薬剤師監修 双極性障害と薬について

薬剤師監修 双極性障害と薬について

薬剤師シリーズ3回目となりますが、今回は、双極性障害を取り上げます。双極性障害と診断され治療を受けられている方を想定して書かせていただきます。

双極性障害は、気分の異常な高揚が続く躁状態と抑うつ状態が交互に繰り返し現れる病気で、以前は躁うつ病と呼ばれていました。躁状態だけの単極性の症状が続くことも無くは無いですが、基本的には抑うつと交互に繰り返すものと理解しておくと良いでしょう。

症状とお薬の働き方

前回までと同じく、まず症状について一通り見た後に、お薬の種類や働き方を確認して行きます。

双極性障害の症状チェック

まずは症状を理解することから始めてみましょう。

抑うつ状態の時の症状

双極性障害の抑うつ状態は、うつ病と大差なく、同じような症状が現れます。

以下は、うつ病の症状として掲げたものですが、もう一度書き出しておきます。症状には「心」に出るものと、「からだ」に出るものと2種類ありました。

(心の症状)
□何をしていても楽しくない
□興味がわかない
□むなしい
□意欲の低下
□悪い方へばかり考えがおよぶ
□イライラがつのる

(身体の症状)
□睡眠障害
□食欲減退
□頭痛
□吐き気
□口渇
□体重減少
□便秘
□下痢
□疲労・倦怠感(だるさ)
□肩の凝りや背中の痛み
□体の痛みやしびれ
□月経異常

躁状態の時の症状

躁状態になると、逆に活発になり以下のような症状が現れます。双極性障害にはうつ状態と躁状態の違いが大きいⅠ型と、躁の状態がⅠ型に比べて「軽躁」となるⅡ型とがあります。

□エネルギーにあふれ、気分が高まって元気になった気がする
□あまり眠らなくても元気
□急に偉くなったような気になる
□なんでもできる気になる
□おしゃべりになる
□アイディアが次々に浮かんでくる
□怒りっぽくなる
□直ぐに気が散る
□浪費
□性的逸脱

健康な人でも気分が高揚することはありますが、症状として現れる躁状態は、自分は何でもできるという万能感に満ち溢れて、例えば、高価な品物を次々に注文して歯止めが利かなくなるような状態です。対人関係でトラブルになることもあり、自分よりも周りの人が症状に気づくことも良くあります。

極端な形で躁状態の症状が出なければ、単に元気な状態として認識してしまうこともあります。また、うつ状態の方が躁状態よりも長く続く場合も多く、当初うつ病とし受診される方も多くいます。同じ理由から診断も難しいのが特徴です。

病気に対する理解

双極性障害の原因はよくわかっていません。遺伝の影響が大きく、ストレス等をきっかけに100人に1人くらいの割合でかかると言われています。うつ状態の症状がうつ病とよく似ていますが、基本的には抗うつ薬ではなく気分安定薬が処方されます。

うつ病との違い

うつ病は気分・感情をコントロールして精神を安定させる働きのあるセロトニンが、ストレス等をきっかけにして不足してしまうことが要因とされていました。双極性障害の原因はわかっていませんがうつ病とは異なり、大きくなってしまった気分の振れ幅を抑制、安定させるために気分安定薬が使われます。

気分安定薬の働き方

気分安定薬には、炭酸リチウムやバルプロ酸ナトリウム等が使われます。前者はうつ症状、躁症状ともに相応の効き目があり、後者はうつ症状に対するよりは躁症状に効き目があります。それぞれ効果に違いがあり、症状に応じて処方される点は他の疾患と同じです。

気分安定薬には、うつや躁にたいする抑制だけでなく再発予防にも効果があります。双極性障害は再発率が高く、症状が落ち着いてからもお薬を飲んで再発を抑えてゆきます。上にあげたような気分安定薬は、血中濃度を一定に保つ必要があり、定期的に採血して濃度をチェックします。

その他(抗うつ薬、抗精神薬)

抗うつ薬は双極性障害に対しては効果が無い場合が多く、かつ躁転させるリスクがありますが、気分安定薬等だけでは十分に効果が上がらない場合に主にⅡ型に対し一時的に併用されることがあります。

統合失調症に使われる抗精神薬は、気分安定作用もあり、症状に応じて双極性障害にも処方されます。

薬剤師による疾病・服薬教育

病棟の薬剤師が、双極性障害の入院患者さんにアドバイスを行う際も他の疾患と同じく、お薬が最適なものになっているかどうか、生活の質の点からも問題がないかどうか確認してゆきます。症状を一つ一つ注意深く点検して、今、躁、うつどちらに傾いているのか、あるいは混合した状態なのか、お薬はその症状に見合っているか等をチェックします。

繰り返しになりますが、双極性障害は再発しやすい病気であり、きちんと服薬を続けることの重要性についてもしっかりアドバイスします。

まとめ

今回は双極性障害とお薬について書かせていただきました。うつ状態のときの症状がうつ病と似てはいても、異なる病気であってお薬も働きが違うものが処方されるのでしたね。気分安定薬は一定の濃度を保つ必要があること、再発しやすい病気でありしっかりと服薬することが重要なこともポイントです。以上、ご参考にしていただければと思います。

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