-medicine/#outline__5

抗精神病薬:  オランザピン

これもアセナピンと同じく、統合失調症に処方される非定型抗精神病薬の一つで不穏時の頓服薬として使われることがあります。

ピークに達するまでの時間は一般的に約5時間、半減期約30時間です。

口に入れたらすぐ溶ける、水なしでも服用できる飲みやすいお薬も作られています。

高血糖や糖尿病等の副作用があり、兆候となる口喝・多飲・多尿・頻尿に注意が必要です。

抗精神病薬:  リスペリドン

これも非定型抗精神病のひとつで興奮を落ち着かせる鎮静作用があり、頓服でも処方されることがあります。

効果が実感できるのは内服してから約1時間ほどで、効果は8~12時間程度(半日程度)持続します。内用液で最高血中濃度到達時間:0.81-2.67時間、半減期:3.57-20.91時間。錠剤で最高血中濃度到達時間:1.13-3.27時間、半減期:3.91-21.69時間です。

直接か、コップ1杯程度の水・ジュース・汁物に混ぜて服用します。希釈する場合はなるべく早く使用しましょう。茶葉抽出飲料(紅茶、烏龍茶、日本茶etc)やコーラでの混合は直後から含量が低下するので避けます。ブドウジュースも避けた方が無難です。ポリフェノールと総合作用(=キレート形成)によって効果が薄れてしまうからです。

まとめ

以上、精神科で処方されることの多い頓服薬をピックアップして見てきました。頓服は症状を抑えるために一時的に飲むお薬です。BZに限らず、頓服薬を乱用すると、依存が形成されてしまう可能性があります。また、飲み続けると効果が弱くなることもあるので、医師の指示通りに服用することが大切です。

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