お母さんの悩みにズバリ答える!!心理士が解説 『叩く・噛みつく子』への対応

お母さんの悩みにズバリ答える!!心理士が解説 『叩く・噛みつく子』への対応

小さな子どもは、言葉が出にくく、まだ上手に思いを伝えることが苦手です。自分の苦痛や欲求が伝わらない時には、泣いたり、近くにあるものを投げたりすることもあります。一見するとこれらの行動は困った行動ですが、その子にとっては唯一の感情表現手段なのかもしれません。

周囲の人を叩いたり、噛みつくのも、これと同じように、注目を得るため、自分の欲求や苦痛を伝えるための表現手段として学習されてきたのでしょう。叩く・噛むという行動は周囲の人を傷つけかねない大変困った行動ですが、これをただ単に「だめ!」と禁止するだけでは同じことの繰り返しになってしまいます。

叩く・噛むという行動の意味を読み取り、環境を整え、適切な行動に代え、それを伸ばしていくことが大切です。

質問1:叩いたり噛んだりした時、最初にすべきことは?

叩いたり噛みついたりしてしまう場合、その行動の意味を読み取ってみましょう。子どもはそのような行動をすることで、「欲しいもの(おもちゃ等)を手に入れられる」、「お母さんや先生に注目してもらえる」、「お母さんや先生に注意されることが注目される」、「嫌な子が近寄らなくなる」など、様々な学習をしている可能性があります。このような欲求があっても、どうしたらよいかまだ分からないので叩いたり噛んだりするのかもしれませんね。

質問2:叩いたり噛んだりした時は叱るべき?それとも諭すべき?

もし叩く、噛むなどの行動が起こった場合は、このような行動の意味を読み取った上で、叱るよりも、適切な対処の仕方を教えてあげることがよいでしょう。例えば、おもちゃが欲しかった子には「かしてって言おうね」と言葉やジェスチャーで説明したり、言葉がまだできない子どもには、イラストで分かる「かして」の絵カードを示したりしてみましょう。

注目してほしい子には、「ママ、見て」という呼びかけの言葉やジェスチャー、「ママ見て」を示す絵カードを見せて説明してみましょう。そして、これらの対応ができた時には褒めて伸ばしてあげましょう。また、「軽く子どもを叩いてみる対応はどうか」という質問も聞かれますが、それが子どもにとって傷つかない程度だとしても、「叩く・噛むとお母さんから“軽く叩かれる”というスキンシップがもらえる」という新しい学習をしてしまい、より叩く・噛む行動が強まってしまう可能性があります。

大切なのは叩く・噛むことを予測して、そのような状況を避けることです。どのような状況で叩く・噛むかを読み取り、そのような行動をしなくてよい環境を整えてあげましょう。

質問3:叩く・噛むことを何度も繰り返すのですが…

学習された困った行動は、それを学習してから時間が経てば経つほど修正するのに時間がかかります。叩く・噛むことの意味を把握し、適切な対処を教え、根気強く関わりましょう。

繰り返し、「かしてって言おうね」など適切な行動を教えてあげても、叩くことがやめられないという場合もあります。大きな環境の変化や、体調がよくないなど、色々な理由が考えられますのでどのような理由で叩いてしまうのかを考えてみることがおすすめです。眠い・おなかが空いたなどでいらいらして、近くにいる人を叩いてしまうということもあります。また小さな弟や妹が生まれた後などは、“さみしいよ!”“こっち向いてよ!”という気持ちでお母さんを噛んでしまうというお子さんも多いです。

こういう場合には、適切な行動を教えてあげるだけだとむしろ本人の気持ちが収まらない、ということが起こりますので、“なるほど眠いのね”と思ったら睡眠時間を確保してみる、“さみしいのかな”と思ったら、1冊寝る前に絵本を読んであげる…といった関わりも役立ちますね。

質問4:親だけでなく、お友達に対しても叩く・噛むのですが…

先述したように、まずは子どもが叩く・噛むという状況を避けることが大切です。なぜなら、お友達にけがをさせてしまう危険な行動であることはもちろんですが、その行動をするたびに、その行動がより強く学習されてしまうからです。それでもお友達を叩いたり噛んだりしてしまった場合は、まず子ども同士を離し、叩いたり、噛んだりしてしまった子に関しては気持ちを代弁してあげた上で、適切なコミュニケーションを教えてあげましょう。例えば、お友達のおもちゃが欲しくて噛んでしまった子には「おもちゃを貸してほしかったんだね。そういう時は『かして』って言おうね」と教えてあげることが挙げられます。上手に『かして』と言えたなど、適切な対処ができた時は「かしてって言えたね!すごい!」と褒めて、『かして』と言う行動を定着させていきましょう。

『かして』とお友達に意思表示して、かしてもらえず叩く・噛む行動をしてしまう場合もあります。そんな時、適切な行動を増やすために、お友達と遊ぶことと同じくらい楽しいことを用意してあげることも効果的です。例えば、好きなパズル、ブロック、絵本を用意したり、おやつを買いに行ったり、お散歩に行ったりすることもよいでしょう。

(まとめ)
お子さんが叩いてしまう、噛んでしまう…という場合、ぜひ理由を考えてみてください。なんとなく理由は思い当たるけれどどうしていいかわからない、どうすればいいかわかるけれどうまくいかない、という時には、保健所や子ども家庭支援センターなど専門家のいるところへ相談することもできます。

参考文献

井上雅彦 (2015). 『自閉症の子どものためのABA基本プログラム4 家庭で無理なく対応できる困った行動Q&A』. 株式会社 学研教育出版.8-30p

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